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初代勇者は休めない  作者: 宵咲 栞
一章 邂逅、再び
8/13

第07話 未知を知るということ

本当にお待たせしました……

大変、遅れてしまいましたが……これからもお読みいただければ嬉しいですし、私のモチベーションその他諸々が上がります、とてつもなく。


前書きはこのくらいにしまして、どうぞ!!

~~~~~~~~~~燕視点~~~~~~~~~~




不調で休むと連絡に来た祐眞が部屋に戻った後。


僕はメイドさんに連れられて、昨日集まった部屋へ向かっていた。



昨日…………正直、思い出したくない。




どんな顔して会えばいいんだろう、などと悩んでいる間に着いていたようでメイドさんは挨拶を残して去って行った……って、えっ?



帰っちゃったよ!?




「どうしていればいいんだろう……」


思わず呟く。


「そりゃあ、待つしかねぇだろ」


「ふぇっ!?」


後ろからいきなり声が聞こえ、驚きで変な声出ちゃった……



声がした方へ向く。



そこにいたのはーー


「慎也?」


「おう、俺だ」


慎也だった。知らない人じゃなくて良かった。


「おはよう、結構早く来たと思ったけど慎也の方が早いね」

「ああ、日課をこなしてたらメイドさんに案内されてな」

「慎也の所にも来たんだ……」



他のみんなも案内するためにメイドさんは行っちゃったのかな?




そんな理由ならいなくなったのも分かるけど。



まあ、それはいいとしてーー


「ねぇ慎也」

「なんだ?」



さっきから気になっていた事を聞いてみる。



「ここって異世界なんだよね?何で日課なんて出来るのさ……」



僕の質問に慎也は胸を張って答えてきた。



「そりゃあれだ、日課だからやるのは当然だろ?」

「質問の答えになってないよ?まあ、そこが慎也らしいけどさ」


どんな場所でも変わらない親友の姿に、思わず頬がほころぶ。


「だろ?しかし本当に異世界なんだよなぁ、ここ」

「そうなんだよね、全く実感ないけど」




そう言いながら辺りを見回し、改めて世界の違いを実感する。




そもそも、異世界なんてものは創作の中でしか存在しないと思ってきた僕達が異世界に来た、なんて言っても実感がない上に信じられる訳がない。



しかも、だ。その異世界を救ってくれ!!なんて僕達は頼まれた。





世界を救う、か……僕達がやるんだね。



何が起こるのか、無事でいられるだろうか。なんて不安はもちろんあるけど、その不安を吹き飛ばすくらい期待している自分がいる。


旅に出る前の主人公の気持ちが分かった気がした。



どうなるかまだ分からないけど……こんな機会を逃す訳はないよね!!




これからの出来事に思いを致していると、ある事に気付く。



「まあ、さっき外を見て"ここは異世界なんだ"って思ったけどな」

「え?ねぇ慎也、もしかして日課って……」


質問をぶつけると、先程と同じように答えてくる。



「そりゃあれだ、外を走ったりするに決まってるだろ」



一人だけ早くこの世界を見てるなんて……早い遅いの違いしかないけど、何故かズルいと思った。


だからなのかもしれない、自分の口から自然と言葉が零れたのは。



「いいなぁ……僕も早く見たいな」

「だったら見りゃいいじゃねぇか」


行きたいんだけど、行けない理由が僕にはある。


「みんなを待たなきゃいけないし……」

「俺が待つし、もし来たら教えるから見てこいよ」



慎也が見てこいと言うので見てくることに。



この後見ることが出来る景色に気持ちを高揚させながら部屋を出て、近くにあった窓に近付き外を見てーー



「わぁ……!!」



目の前の景色を上手く言葉に出来なかった……どう表現すればいいか分からない程に素晴らしい景色。






あちらの世界のようにビルが建ち並び自然のかけらもない機械的な道路がある訳ではなく、目に見える範囲全てに広がる緑と美しい空、賑わっているのが見て分かる程に活気溢れる町、兵士さん達であろう掛け声のようなものまで聞こえてくる。



あちらでは見ることの出来ない景色に喜びのあまり、自然と言葉が零れる。


「いい景色、こんないいものが見られて良かった」



しばらくの間景色を堪能した後、来た道を戻って部屋に到着すると全員が

揃っていた。



かなりの間見てたんだね、僕……それにしても早いな。



「みんなごめん、遅くなって」


遅れてしまった謝罪をしながら頭を下げる。


「今来たばかりだから気にすんな」

「山薙君はさっきから来てたって、鷲崎君に聞いたよ~?」

「つまり、謝る必要はない」

「みんな……」


つい謝りそうになったところで慎也から声がかけられる。



「終わり終わり。燕も来たことだし、これで全員揃ったな?」




慎也の言葉に頷こうとして思い出す。



「ちょっと待って、祐眞が体調悪くて休んでるんだ」


「祐が?珍しいこともあるのね~」

「腹でも壊したか!?」

「この世界の病気とかだったら大変だぞ……」


祐眞を心配するみんな。やっぱり人気者だよ、祐眞は。




「そんなに酷いみたいじゃないし大丈夫だと思う。念のため、ヴォルゼスさんには伝えておくよ」



さすがに伝えておかないとマズイからね。



「だな。それは燕に任せる」

「まあ、聞いたの僕だから当然だね……」

「とりあえず全員いるみたいだし、王様が来るまで待つか」


慎也の言葉にみんなが頷きを返す。




それから少しの時間が経ち。




「すまぬ、遅くなった。皆揃っているようだな」


ヴォルゼスさんが現れて一言。


それをさえぎるように僕は声を上げる。


「王様!一人だけ体調が悪いとのことで休んでいます」


「そうか、後で医師を手配する。こっちの病気だとしたら危ないからの。……あの馬鹿、もう少し考えてだな……まったく」


連絡を聞いたヴォルゼスさんはそう言ってくれた。後の方が聞こえなかったけど、何を言ってたのかな?



