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初代勇者は休めない  作者: 宵咲 栞
一章 邂逅、再び
6/13

第05話 驚愕と思い

お待たせしました!!(待っていてくれてたら嬉しいなぁ)

また遅くなりすいません……

今回はちょっとした説明回になります。

それではどうぞ~

レイヴェさんにお説教という名の攻撃を受けた俺とゼストは、部屋の片付けをした後、当初の目的である話し合い(物理的ではない)を行うことになった。


ちなみに、レイヴェさんも監視という名目で同室していたりする。


あれ?特にいる理由なくないよな?と思ってレイヴェさんの方を向いたけど、笑顔が怖くて何も言えなかったよ……



お互いが椅子に座り、改めて話し合いが始まった。



さっきと違い、真剣な面持ちのゼストに問われる。


「それで?お前は何が聞きたい?」


当然、俺も真剣な面持ちで答える。


「……俺がいない間に起きた出来事と魔王に関しての事だ」

「ふむ……分かった。お前も分かっているだろう?今の世界が異常・・・だと」


俺が分かっていると確信を持って聞いてくるゼストに頷きを返す。

わざわざ聞く必要あんのかね?まあいいけどさ。


「ああ……魔王の出現の早さと暴走する魔物達の被害か?」

「そんなところだ。レイヴェ、すまないが飲み物をもらっていいか?」


会話を中断したゼストがレイヴェさんを呼びつけ、頼みごとをしている。


「あなたと、ユウちゃんもいるかしら?」

「じゃあ、いただきます」

「は~い、ちょっと待っててね~」


飲み物を取りにレイヴェさんは部屋から退出し、完全にいなくなったのを確認してから話が続けられた。



「さて、話を再開するか」

「……レイヴェさんにも聞かせたくない話なのか?」



あまりにも変。これが俺が感じたゼストの様子だ。


落ち着いているように見えるが内では凄く焦っている。こんな状態のゼストを見るのは二度目だが……正直言って前回より酷い。


一体この世界に何が起きている……?


「ああ、今までとは比べ物にならん程の事態だ……何故ならば、これからする話は各国の王しか知らない」



「何……?」


思わず言葉を失う。


基本的に、どこの国でも緊急の時にはすぐに対応が出来るようにと、国王の他に騎士団や魔術師団などのトップにはそういった事態は聞かされるが……国王だけだと?



