第二話 おくすり
午前二時ごろ、俺は女性の悲鳴で起こされた。
「ひゃああああ!!」
「う、んーー・・・、なんだぁ!?」
今俺の部屋から女の人の悲鳴が聞こえたよな?なんで、幽霊?
・・・あっ、そういえば昨日倒れていたカーベラさんを助けたんだった。
なんだろう悲鳴なんか上げて、聞こえた方向は・・・風呂場か?転んだのだろうか、でも悲鳴以外何もないのが不安だ、急いで向かおう。
風呂場の浴室のドアを開ける(後先考えていない)
「どうしました!?」
「取っ手をひねったら上から水が出てきて、何の罠だこれは」
「罠って・・・そうじゃなくて、大丈夫ですか?」
「あぁ、別に。驚いてしまっただけだ、心配するほどでもない。この家は妙に落ち着くのでな。つい自分の家のように過ごしてしまった。」
「ならよかったです。安心しました。」
「ところで耕太、その・・・心配してくれたのはうれしいのだが、あの・・・今、私は何も着ていないのだが」
「へ?」
思考停止。
風呂場なら、全裸でもおかしくはないと思うが・・・ん?風呂場?
思考再開。
「・・・っあああああああ!!ごめんなさい!そんなつもりは全く・・・」
「あははは~・・・。いやいや、はなからそんなつもりではないだろうと思ってたから」
頬をポリポリ掻いて苦笑するカーベラさんに、バツが悪くって俺は、そそくさと出て行ってしまった。
***
朝になり、カーベラさんに使ってもらっている部屋に向かった。今度は慎重にノックをして「どうぞ」という返事をちゃんと確認してからドアを開けた。
「本当にすみません。夜のことは」
「まぁまぁ、気にするな」
土下座する俺に対して、大丈夫だから顔を上げてくれという顔をしたカーベラさん。
あの後、カーベラさんには服を着て、一応布団に入ってもらい、様子を見ることにした。
風邪を引いてもらっては、助けた俺自身がカーベラさんに対して、申し訳ないからだ。
「本当に体調とか大丈夫ですか?」
「何度も言っているが、問題ないぞ」
「・・・ならよかったです」
心底安心したという俺の顔に、笑顔を向けるカーベラさん。
朝ご飯を持ってこようとして、部屋を出るとき、
『くちゅん』
という、小鳥のように何とも可愛らしいくしゃみが背中から聞こえた。
思わず振り返ると、カーベラさんはうつむいて肩をプルプル震わしていた。
「あの、カーベラさん。本当に大丈夫なんですか?」
「だ、だから大丈夫だと・・・『はっくちゅん』」
「・・・」
やっぱり
「風邪引いてるじゃないですか!?もっと早く行ってくださいよ!・・・ああもうこんなにおでこ熱いじゃないですか!」
「だって、そんなことで心配かけたくなかったんだもん!・・・あっ」
「そんなことって・・・今、口調変じゃなかったですか?」
「ソ、ソンナコトナイゾ。イツモドオリダゾ」
「・・・まぁ、いいです。とりあえず薬持ってきますから」
「・・・ごめんなさい」
***
少しして、 薬を持ってきた俺に、
「なんだそれは?」
「えっ?薬ですよ」
「何?これが薬だと!?薬草ではないのか?」
「薬草っていつの時代ですか・・・とりあえず、飲んでください」
「こんな小さい一粒で風邪が治るのか?信じられん」
「絶対治りますから」
念を押されて言われたカーベラさんは渋々、薬を飲んだ。
「絶対と言ったな?絶対と言ったな!?これで治らなかったら切るぞ」と、半信半疑だったカーベラさんだったが、その後無事に風邪は治り、「寝ていた分も」と言って、元気よくご飯を食べていた。
≪風邪が治った後の話≫
カーベラさんは、どこか寂しそうに遠くを見つめていた。
「カーベラさんどうしたんです?」
「・・・あぁ、いや。ちょっと昔のことを思い出してな。前にも私が風邪を引いたとき、仲間が治してくれていたなぁ、と思って」
「そういえばここに来る前は、名の知れた冒険者集団の一人だったんですよね」
「そうだ・・・今、あいつらはどうしているのだろうか」
「・・・」
きっとカーベラさんもここに飛ばされてから、ずっと寂しい気持ちでいっぱいだったんだろうな。
今現在、仲間と会う方法がないため諦めていても、やはり心では嘘はつけないのだろうと、俺は思った。
「っと湿っぽい話はここまでにしよう」
悲しそうな顔で言ったカーベラに、なぜか俺は、
「その寂しさを俺にどうにかできませんか!?」
と、思わず叫んでしまった。
「あ、すみません。関係のない俺が寂しさをどうこうとか」
「あの・・・今のはとてもうれしいよ、耕太」
カーベラさんは、最初は唖然としていたが、頬を赤く染めながら俺を見つめて言った。
ドクンッと心臓が跳ね上がる音が聞こえた。
その顔で見つめられるのはちょっと反則だ。
だがそれもつかの間、「そういえば・・・」と、すぐにムッとした顔に変わり、
「私の恥ずかしいところを見せてしまったからな。腑に落ちん。だからこのまま引き下がるのも私の騎士道が許さない」
「あ、あれは、不可抗力です!俺は必死になっていて周りが見えなかったからで、わざとじゃないですから!」
「・・・・・・ふふふ、あははは」
「笑わないでくださいよ、もう。はははは」
これは、二人の笑い声から始まる、これからの楽しい生活のスタートだった。
ちょいと久しぶりの投稿だったけど、書き方変わっているような気がしてならない(震え)