「一人いないとの事だが話を始めさせてもらうぞ。まだ混乱していたり言いたいことがある思う者もいるだろうが、後で時間を設けるから今はしっかり聞いてくれるとありがたい」



そういう人がいるのか気になってみんなの顔を見てみると――目が輝いてるね、うん。

楽しみでしょうがないって顔してる……危機感全くないね、心配になってくるよ。




まあ、僕もだけど。



「では、昨日やってもらった事があるじゃろう?あれに何の意味があったのかを詳しく説明させてもらう。技能と属性を調べると昨日、ワシが言っておったのは覚えておるな?」




一旦話すのをやめ、みんなの様子を伺っている。


さすがにみんな覚えてるよね……?うん、大丈夫そうだ。


みんなの反応を確認し、ヴォルゼスさんは話を再開した。




「大丈夫そうじゃな、続けるぞ。調べてもらった結果はもう出ておるでな、確認してもらう方法があってのう……これに関しては口で説明するよりやってもらう方がいいのでな、誰か手伝ってくれんか?」



誰がやっても一緒だろうし、ここはーー



「僕にお手伝いさせてください!」



僕が名乗り出よう。



「すまぬの。お主は……」


少し申し訳なさそうに聞いてくるヴォルゼスさんに向かって自己紹介をする。


「山薙燕、と申します王様」

「ヤマナギツバメか……ではツバメよ、昨日のようにワシの後に続いて言って欲しいのと、手を広げて前に出してくれい」


昨日だと……田霧君がやったやつかな。


「広げましたよ、これで大丈夫ですか?」


合っているかどうかの答えは視線を向けた時の頷きがそうだった。



「大丈夫だ、では行くぞ……『己の技をこの手に現せ!!』」

「ええと……『己の技をこの手に現せ!!』」



ヴォルゼスさんに続き言葉を発した直後、不思議な感覚に包まれ、前に出した手から風が吹き荒れ僕の髪を揺らす。


でもそれは一瞬のことで、風は吹き荒れた場所に・・・かを残し、止む。




「えっと……これは?」



先程の感覚を疑問に思いつつ、残った何かを指差しながら、ヴォルゼスさんに尋ねる。



「それで技能を確認することが出来るんじゃが説明は少し待ってくれい。属性については、唱えた時に起きる現象でどの属性なのかが分かるから、やってもらったという事じゃな」



ヴォルゼスさんの説明通りに考えると……



「僕の属性は風、ということですか?」



「そうじゃな。次に技能についての説明をするから皆もワシとツバメがした事をして欲しい……と言いたいところじゃが、その前に『魔力』について説明をさせてもらうぞ」



魔力、という単語に何人かが反応する。



「魔力、これぞファンタジー!!」

「この年で魔法使いになるとは……」

「なるのは魔術師かもね?」



「なんじゃ?お主等は魔力を知っておるのか?」


その光景を見たヴォルゼスさんが疑問を抱いている。


なんて説明しようかな、よし。


「王様、僕達の世界にある、人の空想を元に描かれた本に魔力が登場している為、知っているのです」


「そうか、お主等の世界は不思議じゃな……違うかもしれんから説明はしておく。本来魔力とはこの世界に生きる全ての生物が持つ力なんじゃが、魔力のないあちらから来たお主等にも何故かある」


僕達にも元々あったんだ魔力って。



「その魔力を活かすために『詠唱』や『魔方陣』、それに『精霊』が必要になる。ちなみにさっきワシとツバメが使ったのが詠唱という物になる。これらについての説明は今度じゃな。次に魔力を感じとる方法じゃが、体の一部分ーーとりあえず手じゃな、そこに何かを集めるような感じでやってくれんか?」



みんなで結構な時間、ヴォルゼスさんの説明の通りに練習をしているがこれがなかなか難しい。



僕もやってみると、出来た。それもあっさりと。



僕の体が不思議な感覚に包まれていき、さっきの感覚と同じものだと気づき……これこそが魔力なのだと理解する。



「僕は出来たよ、変な感じはするけど」

「私も出来た!!けど、変というよりは暖かいかな」

「何も起きん、何故だ……」



聞こえてくる声から判断すると、出来てる人は半分くらいかな?



