第06話 守る為に
遅くなるのが恒例になっていてすいません……
読んでいただいてる読者の皆様に感謝を!!
最新話です、どうぞ。
「う……首が痛えな、寝違えたか……ってここは?」
辺りを見回し、執務室で目が覚めたことに気付く。
なんでこんな所で……あぁ。
「確か昨日は……レイヴェさんに怒られてる途中で気絶したんだった。夜通しの説教は辛いな、って……おわあ!!」
勢いをつけて起き上がろうとしたら何かに引っ掛かり、転ぶ。
痛てぇ……何に引っ掛かったんだ俺は。
足元にあったものを拾い、確認した結果……服だったものだと判明した。
「何故!?なんかボロボロだし……ていうか誰のだよ……」
他のもあり、どかしている内に何故か見慣れた物体を見つけた。
見慣れた物体というのが気になるが、そこを無視して持ち上げ……って重いな‼
なんとか持ち上げ、横に置いて確認すると――
「なんだゼストか、それなら色々と納得が……ってゼストじゃねぇか!!」
パンツのみを身に付けたゼストだった。
「何でパンツ一丁で服の中に埋まってたんだ……?」
ツッコミ所がありすぎるんだが、全てにツッコミを入れろと?
……別にいいかな。
その辺りの事情は本人に聞けば分かると思い、体を揺すって起こしにかかる。
「ゼスト、起きろ!!」
「うぅ……やめろレイヴェ、それ以上は俺がもたない……」
なんかイラッときた。
「だから起きろって!!みんなに説明することあるだろ!?」
揺する強さを上げたり、耳の近くで叫んでも効果はなかった。
「……レイヴェ」
こっちは苦労しているのに、当の本人は目を覚まさない。
じゃあどうする?そうだ、手荒な方法に変えよう。
どこかに行くようなノリで決めてしまうが、気にしない。
「あんまり酷いのもアレだし、拳でいいな」
全力でない辺り、優しさが入ってる。
めんどくさいのでさっさと終わらせよう。
「ハッ!!」
チョップを入れるように拳を振り下ろす。
「レイ――ぐわぁぁぁぁ!!」
おっ、良い感じに決まった。
「腹が痛む……ぶつけでもしたか……?」
ゼストには悪いが、さっさと話をしなくては。
「おいゼスト、殴ったのは謝るが……大事な話をしていない」
「この痛みはお前のせいか……それで?大事な話とは何だ?」
自身を指差して告げる。
「俺が、セレフィールを救出する方法を決めていないだろ?」
「……途中で別の話になったせいで、話が出来ていなかったな」
「ああ……ところでゼスト、周辺の地図はなかったか?」
話をするのに必要なので記憶を頼りに捜索をするが……見当たらん。
「地図はここだ」
「そこか、見つかったことだし俺に渡してくれ」
ゼストから受け取ろうとしたら渡してくれない……イジメか!?
「待て。渡す前に一つ聞かせてもらう……お前は同郷の者達を守ると言っていたが見捨てるつもりか?」
イジメじゃなかったが、それか……まあ、質問の答えはとっくに決まっているけど。
「ああ、守るさ。惚れた女とクラスメイト、どちらかじゃなく両方をな」
俺の答えにゼストは――
「フッ……両方か、お前らしい答えで安心した」
昔と変わらない笑みを見せていた。
「これは二度目だが……お前に頼む」
笑みを浮かべていた顔を真剣なものに変えて再開したゼストに注目する。
「国を治める王であり、お前の戦友であり、一人の父親である俺からお前にはたった一つ」
「娘を頼む……こちらは心配せず行ってこい」
国を守る為、行った自分の行動。戦友に頼む事になってしまった自分への情けなさ。娘を守れなかった父親の苦悩。
それら全てをひっくるめて、お前に託す――ゼストの言葉にそのような想いを感じた俺は。
「ああ、任された。仲間達はよろしく頼む」
何も知らない子供達は俺の代わりにお前が守ってやってくれ――そんな想いを言葉に乗せて。
届いているのかいないのか……そんな心配は――
「子守は苦手なんだが……戦友からの頼みだ、無下に出来ないな」
「全て解決するのは大変だが……戦友の頼みだからしょうがない」
『……ハハッ』
する必要はなかったみたいだ。
後やることは……救出の方法だな。
「救出する方法を考えたら部屋に戻って寝る。場所は前と一緒だろ?」
「一緒だが……寝るのかお前……」
本当に寝る訳じゃないからな!?
