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初代勇者は休めない  作者: 宵咲 栞
一章 邂逅、再び
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第04話 これこそ地獄

何故こうなった……

少し読みづらいかもしれませんが、楽しんでいただければ幸いです。

それでは~

ゼストに力を貸すことを了承した後、俺達は別の部屋に通された。


召喚された部屋よりもかなり狭いが内装は一緒で、狭いといっても学校の教室の四倍程の広さがあり、部屋の奥の方には結晶が浮いている。



みんなが新しい部屋を物珍しく見る中、二度目の俺は別の事を考えていた。



あれが水晶で占い師がいれば完璧なんだがなぁ……



「お主達、こちらに集まってくれんか?」


先導していたゼストが振り返り、呼び掛けてくる。

皆が集まったのを確認してから、ゼストは喋り始めた。



「すまんの。お主達はもう見たか?部屋の奥にある結晶、アレが部屋を移動した理由じゃ」


遂にアレをやるのか……気を引き締めていかなくてはな。



「それで何をするの?」



気を引き締めていると、浅川がゼストに質問をしていた……ってあいつ!!


なんてことを……命が惜しくないのか!?

ふと自分の手を見れば、緊張の余り汗が止まらなかった。

見ればゼストも同じ状態になっている。



「……お主、名は?」

「私?浅川恵美……えーと、ここは違う世界だし逆の方がいいのかな?」

「大丈夫じゃ、アサカワエミか。エミ、これはの……」

「これは……?」



ゼストの真剣さに、マズイことを聞いちゃった……?と思い始めたのか、浅川の顔が青くなっていく。

周りの皆も状況に呑み込まれ、真剣な表情へと変化していく。




ゼストがゆっくりと口を開き、告げる。



「……自分に最も適した属性と技能の有無を調べる物じゃよ」




言ってしまったか……さてさて、どうなるのやら……

みんなの反応をうかがう為、観察に入ることに。



「……?終わりなの!?」

『えっ……それだけ?あんなに真剣だったのに!?しょぼっ!!』



ゼストの言葉を聞いたみんなは、しばらく無言の状態が続いた後、大したことじゃないじゃん!!と叫んでいた。



まあ、そうなるのは仕方がない……が、お前等アレをみくびるな!!と言いたい、凄く言いたい。


言ったらバレるから無理だけどさ。



しょうがない……せいぜいアレの怖さを味わってもらうとするか、フフフ……


なんか悪役みたいだな俺。



俺はゼストに視線を向けて始めるよう促し、視線に気付いたゼストは小さく頷き話を続ける。


「まあ色々と言いたいことはあるんじゃが……実際に体験して恐ろしさを知るとよい……という訳じゃ、誰かやってくれぬか?」



勢い良く挙げられる手と、子供のように元気な声が響く。


「僕に任せて!どうすればいい?」


そう言ったのは康一郎だった。



意外だな……燕辺りが名乗り出ると思ったんだが。



「お主は……?」

「僕は田霧康一郎、呼び方はなんでもいいかな」

「ふむ、ではコウイチロウと呼ばせてもらおうか。コウイチロウ、お主にやって欲しいことなんじゃが……先程の結晶に触れながらある言葉を言って欲しい」


康一郎が言うならむしろアリだな。


「分かったけど、ある言葉っていうのは?」

「それはだな……」


ゼストは一旦喋るのを中断し、一瞬結晶に目を向けた後、再び喋りだした。




『全てを見通せし神よ!!ワシに眠る力を、始まりを……呼び覚ましていただきたい!!』




ゼストの詠唱が部屋に広がり、無言の空気が広がっていく、が……そんな空気を消すように解説を始めるゼストに俺は暖かい目を向ける。


大丈夫だ、俺は分かってるぞ。



「オホンッ!!と、まあこんな感じで言えば問題ないのじゃ。ワシと言った所は自身の名前にするようにしないといかんぞ?」

「分かった!!じゃあ早速……」



そう言って康一郎も水晶に手を置き、先程と同じ手順を踏んでいく。



「えっと……『全てを見通せし神よ!!僕、田霧康一郎に眠る力を、始まりを……呼び覚ましていただきたい!!』ふう……これでいいのかな?」



全ての行程を終え……康一郎が一息ついた瞬間、水晶から光が放たれ横に広がっていき、映画館のスクリーンのようなものが現れる。



フフフ……来た!