「うむ、出来ておるな。出来た者はまだ出来てない者の手伝いを頼むぞい。皆が出来たらワシとツバメが行ったことをやってくれ」



辺りを見渡しながらヴォルゼスさんが指示を出し、一度感覚を掴めば後は余裕と言わんばかりの勢いで、みんなが出来るようになるのにそう時間はかからなかった。



僕がした詠唱?をみんながした時は凄かったね……雷が轟き空に穴が開き、炎が燃え盛り僕達は煙に包まれて、水が流れ落ち床は水溜まりだらけ、土は形を変え人のような姿に。



なんだろうこの自然現象のオンパレード、ここだけ異常なくらいの災害が起きてるよ。



全員が出来るようになり、僕が代表でヴォルゼスさんに報告に行くとーー



「おお、もう出来たのか。なかなか呑み込みが早いのう」


なんて、ちょっと嬉しいことを言ってもらえた。



僕を下がらせたヴォルゼスさんは手を打ち合わせて注目を集め、みんなの視線が自分に向かっていることを確認すると口を開いた。



「無事に出来たようで何よりじゃ。さて、皆が口にした詠唱によって出現した物が、技能を確認する為の物で『エトア』とワシらは呼んでいてな、これに自らが触れることで技能を確認出来るようになるんじゃ、触れてみるといいい」



勇気を出して何か……じゃなくてエトアに触れてみる。



一瞬の輝きの後、僕の前にノートのような形をした板……みたいなものが現れる。



これがエトア……なんだか、ゲームのステータス画面みたいだなぁ……などと思いながら板を見る。



それには名前を始め、色々な情報が記されていた。





[名]山薙 燕 [歳] 十八 [性別] 男……?

[属性] 風 [チーム] ーー [ランク] ーー


[称号]【勇者】【異なる世界の者】【苦労人】

[技能]【奔放自在】【風魔法】【言語理解】



うん、うん。


性別が怪しまれてるよ!?


それと苦労人……確かに苦労してるね、誰かのおかげで。



「熱血漢か、まあ間違ってないな」

「冷酷と無慈悲!?私ってそんな風に……」

「人気者は嬉しいけど、馬鹿は酷いよ!?」



相当酷いのがあったけど、称号はどうやって決まってるんだろう……なんて考えを巡らせていると声が聞こえてくる。



「皆、確認は出来たようで何よりだ。後はチームとランク、称号の説明をしたら次に移るのでもう少しだけ聞いて欲しい。複数人で組んだ状態のことをチーム、それをエトアに登録すると表示されるようになる。ランクはチームの大体の強さを表す為のものじゃな」



そういうのもあるんだ……異世界の凄さに感心する。



「先程聞こえておったが、なかなか個性溢れる称号ばかりだったな。称号はこれまで関わってきた相手が一番思っている物が表示される。酷い称号だった者は……頑張ってくれい」


本人が頑張らない限り、どうしようもないらしい。


苦労人で良かったと安堵する。


「長くなってしまったが以上で説明は終わりだ。この後は訓練所で戦闘の基本を学んでもらう。場所についてはワシが案内するからついて来てくれい」



そう言って歩み始めたヴォルゼスさんの後に続いて、僕達は訓練所へ向かった。


これから起きるであろう出来事に心をおどらせながら。


お読みいただきありがとうございました!!


解説の第二回は……魔導の続きです!


『分析』 アナライズ

対象の状態を確認出来る魔導で、相手の得意属性や技能、身体の異常まで確認可能。

ちなみに、食べ物が痛んでいるかなどの確認にも使える。


『感覚強化』 センスアップ

五感を強化することが出来る魔導。

強化の倍率は自身で変えられるが、上げ過ぎには注意。

同時に複数の感覚を強化することも可能。



今回はこの二つです、次回もお楽しみに!!



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