寒い。寒い。
跳躍。
少女は緑色の瞳をギラつかせ、目の前にいる獲物を狩りに行く。
バキゴキボキン! 骨が折れる音がした。
ドサリ、と。少女より数倍の図体を持つ男が、膝から崩れ落ちる。これで、少女は全ての人間の命を『奪った』ことになる。
その日は、夏だというのにとても寒かった。
血で全てが赤く彩られた部屋。僕は、震えていた。
怖かったんじゃない。とても……寒かったんだ。
寒い。寒い。腕で自分の身体を抱こうとして……そこで僕は、自分の腕が無いということに気がついた。
──どこだろう、僕の腕は。
周りを見渡したけれど、僕みたいに四肢の裂かれた人間は他にも沢山いて、従って腕や足も沢山転がっている。僕の腕は、どれだ。
部屋の中心には、一人の少女がいた。
右手の指にはどす黒く輝く指輪。左手には、どす黒い血で染まったナイフ。
僕に背を向けて立っている少女は、肩を上下させていた。どうやら息を切らしているらしい。
少女は振り返る。どうやら左目を失っているらしく、そこから滝のように血が流れでていた。
そして──血まみれの顔で、少女は笑う。
「疲れた」
そう言って、少女は僕に近づく。
「これで、終わりよ」
僕の目の前に来た。少女はしゃがむと、僕の頬に手を添える。
「感謝してよね」そう──少女は言い放つ。
僕は、何も言えなかった。それだけの気力が無くて。
「これからアンタを──」
眩く光る指輪。それを見ながら。
僕は……