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自称世界最弱の勇者になる男  作者: でんし
第一章 ショウ、異世界に来訪
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1.4.疑惑

この屋敷はマジでどんだけでかいんだよ…。俺はそう思った。もう屋敷ではなく城だよな…。俺はディオンとそのメイドさんに連れられて、客間と呼ばれる場所に来ていた。客間は無地の赤いカーペットが敷かれている。壁には大きな暖炉があり、火が焚かれている。暖炉の周りはレンガ作りだが、壁自体は石を加工して作られたものの様だ。天井は非常に高く、3階くらいの高さがある。大きな天窓があり、そこから太陽の光が射している。


「座ってくれ。」


客間の中央に大きな長方形の机、そしてその机を囲む様に高級そうな椅子がいくつも用意されている。そして机の長方形の短辺側の片方に、その中でもひと際背もたれが高く、淵には装飾が施されている椅子がある。そこにきっとディオン王が座るんだろう。


「どの椅子に座れば…」


「そうだな…。じゃあ私の座る椅子の近くに座ってくれ。」


ディオン王は俺の予想通り背もたれのひと際高い椅子に座ろうとした。そこにメイドさんが来ると、椅子を引いてディオン王を座らせた。


「どうぞ、ディオン様。お座りください。」


「む。」


メイドさんは先程起こしにきてくれた美少女とは違うが、10代後半の若い女性だった。


「…」


俺は普通に自分で椅子を引いて座った。


「さて、その一応サウスディープの奥地にいたという理由から、君の身分を証明するものを君の服から探したが、特に見つからなかった。」


「お茶をお持ちしました…。」


先程の美少女のメイドが俺とディオン王にお茶を持ってきた。話の邪魔にならないようそっと、お茶を置いてくれた。お茶は茶色をしていて、地球の西洋風のカップに入れられている。


「ありがとうございます。」


俺はぎこちなく感謝をした。だがディオン王はそんな雰囲気ではなさそうだ。身分証的なものが見つからない。そして俺がいたあの森はサウスディープと呼ばれる森で、立ち入りを制限している場所。犯罪者等である可能性を疑われて当然だ。


「おそらくかなり大きいとされる魔術を使用した痕跡の中心に、君は寝ていた。そこで真っ先に疑ったのは、君が自分の限界を超えて膨大な魔力を使用した場合、意識失う賞状が出る事がある。そこで君自身が何らかの巨大な術式を展開した。その術式に魔力を使用した為、君は意識を失ったと考えた。」


「……はい。」


俺はよくわからない事を言われて、唯々頷くしかなかった。少なくとも魔術を俺が使ったと思っているのか、このディオン王は。


「その僕は魔術は使用出来ません。その…魔術の使用方法も…わからない…です」


「……そうなのか?ならば今から簡易的な魔力の放出方法を教えるからやってみろ。」


ディオン王は無表情で言った。しかし目が鋭くなって、まるで目からビームが飛んできそうな威圧感を持っている。何か身体を動かす事なのだろうか…?


「いや立ってやる事ではないから、座ったままでよろしい。」


俺が立とうとすると、ディオン王は座る様指示してきた。へぇ、座ったままでも出来るのか。


「目を閉じて、背筋を伸ばす。そして、呼吸を整える。体内に循環する魔力を感じとるんだ。次に身体全体に少しだけ力を入れて、魔力を放出させる。」


すると、ディオン王の周りが赤くなった。まるでオーラの様だ。


「ディオン…様の周りが、赤く…見えるんですけど…。」


「君…本当に知らないのか?」


「えっ?ま、まあ山奥に住んでいた…もので…。」


どうやら、この国では魔法?魔術が使える事は当たり前らしい。…って事は俺は怪しまれているんじゃないか?


「そうなのか。今時珍しいな。魔術とは無縁の生活を送っていたとは。」


特に疑いの目を持っているわけではないかもしれないがそう言われると俺は、犯罪者として扱われないか不安になってしまう。そりゃあ堂々としてりゃあいいんだけどさ、悪い事なんてしてないんだから。


「まあよい。これは魔術を使う上で最も基本となるものだ。自分の魔力の特性を知る為にも必要な事でもある。今後の為にも覚えておくが良い。例えば私の場合は赤く淡い光を纏っている様に見えるはずだ。ここから二つの情報を読み取る事が出来る。まず私は、光の色が赤であるという事から火属性であるという事。つまり火にまつわる魔術を使う素質を持つ人間であるという事だ。そして光が淡い光であるという事から、私は火属性だけでなく別の属性についても魔術を使う事が出来るという事だ。」


