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宰相と侍女7

「これ! クロウェルにプレゼント!」


 姫の歴史の勉強の為会議室を訪れたクロウェルに向かい、メルティーナは元気な声を上げぴんっと両手に持った紙袋を差し出した。

 それはクロウェルが扉を開けた瞬間の出来事だったので、資料を持ちクロウェルの後を追って入室しようとしていたリディアは、急に立ち止まったクロウェルにぶつかりそうになり危うく資料を落とすところであった。

 だが当のクロウェルはそれ程驚かなかったのか、普段メルティーナへ向けるものと同じ穏やかな笑みを浮かべ、自身に突きつけられた紙袋に視線を落としていた。

 

「これはこれは……頂いても宜しいので?」


 紙袋を受け取ったクロウェルが笑みを深めメルティーナに視線を向けると、メルティーナの顔は見る見る赤く染まっていく。


「勿論よ! でも部屋に戻ってから開けてね! ここではダメよ!」

 

 メルティーナが真っ赤な顔を隠すようにクロウェルにしがみ付く様は、まさに絵画の一部を切り取ったかの様な光景だった。

 愛らしい幼い少女が豪華なドレスに身を包み頬を赤らめていると言うだけでも見とれる程だと言うのに、更にその少女がしがみ付いた相手が、彫刻のように整った顔に慈しむ様な穏やかな笑みを湛え少女に視線を向けているのだ。そこに窓から差し込む柔らかな光と年季の入った調度品が加わり、本当にこれは現実なのか疑いたくなる光景が出来上がっている。

 そんな光景をぼんやりと少し離れた場所から眺めていたリディアは、メルティーナがクロウェルに手渡した紙袋を見てひとり穏やかな笑みを浮かべた。

 それはメルティーナに頼まれリディアが夜買いに走ったあの茶葉の袋だった。

 本当はこの場で袋を開け、クロウェルの喜ぶ顔を見たいはずだと言うのに、そんな幼心を仕舞い込み必死に大人を演じようとするメルティーナと、そんな思いとは対照的に本心がひしひしと伝わってくるその雰囲気に、リディアは少しくすぐったい思いをしながら笑みを深める。

 

「今すぐ中を見たかったのですが、楽しみは後にとっておきましょうか。ありがとうございます、姫」

 

 嬉しそうにクロウェルの手を引っ張り部屋の中へ誘導していく。

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