「えっ!何!?」

『なんか出たーー!?』


みんなが驚く中、スクリーンのようなものが一瞬ブレたと思ったが少しずつ戻り、映像が映し出され……そこには少し小さい康一郎が映っていた。


「これって……中学の時の僕だ」

康一郎が小さく呟く。


映像の中の康一郎が何か叫んでおり、それを聞いたみんなの視線が釘付けになる。



『我は貴様らのような下等な存在では近付くことすらゆるされぬ遠方より参上せし裁きを降す雷神なり!!神の怒りを買った事、魂が朽ちるまで後悔するがよい!!フフ……ハーッハッハッ!!』


真っ黒のマントを羽織って頭にツノ?のような物を着けた康一郎が高笑いしながら台詞を言っていた。



なんていうか、立派に中二してたんだな……

見た目とのギャップのおかげか、凄くほっこりした。



「……」

「凄く……かわいくない?」

「かわいいよね……?」

「ああ、かわいいな……!!」


かわいいよな。


『最高に……かわいい!!』



みんなの感想が出て、恥ずかしさに耐えられなくなった康一郎が頭を抱え叫びだした。



「うわぁぁあぁぁーー!!違うんだぁぁぁ!!止めてぇぇぇぇーー!!」


床を転がって悶えながら叫ぶ康一郎……その姿は映像よりも衝撃的だった。



ゼストが助け船を出したかと思いきや……



「分かったじゃろ?これの恐ろしさが……これは先の事をした者の過去を見て、適性や技能を呼び起こすと同時にその者が一番隠したい過去をあの画面に映すのじゃ。イタズラで神が行っているという話もある」



更に傷をえぐってるよ……容赦ないな。




イタズラかもしれない、というゼストの言葉を聞いて震え出す者や頭を抱える者、顔色が悪くなる者など……様々な状態になるみんなに同情する。



一人の犠牲は出たが……これで恐ろしさを分かってくれたし、みんな知られたくないだろうから一人ずつで楽だろうな。




なんて思ったのが間違いだった。




「オホンッ!!それでは全員・・・この場でやってもらうとしようかの、順番は気にせんから誰からでもよいぞ?」



なん……だと……!?


「一人ずつじゃないんですか?」


浅川がゼストに尋ねるが、ゼストは不思議な顔をしながら答えていた。


「ワシはそんな事言っておらんぞ?それに、一人ずつだとお主達に見られたコウイチロウが可哀想じゃろ?これは平等に受けるべきじゃよ」


重い空気が広がっていき、何か言おうにも正しいことを言っている為に反論が出来ず、ただただ恐怖に震えるみんな。



「アレか!?アレが映されるのか!?」

「もしあの出来事だったら……!!」

「嫌だ、嫌だぁぁぁぁ!!」

『そんな……』


さっきまでの穏やかな空気など、元から存在しなかったかのような状態になっていた。



「みんなも僕と同じ気持ちを味わえばいいのさ、フフフ……!!」


『ヒイッ!?』


俺達に向かって呪いのように呟く康一郎が異様に怖かった……



その後、みんなも同じように黒歴史を映され悶絶していた。


「こんな俺を見ないでくれぇぇぇーー!!」

「これは違うのよ!?違うんだからぁぁぁ!!」

「フッ……もう、終わったのよこの時代は……」


ちなみに俺は……フフッ、言えねぇ。


ただ……康一郎のようにそういう設定でやっているんだな、と暖かい目で見られた上に、分かるよ?やっちゃうよね?しょうがないから、大丈夫だよ!という表情をされた時は全員の記憶を消してから結晶を壊してやろうかと本気で思った。


