異世界ゲート1
【異世界人とアンチ異世界人の現地希少種族が文化史作り&バックパッカーor貨幣貝と毒と種族の関係性について】
と言うイメージで見切り発車した結果既に矛盾し始めたので一度ボツへ。
丁寧な言い方をするならか弱い。思った通りに言うならば貧弱で軟弱で体たらくで身勝手で横暴で。
異世界人と呼ばれる人種は、すべからく一概にそうと言える。
異世界のより良い文化を取り込む事が出来る為、異世界人は救世主やなんだともてはやされるが、見知らぬ土地で着の身着のまま生きられる程彼らは強靱では無い。
森に放てば獣に喰われ、海に落ちれば抵抗もせず沈んでいく。肉体労働は子ども程の役にもたたないし、言葉も通じず苦労する。
そのくせ逐一故郷と比べ故郷の素晴らしさを説き、恋しいだなどと言う。
彼らの言葉を借りるならば、私達は現地人と表現すれば分かり易いだろうか。
さて、いきなり自分の家に見知らぬ人物がやって来て甲斐甲斐しく世話をしたとしよう。それは哀れみからか宗教的な観念からか、理由は何でも良い。
その意思の疎通の難しい人物を必死で世話をした見返りが、自分の家の設備や料理、風習や常識を馬鹿にされ、いかに自分自身が、自分の故郷が、自分の常識や技術が素晴らしい物であるかを言われ続けたらどうだろう。
申し訳ないが、私は自分の世界を侮辱した人物の世界がいかに素晴らしくとも、諸手を挙げ大絶賛出来る程世界に失望はしていない。
が、こんな事を口にしてしまえば〝古い習慣に囚われたまま成長するつもりも無い弱虫腰抜け野郎〟と罵られるだけだ。
画期的な技術革新を迫る異世界人を否定する現地人も居れば、やはり諸手を挙げ讃頌する現地人もいると言う事。
宗教や政治と同じで、影響力があるものはどうしても意見が二分化してしまう。どちらが正しいかなど、その改革が成功しようが失敗しようが、それで歴史が変わったとしても結局は分からないものだ。
そしてその場合、改革を急ぐ者の力の方がやる気に満ち行動力もあるのだ。
――だから、異世界人の為だと現地人が長きに渡り研究し続け、ほんの百年程前に完成した異世界と現地を繋ぎ自由に行き来出来るゲートの存在も、未だに正しいのかどうか俺には分からない。分かるはずも無い。
長期休暇なんかにちょっとした贅沢旅行に行く位の感覚で、最近は異世界の人間がこちらに訪れるし、こちらの人間も異世界に行ったりする。
異世界人のお陰で海の向こうにはまだ島があり人が生活している事や、この世界では見られない食品や生物等も知ることが出来た。
そして異世界もこちらの技術を採用したりと、表面上はなかなかに良い友好関係を築けていると言える。
当初は多種多様な考えの違う民族が集まれば、もっと酷い事件や戦争が起こるかと双方共身構えていたのだが、この百年足らずで各々世界間の協定や条約のお陰か、驚く程穏やかである。
今はどんな小さな村にも異世界の産物が見受けられる。俺の住む村にもいくつかある。
この村はまたこの世界でも辺境と言っても良い程辺鄙な場所だと異世界人から聞いた。
だが、村特産の貝は、この世界の人間ならば誰しもが持っている程無くてはならない重要な物だ。
二色の海と三色の川が交わる位置にあるこの村は、栄養も豊富だが毒素も多く集まる水質となっており、五色が交わる幻想的な見た目とは反し、生き物の住まない水の村と言われている。
だが、そんな水でしか育たないのが先程言った貝だ。
水の色と毒素を取り込み複雑な色味をした巨大な二枚貝。この貝の殻を削って出来た物が、この世界の通貨として使われている。
この貝をある程度まで大きく育て、加工し出荷するのがこの村唯一の産業だ。
しかし、先月から異世界人が現地人のお偉いさんを連れこの村に滞在している。勿論目的は先にあげた貝だ。
この貝はこの世界でもこの村にしか生息していない。その詳しい理由を解明し、より簡単にこの村以外でも育てる事が出来ないかを日夜研究しているとの事。
