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序奏 変わらぬ日々と変わるキッカケ 1


「……ここはどこだ?」


気付けば見知らぬ森の中、身体は不自然な程擦り傷だらけで所々着ていた服が裂けていた。


「あれ?俺はさっき変な占い師に話しかけて…なんでこんなボロボロに?」


倒れたままだった身体を起こして辺りを見回すと地面には、散らばった真新しい枝とその下にある同じ特徴の木の枯れ枝を見て、どこかの木の上から落ちたんだなと思った。


酔っ払って変なことでもしたかなと思ったが、そもそも酒を飲んですらいない。

そして、いつも大切に持っていた相棒に関しては無傷のまま、ケースから抜け出す事なく近くの木に立てかけられていた。


「マジでどこだよ!本当何があったのかさっぱり分からんし!」

思い返してもこんな自然豊かな場所に見覚えはない。家の近所はコンクリートだらけの自然なんて一切なく、コンビニですら歩いて20分かかるような、閑静な住宅街で辺りの状況と1つも一致しない。

きっとこれは夢だと思っても身体についた傷の痛みが、「これは夢じゃない」と訴えているような気がした。

これまでの間に俺に何があった?と思い返そうとして、こんな森のど真ん中ではなく何処か安全な場所で考えた方が良さそうだと思い、当てはないもののとりあえず水の流れる音のする方向へ歩みを進めた。




「鳴島先生、今日一杯どうですか?」部活動の報告書をまとめ終わり、背伸びをして椅子の背にもたれ掛かると後ろから肩を叩かれ振り向いた先にはうちの学校の教頭が居た。


最近妻と別れて一人で暮らす家に帰るのが辛いのか、毎晩色々な先生に声を掛けて飲みに行くのが今の楽しみなのだと言う。


他の先生方から聞いた話だと「私が校長になれればもっといい学校に出来るのに!そう思いませんか⁉︎」だの「あの先生は私の事を尊敬せずに、私の偉大さがわからないのでしょうか!」とすぐに酔ってほかの先生への愚痴や自分語りを何度も話すらしく、すぐに相手にしてくれる人がいなくなった様で、今回は俺に白羽の矢を立てた様だった。


「すみませんが、僕も今日は用事で…次!次こそは行きますから!失礼します!」


そんな楽しくない飲み会なんぞ付き合ってられるか!両手を合わせて苦笑いを浮かべたまま、慌てて自分の相棒を脇に抱え心にも無い謝罪と行う気もない約束を言いながら、職員室を飛び出していった。


「あっ、そう…ならまた今度に…」


後ろから寂しそうな教頭の、哀愁漂う呟きが聞こえていた。


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