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ボツネタ供養  作者: 鹿熊織座らむ男爵
22 ゴーレムの原動力は
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4:オススメ料理の群れは絶品でした

 ベルが出した条件にしばし考え込んでいたシエルだったが、すぐ当たりをつけたのか旧市街へとベルを案内する。

 道中ヴィゴから食費を持たされているから気にしなくてもと再三言われたが、その度に今日は大丈夫ですからと突っぱねる。

 自分のお金で気兼ね無く好きに食べたい。それに、この街の物価も気になる。

 奢りやおすすめの店となると、金額やメニューなど見れずお任せ料理が出てきてしまうかも知れない。

 二人が何度も何度も同じ問答を繰り返していると、いつの間にか目当ての店についていた。

 旧市街と言う事もあり、落ち着いた雰囲気の店構えにほっとする。

 店の外には手書きのメニューが立て掛けられていたが、シエルはそれを見る事無く扉を開けベルをエスコートする。

 時間が時間なだけに店内にはベル達の他に、一組だけしか客はいなかった。

 シエルは慣れた様子で、店の奥のテーブル席へと進んでいった。

 

「お手頃価格でこの辺りの家庭料理が食べれる店だよ。雰囲気は高そうだけど、内容的には食堂に近い」

 

 シエルは木で出来たハードカバーのメニュー表をベルに手渡しながら、店主に聞こえないように小声で話す。

 思わず笑ってしまったベルは、小さく咳払いをするとメニュー表の一ページ目を開く。

 メニュー表に挟まれた手書きの本日のおすすめと、前菜、軽食、魚、肉、飲み物など綺麗に並んだメニューは、確かに今のベルでも心置き無く堪能出来る価格だった。

 一通りの値段を確認すると、ベルはよしっと何を頼もうか悩み始めた。

 

「あ、もしかしてシエルさん、あまりお腹すいてなかったりします……?」

 

 はたと思い出したように顔を上げ問うと、シエルは驚いたように目を丸く見開いた。

 

「いや、俺も何だかんだ昼食を食べ損ねたからペコペコだよ。護衛だけど、折角だし俺もがっつり食べて行こうって思ってたところ」

 

 ベルと同じようにメニューを広げていたシエルは、どこか気恥ずかしそうに照れ笑いをする。

 シエルの言葉に、今更ながらベルはシエルは護衛だった事を思い出した。

 確かに考えてみれば、護衛とその対象が同じ席で仲良く食事は、本来おかしな事なのだろう。

 ましてやシエルの本職は王国騎士。

 気さくな雰囲気で忘れていたが、本来ならこうして連れ回したり同じテーブルで食事など出来ないはずだ。

 一番奥の席を選んだ事と、照れ臭そうに笑うシエルの様子に、ベルは変に納得してしまった。

 

「良かった! 私だけ食べるの嫌だったんですよ。シエルさん、はしたないですけど折角なんでいっぱい注文して分けっこして良いです?」

 

 理解した上で、ベルはあえて友達に接するように距離を詰める。

 再び目を見開き固まったシエルだったが、ふっと笑って首元を緩めると、ささっとメニュー表を何ページかめくった。

 

「これ美味いけど一人だとちょっと量が多いんだよな。あとこれとこれは食べておいて損は無し。ベルは肉と魚どっちが良い?」

「今日はお肉!」

 

 シエルの言葉に、ベルは即答すると肉のページを開きどれにするか相談を始めた。

 

