終わりは突然に
「というわけでバイトの皆さんには辞めてもらう事となりました…」
「店長、説明義務を果たしてください」
何とか空腹に耐え迎えた放課後。急いで弁当を胃に流し込んでやってきたバイト先到着5分後である。
「え~…我らが喫茶店『REPOS』は最近不況の煽りを受けていてね。何とか常連さんや従業員のためにも踏ん張りたかったんだが、なかなか…。私もいい年だしどうしようかと思っていたところに、ここを買い取りたいって話が来てね。悩んだ末に売る事にしたんだ…本当に申し訳ない…」
「いえ…店長さんの人生ですし、しょうがないと思います。ただ事前に言っといて貰えればよかったなとは思いましたけど…いつ決まったんですか」
「二時間前に決まった話でね…」
「そうなんですね。なら仕方な」
「話が来たのも二時間前なんだけどね!」
「じゃぁ即決ですね。即飛びつきましたね」
「何を言うんだい!”30秒”は悩んだよ!」
「・・・」
「ちゃんと給料に沢山色も付けるからさ」
「いや、それはありがたいんですが、こちらも生活があるんでいきなりだと大分困るのですが…」
「そうだよね、一人暮らしの上に”借金”もあるんだよね?本当に申し訳ない…こちらでも知人に当たってみるよ。まぁ君は器用で何でもすぐこなせるし、頭もいいから引く手数多だと思うけどね!」
「そんなことはないと思いますけど。そういえば他の方々は?」
「まだ来てない柚希ちゃん以外は給料もらった瞬間『いやっほー!!』って言って意気揚々と辞めていったよ?」
「そうですか」
まぁここのバイトにいた人はほとんどがお小遣い稼ぎに来ていた人ばかりだったからなぁ。
ーカラーンー
扉のベルの音が聞こえた方を見ると、同僚の霧谷柚希さんが入ってくるところだった。
「こんにちは~。あ、翔君こんにちは~」
「霧谷さんお疲れ様」
「もう~同い年のバイトでもう一年近い付き合いなんだからそろそろ名前で呼んでよ」
「いや、恥ずかしいんですよね」
「もうこれからも一緒に働いていくんだからさ!」
「あ~…うん、そうですね…」
どうしよう…。かける言葉がない。
「あ、柚希ちゃん。今日でこの店閉店だから!」
「・・・」←笑顔で固まる霧谷さん
「・・・」←笑顔で固まる店長
「……あ、柚希ちゃん。今日でこの店」
「あ、いえ聞こえてますよ?」
「あ、そうなのかい?」
「・・・」
「あ、柚希ちゃん。今日で」
「いやもういいですよ?」
たまにこの店長大物なんじゃないと錯覚するんだよな。
「給料に沢山色付けるからさ!」
「あの店長?いきなり言われても生活があるので困るのですが…」
「柚希ちゃんも翔くんと同じ一人暮らしだもんね」
「わかってるならもっと早めに」
「二時間前に決まったらしいですよ」
「ええぇぇ!!?」
「二人とも本当にごめんね…柚希ちゃんのバイト先も知り合いに経由で探してみるからね。はい、これ給料ね、それじゃこれにて解散!」
一方的に話を打ち切る店長に唖然としながらも仕方なく二人で外に出る。先ほどまで何も感じていなかった朱色が今では嫌に眩しく感じるのだった。