そんな事されたらこの村の食いぶちが無くなってしまう。村長を筆頭に村の男共が何度か広義に行ったが、村の食いぶちよりもこの貝を大量に養殖する方が、この世界の為になるととても回りくどい丁寧な言葉で言われたのだそうだ。
こんな他民族が食えもしない貝、ただ量産した所で流通する金が増えるだけ。それがどうして世界の為になるって言うんだ。その金の多くは中央におわすやんごとなき方々の宝物庫に並ぶだけだと言うのに。
中央というのは異世界ゲートがある場所の総称で、中央には多種多様な人種がひしめき、狭い土地に肩を寄せ合い日々議論しながら生活をしている場所。この世界に住む若者は、一度は中央に住み一旗上げたいと願う場所となっている。
そして先程〝他民族が食えもしない〟と言った通り、俺を始めこの村に住む人間は、異世界人の言葉を借りるならば所謂〝人外〟と言うやつだ。この人外――人にあらず、人の外と言った意味合いの言葉が、俺達からしたら異世界人を嫌う理由と断言しても良い程だ。
やつら異世界人は、自分達の肌や髪の色の違いや、目に見える怪我や欠損、疾患などには過敏に反応し必要以上に糾弾してくる。
しかし、自分達の世界には居ない人種、人外等に対しては文字通り、本当に同じ人と思っているのか甚だ疑問に思う無礼な言動が多い。
異世界人を快く思わないのは、異世界人と見た目が異なる現地人が大半を占める。
そしてそんな現地人も、相手が異世界人だと分かるや、それだけの理由で一線を引いてしまうようになった。
俺達の種族は村特産の貝……特に呼び名など無いが仮に貨幣貝とでもしようか。この水中の毒素を濃縮したような貨幣貝を食べる事が出来る。
俺達の種族は確かに見た目は異世界人とは大きく違うかも知れない。
まず、腰骨から一対、普通の足とは別に巨大な鳥の鉤爪のような、骨張った竜の手のような巨大な足が生えている。
大体のやつはこっちの足――骨足で地面を蹴り走る。異世界人と同じ足の方で歩くのは、小さな子どもの歩幅に合わせる時か、重い物や大きな物を持つのに骨足を使うので、その時は自動的に通常の二足歩行となるくらいだ。
異世界人と同じ姿形の現地人とは違った進化をしただけで、祖先は一緒だ。それは何年か前に異世界人と現地人の研究者が調べたそう。
あと骨足の根本、尾てい骨の少し上辺りには飾りのようなヒレがある。取り立てて泳ぐのが早かったり、自分の意思で動かせるわけでも無い。本当にただの飾りだと俺は思っている。
あとはどう言う法則性があるのか知らないが、村の半数のやつは、異世界人と同じ二足のがある部分が、分かりやすく言えば人魚ってやつの形をしている。
半身が魚でも骨足はある為、陸上の生活もなんら不自由はしていない。ただ足が二足あるか尾ビレがあるか、泳ぐのが比較的得意か陸上で重い物を運べるか位の、本当に些末な違いだ。
だが、やはり異世界人からしたら大きな違いなのだろう。尾ヒレを持つやつらは異世界人が来た日から、殆ど異世界人との接触を避けるようにせっせと食材を採りに遠くの川や海に潜っている。
異世界人は俺達種族の事をそのまま骨足種と呼び、更に分かり易く二足タイプと人魚タイプと区別する。その呼び名に何ら間違いは無いので、俺は特に不満には思わない。
ちなみに俺は二足タイプ。よく人魚タイプのやつに荷物持ちを頼まれる事がある。
そして何で俺は今更こんな事をだらだらと書き記しているのかと言うと、明日からその異世界人の一人を面倒見ないといけない事になったからだ。
不満のはけ口と言う分けでも無く、勿論その異世界人に見せるためでも無い。ただただ頭の中に過ぎった事を書き留めたくなっただけ。
思う事を書き記していけば、俺も気付かないうちにしている〝異世界人差別〟に気付けるかも知れないと思っただけだ。
結果としては、俺は自分の想像以上に異世界人を苦手に思ってたらしいけどな。