「ああ、色々やることもあるし寝てる方が都合がいい」
「お前は本当に……それなら早く方法を考えるぞ」
それからしばらくの間、作戦が練られた。
「移動に関しては馬車をだな……」
「目立ってどうする、阿呆が」
「じゃあ俺の魔導はどうだ」
「お前の移動用の魔導だと……一発でお前と判断されるからダメだ」
移動方法を考えては問題しかなく、
「なあゼスト、城ごと吹っ飛ばしていいか?」
「それが本気ならお前を他国に婿として売る」
「……冗談だ、そこは考えてある」
「ユウマ……頼むから皆殺しとかはするなよ……?」
救出方法のはずが殲滅方法になっていたが話し合いは進み……
『よし出来た!!これなら完璧!!』
俺とゼストが考えに考えて完成したセレフィール救出作戦、その名も――
『セレフィールをさらって空へ!!』
色々と気になるところがあるだろうが、目を瞑っていて欲しい……二人共、寝ていないせいでテンションがおかしい。
気絶……?寝てるとは言わない。
作戦名はアレだが内容はまとも……だと思う。
「よし、俺は寝るからこの後の技能説明パスで」
「お前なら問題はないが……体調が悪いとでも言っておけよ?」
誰に言っておくかな……よし、燕にしよう。
「勿論言っておく。そういえばレイヴェさんは?寝てんの?」
気絶して起きたらいなかったので、城知っているであろうゼストに聞いてみたら部屋の外を見ており……外?
扉を開けて横を見たら……横に立っていましたよレイヴェさん……ずっと外にいたのか……?
「お、おはようございます……」
ビビりながらも挨拶をすると。
「おはよう~ユウちゃん」
普通に挨拶を返してくれて良かった。
そうだ、聞いていたかもしれないが言っておかなくては。
「レイヴェさん、俺――」
次の言葉はレイヴェさんに指で塞がれてしまったが……
「あの子をお願いね、ユウちゃん」
言う前にお願いされてしまった。
これはもうやり遂げるしか道はないな。
「任せてください!!」
「次に会う時はあの子と二人で、ね?」
笑顔と共に告げられた二人で、という言葉が俺を信じてくれていると理解し、気合が入る。
絶対に救うからな……セレフィール。
「勿論です‼レイヴェさん、ゼスト、俺行くわ」
そう言って走り出そうとしたら。
「待ってユウちゃん、違うわよ~?」
「そうだぞユウマ、少し違うぞ」
二人に止められた……ん?何か間違えたか?
