表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きみをさがして  作者: 佐倉 美南
5.籠の中の鳥
34/47

 多分、気が遠くなったのは一瞬だったと思う。


 気がついて目を開けたら、空一面の星空が見えた。

 周りに外灯が少ないのと、月が出てないせいだろう。

 冴えた輝きを見ていたら、自分の心も澄んでくるようですっと冷静になった。

 ここに星空がなかったら。美佳の名前が出てこなかったら。もしかしたら。

 でも、偶然は俺を本来の場所へ呼び戻した。


「こんな都会の真ん中でも星が見えるんだな」


 季節はちがうけど、俺と美佳が出会ったのもこんな必然な偶然が重なったんだ。

 だったら、大都会のこの街で、こんな星のきらめく夜に心を偽れない。


「……俺が出会った頃の美佳はこの星空のように繊細な感じだった。」

 俺が冷静になったのを見て、今度は攻めてばかりだったマリノが固まってしまった。

 それを確認して、俺は身体を起こした。

「小湊さんも見てみろよ。星が降ってきそうだ。東京では珍しい光景だね」

 ふたりで空を見上げる。

「君と一緒にいて、この星空を見上げていても考えるのは美佳のことだ。俺は今でも突然消えたアイツをさがしている。美佳が好きなんだ。俺のことは諦めてほしい。本当にゴメン」

「……ずっと逢えないのに? どうして? 美佳さん、突然姿を消すなんて、カズキさんのこと好きだったわけではないんでしょ?」

「さぁ、それはどうなんだろうね? 美佳に逢えたら聞いてみないと」

 マリノの非難がましい言い方に、苦笑しながら美佳に直接聞いてみる場面を想像してみた。

 


 逢えたら……。


 いつか逢えたら、聞いてみよう。



 そんな些細なことを考えるだけで、美佳に逢えることを考えるだけで少し幸せだった。


「そんなの報われない……」

 マリノが放心したように言い放った。

「君は報われたいから人を好きになるの? 好きになってくれるから好きになるの?人の心はそんなに単純じゃないよ」

「……」

「今の状況が幸せかと言われればYESとは言いがたい。でも、それ以上に好きなんだろうな。もう一度アイツに逢えたら、もうこれ以上欲しいものはないかもしれない」


 この星空を美佳もどこかで見ているだろうか?

 俺がみている同じ星空を……。


 そんな風に思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