第23話 叔母
危ない危ない。
一週間経ってしまう所でした(・・;)
「奈美さん」
呼ばれて振り向いた先にいたのは濃緑のドレスを身に纏った女性の温かい眼差し。
「叔母さま!」
「白泉夫人?」
奈美が声を張り上げるのと奏司が不思議そうに夫人の名前を呼んだのはほぼ同時だった。
駆け寄る奈美と立ち尽くす奏司は対象的であったけど。
「お久しぶりです!」
「ホントよ〜あの後一度も顔見せに来ないんだもの。綺麗になっちゃって♪」
「ちょっと思うこともあって…」
「まぁいいわ♪でもいつから?またこういう場で貴方に会えるなんて」
「今日たまたまですよ。叔母さまもご存知でしょ?紫來奏司。今日は彼と次男の響に連れて来られたのよ」
急な自分の紹介に驚くものの奏司は優雅に一歩歩み出る。
「紹介頂きました奏司です」
「ふふ、知ってるわ。有名ですもの」
「有名になった覚えはないんですけどね。それより奈美さんが夫人の血縁ということに驚いていますよ」
「あら?ご承知の上ではなかったのね。奈美さんは教えていないのね。彼女は颯家の長女よ」
数秒、時が止まったかのように奏司は動かなくなる。
「――え?」
彼の中で時が動き出した時に出たのは彼らしくもないとても間抜けな声。
「――別に隠してたわけじゃ…響は知ってたし…」
多分響は話を合わせてくれるであろうと想定した上でそう口にするが、マジマジと奈美を見る奏司の視線を受け止めるには良心が痛むのか奈美は顔を背ける。
「――それについては後でゆっくり奈美さんに伺う事にしますよ」
「あら?あまり虐めないで下さいね」
口ではそういいながらも、夫人の顔は悪戯が成功した子供のように楽しげで――奈美は人知れず溜息をつくのだった。