「……っていう冗談だろ?」


なんとか発する事が出来た言葉に対して、とどめをさすようにゼストは静かに首を横に振り否定する。

続けられた言葉を聞いて、俺は絶句することになった。




「……魔王は一人・・・じゃない」




「……は?」




その言葉に何も言うことが出来ず、しばらくの間、俺は固まっているだけだった。



~~~~~~~~~~~~~~~



ゼストに調子を問われ、ゆっくりと返す俺。


「大丈夫か、ユウマ?」

「ああ、少しだけ落ち着いたよ」


先の衝撃の発言からしばらくして……話し合いが再開出来るくらいまでは回復した俺だが、心中は驚きのままだ。



「そうか……なら話を続けてもいいか?」

「大丈夫だ、迷惑をかけて悪い」


本当に大丈夫か?と俺に疑いの視線を向けるゼストにジェスチャーで大丈夫だと伝えて、話が再開される。




「次の話は……今から数年前、ある国が他国に攻められ、兵士や国民が捕虜になったがある要求を呑めば全員を解放した上に、互いの国に対して武力行使を永久的にしない――不可侵のようなものを結ぶとまで言った」



ん?

さっきの話は?



いきなり戦争の話をしてきた事に疑問を覚えたので理由を聞こうと尋ねようとしたら――


「なあゼスト、」

「この後する話に関係がある、お前が最も知りたいであろう話のな。とりあえずは聞け、すぐに分かる」


と言われてしまったので、聞くことにした。




「続けるぞ。まずは要求の内容を聞いたが……その内容というのが、ある人物を国に迎え夫婦になること――ようは人質と政略結婚のようなものだな。指定された人物というのが問題になった」



話を聞く限りでは破格の条件だが、何故か嫌な予感がする……


「それは……誰なんだ?」



嫌な予感を振り払うように疑問をぶつける。


だが俺の予感は昔から当たる、嫌な方は特に。



こんなにも待つのが辛いと思ったのは初めてで、ただただ辛さしかない。




俺の疑問を受けたゼストはゆっくりと深呼吸をし、告げてくる。




「問題の人物というのは……その国の王族であり第四王女の、セレフィール・ラゼイス・エレトアだ」




この世界で出会えた最愛の少女の名前で、長いこと聞くことができなかった名前、俺が誰よりも会いたい少女の名前を、この会話の中で聞く。



それはつまり……



その事を理解すると同時に、激しい怒りが湧き上がり、ゼストに詰め寄る。



「……拒否することは出来なかったのかよ!!」

「……出来ると思っているのか?」


「少しくらいはなんとか――」

「駄目だったんだよ!!」



俺の言葉を遮り、ゼストが叫ぶ。




「大切な娘だ、出来る限りのことはしたさ……それでも駄目だった!!お前に分かるか!?どんな扱いを受けるか分からない所に、娘を行かせるしかない俺の気持ちが!!」



歯をくいしばり、怒りの表情で叫ぶゼストを見て、嫌というほど分かってしまった。


形は違えど、大切な者を思う感情が……その気持ちが分かるからこそ言う。



「分かるさ……分かるに決まってんだろ!!お前とは違うが、俺はアイツを……セレフィールを一人の女性として愛している!!」

「ユウマ……やはりそうだったのか、すまなかった……俺は守りきれなかった」



ゼストの気持ちが良く分かる俺に、何かを言う権利はない。



「謝るなよ、それより聞きたいことがある」


だから、謝るゼストを止めて疑問に思ったことを尋ねる。


「……なんだ?」


「……セレフィールは無事か?」


ゼストから返ってきた答えは意外なものだった。



「おそらくは無事だろうな」


「どういうことだ?」


さっきの様子からすると手遅れじゃないのか……?



「数年前と言ったが、実際に戦いが終わったのは半年前だ。捕虜との交換も期限いっぱいまで延ばしたし、到着する日にちも遅らせた。あの国は王位を継承する儀式と一緒に結婚式をするみたいだからな……時間は稼げた」


流石はゼスト、転んでもただでは起きないってか。



「よくやるよホントに……それで?その儀式の日は?」


俺の質問に対して、ゼストは悪巧みをしているような顔で言ってのけた。


「一ヶ月後だ」


このタイミングで喚ばれるか……なんかタイミングが良すぎるような気がするな。


気になったので聞いてみる。


「なあゼスト……最初からそのつもりで俺を喚んだんじゃないだろうな?」

「その通り……と言いたいところだが偶然だ。お前がいることすら知らなかったぞ俺は」


偶然かよ!!それっぽい雰囲気出しやがって……


「まあいい、それより大事なことを聞き忘れていた……どの国にセレフィールは行ったんだ?あの国とかその国しか言わないから分からなかったんだが……」


俺がそう言うと、ゼストは残念なものを見るような目で俺を見ながら答えた。


あれ?なんか前にもこんな光景が……


「相変わらず残念な奴だユウマ……確かにどの国かは言ってないがな」

「やっぱり言ってねぇじゃねぇか!!残念とか失礼だなオイ……」

「そんなことよりだ、お前の質問の答えだが……聖王国だ」

「そんなことで流すな……って聖王国だと?てっきり帝国かと思ったよ」


聖王国というのは……その名の通り、聖王という存在が治めている国で……何だっけ?


「聖王国って何だっけ?忘れた……」

「お前……どこまで覚えてるんだ?」


「聖王が治めている国ってことだけだな」


