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オレと呪いと幼女と青春  作者: 碧空澄
第一幕 呪縛
2/22

一話 それは、呪われた生なのだけれど

 静かな夜だった。

 人気のない通路に──死体が二つ。

 それは、少年と少女だった。少女が少年をかばうようにして、倒れている。

 その死体を見下ろす──黒ずくめの男たちが五人。少年少女を取り囲んでいた。

 五人の内の一人がしゃがむ。すると──おもむろに、少女の身体をまさぐり始めた。

 服の上から、もしくは服の中にまで手を突っ込んで──ふと、その手が止まる。

「見つけた」

 男は服の中に突っ込んでいた手を引き抜く。その手には、一つの指輪があった。赤い、ルビーのような宝石の付いた指輪だ。鈍く輝いているように見えるのは、光の加減か。

 男は懐から携帯を取り出して、

「会長。見つけました」

【そうか、よくやった。……指輪を持っていた娘はどうした?】

「殺しました。ただ、一つだけ問題が」

【ん? 何だ、言ってみろ】

 男は少し気まずそうに言う。

「……もう一人、一般人も一緒に殺してしまいまして──」

【──────】

 一瞬、電話先の男が黙った。ごくり、と報告役の男は唾液を飲み込む。

【……構わない、捨ておけ。後で処理班を向かわせる】

「畏まりました」

 そう返事をすると、男は通話を終了させた。

「おい、行くぞ」

 そう男が言うと、周りにいた四人もそれに続く。

 そして、男たちは姿を消した。


 その、数分後──

「ん、んん……っ」

 頭を撃ちぬかれて死んだはずの少女が、伸びをしながら起き上がる。

「あ〜あ、脳みそ撃ち抜かれるとか久しぶりじゃない? ま、痛くないから良いケド」

 呑気なことを言いながら、首をぽきぽきと鳴らす少女。撃ちぬかれたと彼女が言ったその頭からは、血は流れていなかった。

「指輪も──本物はこっちだし」

 少女は腹を親指でぐっと押しながら、自らの喉にもう片方の手を突っ込んだ。そして、口からおえっと指輪を吐き出す。その指輪は、意外と綺麗だ。

 その指輪を眺めながら、少女は視線を鋭いものにする。そして──隣で横たわる、少年の姿を見た。

「もう、死んでるでしょうね……」

 見た所三発被弾している。肩と太腿、それから胸。恐らく胸への一撃が致命傷となったのだろう。

「……せっかく会えたのに、ロクに話もせずに逝っちゃうなんて」

 少女は悲しい顔をした。そして、それが都合の良い言葉だということも分かっていた。少年が死んだのは、紛れもなく少女のせいなのだ。

 ──それに、どちらにせよ、少年はもうすぐ死ぬ運命にあった。

「ごめんね。また、こんな目に」

 小さく謝罪の言葉を口にする。その『ごめんね』は、今起こった出来事とこれから少女がやること。その二つに対してのものだった。

「この指輪、あたしはもう使えない。だから、アンタが使うしかないの」

 少女はそう呟きながら、少年の手を取る。十年ぶりに触れた手は、とてもたくましかった。

 中指に、指輪を嵌める。大きさはぴったりだった。

「安心して。これで、アンタは生き返るから」

 それは、呪われた生なのだけれど。

 もう逃げない。少女は決心する。ずっと彼の傍に居る。

 そう。消えない、罪悪と共に────…


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