へぇ…、魔力の大きさか量とかは分かんないけどそうゆうのは関係ないのか。


「では、今教えた様にやってみてくれるか?」


えっ、いきなりかよ?いきなり…、でもまあ相手は王だもんな。断る事なんてできない。ただでさえ、この国の人である事を証明するものを俺は持っていない。そりゃあ、疑われて当然だよな。それだけでなく俺が桐山によって転送された場所は、この国の民の立ち入りが制限されている場所だ。そして俺は魔物に襲われて、結局は…騙されて…、それで俺は喰われたはずだった。だが俺は死なず、この国の人に多分助けられた。ディオン王との話が終わったら、助けてくれた人について誰かに聞いてみるか…。


「分かりました。」


『いいえ。』とか『嫌です。』とか言ってしまえば、何言われるか分からないので、もうやるしかない。


「まずは目を瞑って、背筋を伸ばして呼吸を整えるんですよね?」


「そうだ。その後に体内に流れる魔力を感じとってそれを外に放出させる様に、身体に力を入れる。」


俺は座ったまま目を閉じてみた。そして呼吸を整える。


スー、ハー、スー、ハー、スー、ハー…


でなんだっけ…。体内にある魔力を感じとるんだっけ?…それが一番よくわかんないんだよな…。体内にある魔力ってどうゆう事だ…?川みたいに身体の中を液体が流れてるのか?体内を流れる液体というのは、血液が該当するが…。


「どうだ?」


どうだって言われてもな…。身体に力を入れてみる。


「………。」


当然出るわけが無いよな…。普通に考えて。俺はこの世界で生まれたわけじゃないからな。もし呼吸を整えて力を入れただけで魔力とやらが身体から滲みでてくるとしたら、地球でも力を入れる事はあるんだからその時に、周りの皆が何か言ってくるはずだろ?「お前の周りに光ってるのは何だ?」とか。けれど言われたは無い。あったら逆におかしいよな。そんな非現実的な事。まあ最早この国にいる事自体がもう非現実的な事になってるけどな…。


「…透明…?そんな馬鹿な…。透明だと?おい、イズ。魔術監視官を連れてこい。」


「はい。」


壁側に立っているメイドの一人がドアの外へと歩き始めた。この部屋には4人のメイドさんがいる様だ。この部屋だけでも4人かよ…。一体この屋敷にはどれ程のメイドさんがいるんだ…?


「それとこの事は他言無用だ。もし外部に流れた場合は罰を処す。」


「『はい。』」


…?透明…。透明だったら、魔力がそもそもあるかどうか分からないんじゃないか?そりゃあ透明だもんな。ちょっと聞いてみるか…。


「あの…、透明って、その俺にも魔力はあるんですか?」


「魔力が無い人間など存在しない。お前本当に何もしらないのか?いくら山奥に暮らしていたとはいえ、何も知らないにも程がある。」


えぇ…。マジで…。俺にも魔力はあるのかよ…。


「それで、自分…疑問に思ったのですけど…、透明ってその…見えるんですか?」


「見えなかったら魔力の判断は出来ないだろう?透明とはいえ、(もや)の様に周りに纏わりつく様には見えている。しかし、私も魔術の博士というわけではない。正式な判断をいて貰うのは、魔術監視官の仕事だ。」


……。もはやここまで来ると俺は一体何なんだと思う。だっておかしくないか?まずおかしいと思ったのは秀一が俺を監視する為に、俺と友達になったという事だ。まずそこから意味不明だ。それから秀一が言ったあの発言だ。


『君自身が暴走しない為の監視だよ』


暴走って一体何の事だよ。その字の通り俺が暴れるという事なのか?俺が暴れたところでただ警察に捕まえるだけだろ?次に疑問に思ったのは記憶が飛んでいる事。俺が異世界のゲートに吸い込まれて、秀一、ミユと共にこのコズモスと呼ばれる世界に初めて来た時確か秀一に血が大量にこびりついているのを見て、何かを想像して…、そこから俺は気を失った。その後目が覚めたら元の世界に…しかも学校に戻っていた。また今日もそうだ。まず、俺はトラルによって足の肉を食いちぎられたはずだ。それなのに足は何事もなかった様に無傷だ。次に…俺は命の恩人だった人に裏切られ4体のトラルに森の中で襲われた後気を失っていつの間にか俺は、セシリア王国の王が住む屋敷?で寝ていた。ここで疑問に思うのは、俺が気を失っている間に何が起きたのかって事だ。


「魔術監視官が来るまでは少々時間がかかる。そこで君が気を失っていた時に何が起こったのかを説明しよう。そして何故君がセシリア王国の王族屋敷にいるのかも。更にそのついでにだが、気を失う前何故君は気を失う事になったのかという経緯を少し聞かせて貰う」


ああ、ちゃんと話してくれるのか。それは良かった。これで少しは状況は掴めるかもしれない。俺はメイドさんが持ってきてくれたお茶をやっと飲み始めた。ディオン王の隣に一人のメイドさんが隣に現れた。

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