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きみをさがして  作者: 佐倉 美南
2.カズキとアサト
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 1年半前の満月の夜、俺と美佳は出会った。

 その当時、彼女は大好きだった人を突然失った心の傷を癒せずにいた。そんな彼女の数少ない支えが俺の歌で、休暇を利用して東京まで俺をさがしに来た。

 彼女も多分、本当に俺に会えるなんて思っていなかっただろう。でも、いろんな偶然が重なって会えた。

 俺が美佳のことを好きになるにはそんなに時間はかからなかった。


 音楽というのは不思議で曲とともにその時関わっていたことを深く思い出す時がある。

「この曲、すごくいいよね。暗くて重くて、それなのに安らぐんだ。こんな感じの曲はカズキしか歌えないよね」

 アサトの言ったことの半分も聞いていなかった。

 


 美佳が消えて。

 そう、今思えばいなくなる日はどこか様子がおかしかった気がする。

 どうかしたのか、と、なぜ俺は声をかけなかったのだろう?

 ずっと一緒にいられると思っていた。


 彼女が消えて、管理人の淑子さんを問いただしたが、何も知らないと答えてはもらえず、まる2日捜し歩いて後は曲作りに集中していた。

 今まで練ってきた構想や雰囲気を白紙にして、自分の気持ちや想いだけを見つめた。

 売れる曲を作ってやろうだとか、世間ウケすることなんて全く考えてなかった。

 しかし、皮肉なことにこの曲は売れに売れて俺の代表曲といってもいいぐらいの曲になってしまった。

 肝心の俺はといえば、この曲が流れるたび、歌うたびに未だに苦しくてしょうがないのに。


 

 『LOST』が無事リリースできてからは、毎日泥酔して意識が朦朧とするぐらい飲み歩いていた。

 美佳と約束したのにな。大酒飲まないって。あの頃は全然守れてなかった。いや、守る必要もないって思ってた。

 飲みには大体、アサトが一緒に付き合ってくれて、でも、2週間目ぐらいで『身体続かなくなるよ』って言われて。

 その時期あたりだったかな。気分転換も兼ねて今のマンションに引っ越したのは。

 今はもう荒れてはないし、深酒もしなくなった。アサトと飲む時も1杯あれば充分で。

 約束を守りとおしているというわけではない。

 でも、無茶をしそうなときにいつも浮かぶのは美佳の悲しいほほえみ。


 最後の方は曇り空から日が射すような笑顔を時たま見せてくれていたけど。


 今は、きちんと笑えているのだろうか?


 いろんな事が蘇ってきた。

 少し、心が痛い。

 美佳はなぜ突然消えてしまったのだろう?

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