 しばらくすると、頼んだものが続々と運ばれてくる。

 マッシュルームのロースト。ベリー入りサラダ。トナカイの煮込みとマッシュポテト、リンゴンベリーソース添え。肉入りジャガイモのダンプリング。

 あれこれ悩んだが、トナカイの煮込みは量が多いと聞いていたので控えめに頼んだつもりだった。

 しかし、テーブルに広がる料理の数々は圧巻だった。

 ガーリック薫るマッシュルームのローストは、熱いですよと主張するよう詰められたハムとチーズとオイルがぐつぐつと煮たっている。

 さすがにそれを見て一口目に選ぶには気が引けると、ベルは二人分のサラダを取り分け、いただきまーすと一口頬張る。

 シンプルな味付けのサラダだが、ベリーの酸味と甘味が面白くそれだけで食が進んでしまう。

 ダンプリングは一つ一つが大きく、ジャガイモを使っている為かもっちりと弾力があり、一つでかなりの満足感がある。

 ダンプリングはベルの好物だが、ここまで贅沢で満足出来る物はそうそうありつけない。

 気付けば二つ目のダンプリングをぺろりとたいらげていた。

 そしてメインのトナカイの煮込みだが、ナイフで切り分けなくともほろりと崩れる柔らかい肉質には驚きを隠せなかった。

 ほろほろと崩れる肉をどうにか皿に移し、マッシュポテトとリンゴンベリーソースと共に口に運ぶ。

 恐ろしく臭みは無いが、しっかりと肉を食べていると言う満足感はある。

 付け合わせのマッシュポテトとリンゴンベリーソースとの相性もよく、決して肉の旨味を邪魔する事は無い。

 どれをとっても美味しく、ベルは一口食べるごとに人目も気にせず、唸り子どものように足をバタつかせ舌鼓をうつ。

 

 食後の余韻に浸りながら喉を潤していると、そう言えばとシエルが話をきり出した。

 

「今更だけど、ベルはなんでひとり旅……と言えるのか分からないが、旅をしているんだ? どこかへ向かう途中にしては土地勘も無いし」

 

 そこでふと、ベルは旅の目的を言うのをすっかり忘れていたと思い出した。

 狼から助けて街についてそれっきりならば話す必要など無いが、やましい事も無いし、しばらく厄介になるのなら話しておいた方が良いだろう。

 ベルは師匠と暮らしていた時の話や別れた時の話、目指す野生の菓子園の話を順を追って説明していった。

 

「野生の菓子園……。さっぱり聞いた事も無いな。この国や周辺国のどこかにあるなら我が王が黙ってるはずがない」

 

 シエルの言葉に、ベルはやっぱりと肩を落とす。

 シエルが言うならばそうなのだろう。

 菓子の街を作るほど菓子好きの王がいる国で、野生の菓子園などと言う夢の楽園のような場所が人知れず放置されているはずがない。

 それに、旅に出て随分遠くまで来てしまった。

 いくら師匠とは言え、こんな遠くまで一人で来いとは言わないだろうと薄々気づいてはいた。

 しかもこの国どころか周辺国も無いだろうと言われ、ベルはどうしたものかと頭を抱えた。

 

「この街で路銀を稼ぎつつ、一応情報収集してみても良いんじゃないか? 元来た道を戻るにしろ違うルートで戻るにしろ、ゴーレムの菓子の事もあるだろうし」

 

 ここに来るまで、何度か街や村が無く菓子も材料も買えなかった事があった。

 その度にベルは一人で街まで行き買い物をし、ゴーレムの元へ戻ってくると言う手間をかけていた。

 ただ戻るだけならその二の舞になる。

 他のルートで戻るのなら、しっかりと情報収集をしてからでないと、何があるかわからない。

 考えることが増えてしまったベルは、深くため息をつくと、メニュー表を開きデザートのページを眺める。

 メニューをざっと見て、ベルは店主に向かい片手を上げる。

 

「すみませーん。ブラックベリータルト下さーい」

 

 注文を終え顔を上げると、シエルが笑いを堪えたような面白い顔をしていた。

 

「パティスリーでもカフェでも無い店のデザートを食べたなんて、ヴィゴオーナーには絶対言えないな」

 

 ふっとヴィゴの顔を思い出したベルは、確かにと苦笑いしながら大きく頷いた。

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