口を揃えた二人はこう言った。
『行ってきます』
「もう家族だし、こっちでしょ~?」
「少し早い気がするんだが……いずれなるんだ、こっちだろう?」
ゼストの言う通り気が早いとか、色々言いたいことはあるけど……嬉しくて涙が出てきてそれどころじゃなかった。
「レイヴェさん、ゼスト……行ってきます‼」
『行ってらっしゃい』
二人の言葉を背に受けて走り出す。
「……道具とか金を全く渡してないんだが」
「きっと大丈夫よ~」
「……気のせいか?」
なんか聞こえたような……まあいいか。
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さっさと燕に連絡をする為、魔導を使って探し出すことに。
『探索』
燕は……っと、いたいた。
客人用の部屋。その一つに反応があったのでノックして呼び出す。
「起きてるか燕?祐眞だ。ちょっと連絡があってだな……」
起きていたようで、返事がすぐに返ってきた。
『祐眞?待ってて、すぐ開けるから』
扉が開き、中から燕が顔を出す。制服はシワがつかないよう畳んであるのでインナーだけで……その上シャツのサイズが大きく、下に何もつけていないように見えるのでドキドキする。
これで男って反則だろ……
「連絡ってどうしたの祐眞?」
そんな俺の気を知るはずもなく、首を傾げながら聞いてくる燕にまたドキドキする……男なのに。
「ちょっと体調を崩してな……お前からみんなに説明しておいてもらおうと思ったんだ……」
凄く心配そうな顔になる燕に少しの罪悪感を覚えるが、なんとか振り払う。
「分かったよ祐眞。みんなには僕が言っておくからゆっくり休んでて?」
「すまないな……」
俺が謝ると燕はいい笑顔で
「気にしないで。友達を助けるのは当然のことだからね」
そう言ってくれた。
更なる罪悪感が俺を襲うが、これも振り払う。
「ありがとな、治ったらどこか行こうぜ。ここの人に色々聞いてみる」
「うん、楽しみにしてるよ」
「楽しみにしとけ!!またな」
「うん、またね……?」
挨拶に疑問を持ったみたいだが気にしている余裕はなく、作戦を遂行する為に準備をする。
「まずは手紙だな……何て書こうか」
別れの手紙に随分と時間をとられたが、なんとか出来た。
申し訳ない気持ちになるが、セレフィールを救う為、心を鬼にする。
『幻影』 『創造』
次に俺の幻影を作ってベッドに寝かせ、幻影が喋れないのを誤魔化す為に創造でマスクを作って装着させる。
「良くて二、三日ってところだが……まあ大丈夫だな」
念のためってことで用意はあるし。
「移動は……あれでいいや」
『破槌』 『探索』 『転移』
床に人が一人埋まる程の穴を開けて中に潜り、探索で外を調べて俺と同じくらいの物を探し、位置を交換する。
「よし、これで外に出たな」
辺りを見回して今の場所を確認すると、巨大な門がそびえ立っていた。
「あの門があるってことは……ここは正門前か」
巨大な門はこの国の正門であり、入口である。普段は留め具を使って開放したままになっているが、緊急時には留め具を外すが、外した時の迫ってくる門は怖い……
どうやって行くとするか。
門番には顔は覚えられていないだろうけど、上の人は覚えてるだろうな……
門を通らずに行く方法ねぇ……あっ。
「昔は無理だけど今なら出来るじゃん!!」
俺が思い付いた方法とは……跳ぶ。
飛ぶ、じゃなくて跳ぶ、だ。文字通り跳躍して門を越える。
勇者としての身体能力と、今の力をもってすればいける!!
「さて、行くか」
準備を終えた俺は足に力を込め、勢い良く跳ぶ。衝撃で地面に亀裂が入るがお構い無しだ。
難なく門の上に乗り、そこから更に跳ぶ。
「大切な人を救いに俺は行く、またな」
音を置き去りにして跳ぶ俺の後ろで、小さくなっていく城にいるみんなに向かって呟く。
願いを叶える為、頼みを達成する為、何より大切な人を救う為、俺は二度目の旅に出た。
「あの時と違い、今度は一人だが……帰ってくる時は一人じゃない」
決意を言葉に、野を駆けていく。
お読みいただきありがとうございました。
ちょっとした解説なんかをこれから後書きに入れようと思っています。
記念すべき第一回は……魔導についてです!!
ここでは登場した魔導の効果について解説します。
『深淵』ゲート
別の空間への扉を開く。時は止まっていないので食料の保存などは出来ない。主な用途は静かにしたい時やお仕置きのとき。
『創造』クリエイト
物体、生物をも創ることが出来る万能な魔導。生物の場合には代償が必要。
用途は多岐に渡る。
『破槌』クエイク
降り下ろした槌が衝撃波を生み出し、相手を吹き飛ばす魔導。
使い方次第で穴を掘れるが、本来の用途ではない。
主な用途は邪魔な物を一掃するとき。
今回はこの三つをご紹介しました。
ご意見ご感想、お待ちしてます~