俺の言葉に溜め息をつきながらも話してくれるのは流石だと思うよ。


「一度しか説明しないからよく聞けよ?クラルセン聖王国というのが正式名称の国だが……聖王はお飾りの存在で側近が国を動かしている、というのが実情だな。しかも、その側近はどうやらこの国に恨みがあるみたいでな……表立っては何もしないだろうが、セレフィールには何かしているかもしれん」


ほう……何か、ねぇ……


「心配するなよゼスト」

穏やかな声で俺は言った。

「ん?何故――」


ゼストが固まっているが構わず続ける。



「セレフィールに傷一つでもつけるようなら……永遠に苦しませるだけだ」



「やり過ぎるな……とは言わない。ユウマ……すまないがセレフィールを頼んだ」



全てを任せてくれたゼストの思いを無駄にしない為にも……改めて宣言する。


「任せとけ、絶対に救う」


真剣な表情が一転、笑顔になったゼストが言った。


いったいなんだ?


「流石は勇者、これなら孫の顔も早く見れそうだ」

「ッ!!ゴホッ、ゴホッ……驚かすな!!」


急に何を言うんだゼストは……にしても孫か……


「孫が出来たらおじいちゃんになるのかゼストは……その前にはまだ呼び方があるよな?……娘さんは幸せにしますよ、お義父・・・さん?」


「……お前になら任せられる、が!!俺の全力を一発受けるのが条件だ」


「よっしゃ来いや!!受けきってやらぁ!!」



今は二人だがいずれは……俺はそう、静かに誓った。




さっきの……ちょっとした劇を終えた俺達は、雑談に興じていた。



いやね、レイヴェさんが飲み物取りに行ったまま帰ってこないんだよ……たぶん、雑談でもしてるんだろうけどさ。



「そういえば、さっきは恐い顔だったぞお前。具体的に言うと……レイヴェが怒った時の笑顔と同じくらいだ」


固まってたのってそんな理由かよ……ちょっと待て。


「聞き捨てならないなゼスト、レイヴェさんのあの笑顔に勝てる訳ないだろ?あれは別格だ……正直、魔王より恐いぞ」



恐怖で体が動かなかったし、マジで……



「俺の嫁は魔王以上か……否定はしないがな!この前もちょっとイタズラしただけで怒られたし」


「お前は子供か!!それで?レイヴェさんに何をしたんだ?」


何をして怒らせたのか……気になるな。


「下着を奪って逃げた」

「お前ちょっと死んだ方がいいぞ」


想像以上にアレなイタズラだったわ……そりゃ怒るよ。


同じことをセレフィールにしたら……ダメだ、最低三日は飯抜きだな。



「で?どんなやつだった?」


思わず聞いてしまった……男ならしょうがないだろ!?


聞いたことを後悔することになるのに、さほど時間はかからなかった。



「言うと思ったか?と言いたいところだが……未来の息子だ、特別に教えてやる」

「よっしゃ、早く」

「急かすな急かすな、いくぞ?」


その瞬間、部屋のドアがゆっくりと開き、レイヴェさんが入って来た……レイヴェさん!?


ゼストは興奮して気付いていないが俺は気付いてしまい、目が合う。


喋るな、目がそう語っており逆らおうとするなら死ぬ未来しか見えず、俺は黙るしかなかった。


ゆっくりと恐怖が近付いてくる、死神のように……そして遂にゼストの後に立った、立ってしまった……


「レイヴェのは――黒のレースだったのさ!!」

「マジ……かよ……凄ぇなホント」


ゼストが爆弾を落としても、違う意味で驚くことしか出来なかった。


背後に立つ人が怖すぎたんだよ……

自分の身長くらいある鎌を首筋に当てたまま過ごしてるようなもんだぞ、動けると思うか?



そして振り降ろされる、死神の鎌が。


「どうしたユウマ、顔が青いぞ?……誰だ?要件なら後で聞く――」


時が止まった気がした。


「あなた~?ちょっといいかしら……?」


「レイヴェ……これは違う、ユウマが悪いんだ!!」


狼狽え、適当な事を言い出すゼスト……あの野郎!!


「ゼストてめぇ!!最初に言ったのお前じゃねぇかよ!!」

「聞いてきたのはユウマだ!!聞かれたからしょうがなく言ったまで!!」

「嘘をつくな!!嬉しそうに語ってたろお前!?」


何かが爆発したような音がして、俺達の口論は中断された。


音のした方を見ると、床に出来たクレーターとレイヴェさんのてのひらに浮かぶ魔方陣……え?



柔らかなのに……何故か恐怖しか起きない声で告げられる。


「二人とも、そこに座りなさい」


そう言って床を指すレイヴェさん。


『そこに椅子があるのに?』


聞き返す俺達に無言で掌を向ける。


『はい』


気付けば二人して土下座していた。



「どうしてあんな話になったのか……ゆっくり聞かせてもらうわよ?」


ゆっくりと、恐怖が近付いてくる。


「ユウマが!!」

「ゼストが!!」


『悪いんだ‼だから俺は助けてください!!』


俺達の決死の命乞いはーー


「ど・っ・ち・も・よ?」


レイヴェさんのかわいらしい声によって消された。


『イヤァァァァァァァ!!誰か助けてぇぇぇぇぇ!!』





俺達の悲鳴が響く中、フォストーラで迎える、俺にとっては二度目、みんなにとっては最初の一日が終わる。



あっ……どうやってセレフィール助けるか話し合ってない……


お読みいただきありがとうございました。

読者が増えるのはとても嬉しいですね!!

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