第2話 浮いた二人
「皆彼氏いないなんて信じらんないよなぁ」
「本当に彼女いなぃんですかぁ?」
「レベルたけぇ〜♪」
オチャラケなのかなんなのかわからないが、場は盛り上がっていた。
予想していたよりもレベルの高い男側に女側も張り切っているし、郁恵が綺麗めな女を集めているだけあって男受けもいいようだ。
その場に全く馴染んでないのが、私―――と、奏司と名乗った男だけだった。
「奏司さんっておいくつなんですか?」
「………24」
ボソッとという表現がよく似合う。
本当にそんな感じだった
「おら奏司っ…!ちょっとは愛想よくしろょ…!」
「……人数足りないってから来ただけだから」
(うっわぁ〜。それ今言うか!?)
至極真っ当な諌めの言葉もどこへやら。
マイペースというかなんというか…。
勿論そんな事言われて女性陣が絡める訳はなく。
結果浮く人間が二人いると言うことだ。
(人数合わせ……って事は…)
意を決して静かに酒を飲んでいる奏司さんに向き直る。
「ねぇ奏司さん。二人で抜けません?」
「……ぁ?」
予想通り、かなり嫌そうに目を細める。
しかしここで引き下がるわけにはいかず。
「人数合わせに来たって言ってたでしょ?って事は二人で抜ければいいんですよね?」
『抜ける』というのを強調していうと、なんの事だか相手も悟ったらしい。
「いいぜ。ヒロ俺抜けるわ」
「え?おぃっ!奏!」
「郁恵〜♪私も一緒に抜けるねぇ〜」
「ぇ?奈美」
幹事を任されてる二人は明らかに動揺する。
「じゃお先にぃ〜」
片手をヒラヒラさせながら二人して個室を出る。
外の空気はひんやりと冷たく澄んでいる。
「ゴメンね♪助かっちゃった☆抜けたかったからさ」
「お互い様だな。俺の方も助かったよ」
さっきまではよっぽど機嫌が悪かったらしい。
話しにくいかと思ったのが嘘のようだ。
「んじゃ……」
「あ〜この後予定とかあんの?」
「ぇ?」
「飲み直しにいかね?」
思ってもいなかった言葉に目が点になるとはこういう事をいうのだろう。
「ぷっ(笑)んなに意外か?」
よっぽど顔に出ていたんだろう。
もの珍しそうに覗き込まれる。
「まぁ確かにさっきまでかなり不機嫌だったしなぁ」
「…」
「あ〜もしかして怖がらせた?こっちが地だよ」
さっきと同じ人だろうか。
コロコロと変わる表情に親しげな笑顔。
それに――よく喋る。
「ぉ〜い、颯さ〜ん?」
「あれ?苗字…言ったっけ?」
「いゃ?でも誰かに呼ばれてたでしょ?」
確かに仲のいい子ばかりではなかったから苗字でも呼ばれてたけど…。
「…気のないふりしてたの?」
「いゃ、気なんかなかったよ。ま、それでも気になるでしょ。自分と同じで浮いてる子いたら――さ」
「まぁ…確かに……」
どう考えたって目立ってただろうし。
「じゃ決まりな♪」
そういうと、さっき見せていれば確実に何人かは落ちたであろう魅力的な笑みを浮かべる。
そんな奏司を素直にカッコイイと思ってる自分に、奈美は気付かれないように苦笑を浮かべた。