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IT'S MY LIFE 4

 元老院の刺さるような視線を受けながら、いそいそと移動を開始する三王は、コツンコツンと軽い足音を鳴らし会場の石畳の上に降り立たった。

 今まで観客席で空軍隊の華麗な演舞を眺め楽しそうな声を上げていた人々は、会場を歩いていく三王に気付き、身を乗り出し大歓声を上げ始めた。

 毎度の事ながら、ただ軍人が歩いているだけだと言うのにたいした騒ぎ様である。

 紘王に至ってはベール越しでも『静かにしてくれ』と言っているのが分かる程だ。

 ただでさえセレモニー用の衣装は、絵本にでも出てくるような『王子様』や『貴族』はたまた『新郎』のようなものなので、優王ならまだしも、紘王のイメージとはかけ離れたものなのだ。あまり注目されたくないのであろう。

 足早に歩を進めていると、観客の大歓声で三王に気付いた空軍隊が、三王に挨拶をするように急降下して直ぐにまた浮上して行った。

 普通に考えると、そこまで間近を飛ばれてはひとたまりもないものだが、そんな事一切気にも留めない所がどうにもセレモニーで浮かれているのが分かる。

 三王の登場と、空軍隊の突然の急降下で、間近でその機体を見ることが出来た観客達は、これ以上ない程の歓喜に涙する者まで出始めた。

 先程の蟲の襲来の時とは違った意味でのパニックに陥っていた。


 逃げるように三王が歩を進めると、観客達がその姿を一目見ようと係員の制止を押し切り、観客席の最前列まで雪崩の様の押し寄せ始めていた。


「きゃぁ!!」


 歓声の中小さな甲高い悲鳴が響くと、一斉に三王が悲鳴が聞こえた方向を確認する。

 三王のいる会場より高い位置にある観客席。

 その観客席の柵からまさに今、押し寄せる観客に押され小さな女の子が落ちそうになっていた。

 その子の母親と思われる女性も近くにいて必死に叫び手を伸ばしているのだが、押し寄せる観客の波に飲まれ近づけないばかりか声もかき消され、その事に気づくものも居なかった。

 三王がその少女に気付き一歩踏み出した瞬間、押し寄せる観客の力に負け、少女の手が柵から離れてしまった。


「きゃぁぁぁ! 誰かぁ!」


 寸でのところで手が届かなかった母親が、悲痛な叫び声を上げながら少女が落ちた先を見下ろそうとした瞬間、その頭をギリギリ掠めるように何かが下から凄い速度で舞い上がった。

 その状況が理解出来ず、母親が反射的に見上げた先は丁度逆光でよく見えない。

 その何かが舞い上がった瞬間、地響きがするほどの歓声は止んでいた。辺りにはそのものの羽音とはらはらと散る羽だけが広がっていた。

 舞い上がったものがゆっくりと母親の前に降り立つと、ようやく観客はそれが誰であったか理解が出来た。


「凄いね。あんなに高いところから落ちそうになったのによく泣かなかったねー」


 少女を抱えたままふわりと柵の上に降り立ったのは純白のドレスに純白の翼を生やした憐王。

 憐王が何事の無かったかの様な普段通りの口調で少女に話かけ、目の前で言葉を失っている母親にそっと差し出す。


「怖い思いをさせてしまってごめんなさい。歩いて移動した私達の判断ミスだったわ……」


 憐王は少女と母親に向け今にも泣き出しそうな顔と声でそう告げると、風で捲れ上がっていたベールを戻し顔を隠そうとした。


「……様?」


 すると母親の腕の中で目をぱちくりとさせていた少女が、憐王に向かって何かポツリとつぶやいた。

 それはあまりに小さな声だったので、母親も憐王も聞き取ることが出来ず、二人ともその体勢で少女を見たまま固まってしまった。


「お姉ちゃん……きれい……天使様?」


 ベールを直そうとしたまま固まっていた憐王の顔に手を伸ばしながら、たどたどしくもはっきりと言う少女。


「……っ、申し訳御座いません憐王様! 娘が失」

「ねぇ……お姉ちゃん天使様みたい? 本当に?」


 ここアリアではもはや神格化されている三王の顔を見ることさえ許される事では無いとされているのに、直接助けてもらった上に話しかけるなど本当ならまずありえない。

 だからこそ先ほど三王が歩いてる姿を一目見ようと観客が殺到したのだ。

 そんな娘の行動を謝罪しようと頭を下げた母親だったが、憐王の意外な一言にまた顔を上げてしまった。

 すると憐王はベールを直すどころか、落ちてこないように完全に頭の上に上げたまま不思議そうな顔で少女と向き合っていた。


「うん! お姉ちゃんキラキラしててきれい! 天使様みたい!」


 その言葉でたちまち大輪が咲いたような笑顔を見せた憐王は、周囲の観客の目など一切気にする事無く力強く少女を抱き締め嬉しそうな声をあげる。


「ほんとっ!? 嬉しい! はじめてそんな事言われた! あはははは!」


 憐王は普段人に見せたことない程無邪気に笑い、少女を抱えたまま少し浮き上がりくるくると回り出す始末。

学生の頃にルーズリーフに書いていたやつが少し残っていたので、当時の原文ママで供養。最後まで書いてたはずなのにどこ行ったんだろう?

そして今とあまり変わらない文体ですね。成長しよう自分…!

確かSF系が書きたくて挫折した思い出があります。

そのうちリメイクします。

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