そうして調べた適性や技能を聞けるだけの精神的な余裕がなく、地獄のような時間を終えたみんなは用意された部屋に案内され、力尽きるように眠りに落ちていた。



~~~~~~~~~~~~~~



みんなが寝てからしばらくして。



俺はゼストと話をする為、居場所が分からず探すはめになったが……運良くゼストを見つけることが出来た。


さっき連絡しておけば良かったんじゃないかって?

みんながいたので無理だったんだよ……


のんびり歩くゼストの背に声をかける。


「おいゼスト」

「ん?おおユウマか、用でもあるのか?」



この野郎さっきの会話忘れてやがるな……!!



「さっき話があるって言ったよな?」


俺がそう言うと、ゼストは頭を掻きながら


「忘れていた……そういえばそうだったな、悪い」


なんて言ってのけた。



「お前悪いと思ってないだろ!!」


一発殴るぞ!?


「確かに思っていないが……さっきのは冗談だ、覚えている。ここじゃなんだから執務室で話すぞ」

「分かったよ……やっぱり思ってねぇじゃねぇか!!」



ゼストの後に続き執務室に向かう。



視界の端に何か見えた気がしたが……気のせいだと思い後を追う。


それから五分程で目的地に到着した。


ドアを開け中に入るゼストに続き、俺も中に入る。

久しぶりに来た執務室は随分と様変わりしていた。



以前あった机や椅子なんかは無くなっており、俺がいない間も時間が経っていたことを改めて感じ、寂しい気持ちになる。



そんな俺を見たゼストは。


「……まあ適当に座ってくれ」


「……ああ」



何も言わないゼストなりの気遣いに、静かに感謝した。

お互いに座ったところで会話が始まる。



「まずはこっちからだ。改めて言わせてもらおう、久しぶりだなユウマ」

「こっちこそ久しぶりだな、ゼスト」


二人して手を差し出し、握手を交わす。


「一つ先に言っておきたいことがあるんだが……いいか?」

「奇遇だな、俺も言いたいことがあんだよ」


二人して自然に笑ってしまう。


「ハハッ、二人共だとはな……どうする?」

「フフッ……しょうがねぇ、ここはじゃんけんで決めようぜ?」


何故ジャンケンかというと、昔教えてからずっとこれで決めていた為。


「いいだろう、では行くぞ?」

「来い!!」


拳を固め、グーの状態にする。

二人で掛け声をかけ……


『じゃん、けん……!!オラァ!!』



お互いの顔面目掛けて拳を振り抜いた。



衝撃で家具が吹き飛び書類が舞うが、気にする余裕などない。

痛みに懐かしさを感じるが今は関係ない。


これから始まるのは。


言葉を交わし、思いや怒りを拳に乗せて届ける!!



そう――雑談ケンカだッ!!




「ガハッ……ゼストてめぇ……!!時間差の事をなんで言わなかった!!」

「グッ……ユウマ、貴様よくも娘に手を出してくれたなァ……」



『てめぇの話より俺の話が先だ!!』



「言う前にさっさと帰っただろ貴様!」

「手なんか出してねぇよ!」


いやマジで。


「ならば何故、娘は唇に手を当てて時折にやついている!?」

「お前娘のそんなとこ見てんじゃねぇよ!というかそんな大事なこと帰る前に時間作って言えや!」



友の変態っぷりに思わず引いてしまう。



「だからそういう時間を作る前にお前帰っただろうが!」

「悪かったよ!じゃあその話は後でっ!?」


わざと隙を作って攻撃を誘導しようとするが、それを読んでいたゼストの右の拳が腹に突き刺さる。

衝撃でよろめく俺に迫る右回し蹴りをギリギリで避け、お返しとして黄金の右でもって顎を打ち抜いた。


「グウッ……お前が帰ってからずっとあの調子で、何かあったのかと尋ねても答えてくれず……原因はお前以外考えられん!!さあ吐け、吐けぇぇぇ!!」


よろけたところに膝蹴りを叩き込もうとするもかわされ、逆にハンマーのように組んだ拳を打ち下ろされて、体勢が崩れる。


そこに追い打ちをかけるように繰り出された蹴りを、体を傾けることで避ける。


「ガッ……だから手なんて出してねぇって言ってんだろ!?キスしただけだ!!それ以上はなんもしてねぇよ!」



"キス"という単語を聞いたゼストの額に青筋が浮かぶ。

ヤベッ……



「何だと……?ユウマァ!!生きて無事に帰れると思うなよ!?」

「上等だゼストォ!!その言葉、そっくりそのまま返してやらぁ!!」


お互いが必殺の一撃を放とうとした瞬間、執務室のドアがゆっくりと開き一人の人物が姿を現した。


「吹き飛べぇぇぇ!!地震掌!!」

「お前がなぁぁぁ!!空裂脚!!」


「あなた~?お客様がいらっしゃってるってリアから連絡があったのだけれど、どなたが……あら?ユウちゃん?」



腰まで伸ばされたオレンジ色の髪に緑色の目、ゼストと同じように少し尖った耳と見る者全てに暖かさを与えるような笑顔を浮かべるのはゼストの奥さんにして第一王妃である――


『レイヴェ(さん)!?』


「は~い、レイヴェ・クーシ・エレトアさんですよ~」


レイヴェ・クーシ・エレトアその人だった。

なんだろう……何故か負けた気分になった。



そんな穏やかで素敵なレイヴェさんの乱入に気をとられた俺達は、今の状況をすっかり忘れていた――お互いに技を放つ寸前だったことを。



『あっ……』



ゼストの掌が俺の胸に、俺の脚がゼストの鳩尾に直撃し、その衝撃でお互いに吹き飛んでいく。


痛みにうめきながら目の前に映った景色は、笑顔は笑顔でも恐ろしさを感じる笑顔を浮かべる――レイヴェさんの顔だった。



その笑顔にあることを思い出し、ゼストを見ると――震えていた。



レイヴェさんは物を壊したり部屋を散らかしたりすると烈火の如く怒る。

まあ、俺も震えてるんだけどね……



あんまり……怒られないといいなぁ……


叶わぬ願いをしながら、ゆっくり目を閉じ寝ようとするが……


レイヴェさんに釘を刺された。



「ユウちゃん?あなた?これからお説教だからね~?」


まあ、無理ですよね。


分かって、いたよ……っ!!



そう上手く物事は進まない、これ凄く重要。

お読みいただきありがとうございました!!

ここのあとがきは必要なのか……

いつものように、ご意見ご感想お待ちしております!

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