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自宅マンションに帰ると、アサトがいた。
一人用の黒い革張りのソファーに膝を抱えて座っている。
確か、アサト自身のことを話してくれたときもこういう風に膝を抱えて小さく座っていた。
「おかえり」
アサトは俺を見あげながら小さく呟いた。
心なしか顔色が悪い。いや、随分前から顔色が悪かったり、表情が暗かったりしていなかっただろうか?
「ただいま。今日、佐藤香緒里さんに会ってきたよ」
アサトが弾かれたように目を見開いた。
そう、こんな怯えたような表情も。
顔色が悪かったり、こんな感じになったのは今年の夏あたりからじゃなかったか?
「そう……。で、なんて?」
美佳に似ている彼女の存在を驚かない。それはアサトがすでに彼女を知っていたことを意味する。
「佐藤さん、美佳に似ていたな。ビックリしたよ。オレに関する一連のこと、もちろん美佳のことも含めていろいろ話してきた」
俺は一旦言葉を切った。続く言葉がどうしてだか言いづらい。
「で、彼女はアサトが美佳が突然消えた原因を知っているかも、と言っていた」




