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きみをさがして  作者: 佐倉 美南
6.想いの果ての
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10

「オレはそんなに信用できないやつだったか?

 オレもアサトのこと弟のように思っているよ。それはどんな時でも変わらないって思ってるけど違うか?

 例え彼女が出来たからってお前と疎遠になるそれぐらいの男に見えるんだったら俺も小さく見られたもんだ」

「カズキ、……ごめんなさい」

 アサトはシュンとして俯いた。

 それと同時に自分の頬を伝う涙に初めて気がついたみたいだった。

 慌てて手の甲で拭ってバツが悪そうに俺を見上げた。

「アサトは醜くなんてないよ。人より少し繊細なんだ。

 繊細なのはそのままでいいから、もう少しだけでいい。

 俺のことは信頼してくれ。自分のことも大事にしてくれ。

 美佳との事だって、これで終わればそれまでなんだと思うよ。ま、俺は終わらせるつもりはないけど。

 そのかわりお願いだからもう2度と自分で自分のクビを締めるような行動をするなよ」

「自分で自分の首を?」

「そうだよ。相手を陥れる以上にアサト自身が一番傷ついているだろうが」

「……」

「だからって俺も苦しまなかったわけじゃない。無条件には許せない。

 今度からは絶対にこんな真似しないって約束できるなら、俺はおまえとこれからもやっていける。どうだ?」

 もしかしたら甘すぎるかもしれない。

 でも、アサトが誰よりも俺を頼りにしていることは知っている。

 俺しか心を開けないことも知っている。

 だからこそ、ここでケンカ別れしても、それは何もならないのではないかと思った。

「わかった、もうこんな真似しない。カズキごめんなさい」

「もういいよ。……責めたんじゃなくてさ、兄弟でもいろんな決め事ってあるだろう? 

 そんな感じのもんさ」

 『兄弟』のところでアサトが思い切り目を見開いた。

 泣くのを我慢する表情をしている。

 アサトは家族との愛情が薄かったので、きっとそういう家族がらみの出来事にはめっぽう弱いのだろう。

 しかし、泣かれては困る。男女問わず泣きの入った人にはどう接していいかわからない。

「あー、今日はカレーにするかな。アサト、遊びに来たついでに食ってけ。余裕があれば手伝え」

 そう言って泣きそうなアサトに気がつかない振りをして、俺は台所に立った。


 泣きたいなら泣けばいい。立ち直ればまた、そこから何気ない日常が始まっていくんだから。


 でも慰めんぞ。

 男は一人でコッソリ泣くもんだからな。


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