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きみをさがして  作者: 佐倉 美南
4.真夜中の虹
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 いつものようにピアノの演奏を終えてステージを降りたら、知らない金持ちそうな女から声をかけられた。

 その人はオーナーからオレの経緯を聞いていたんだろうな。

「今日からうちに来なさい。高校も通わせてあげるわ。そのかわり、ピアノと音楽全般の本格的なレッスンを受けること。文句はないわよね?」

 最後は問いかけというより、確認という感じの口調だった。

「あなた、音楽の才能あるわ。それを伸ばすための援助は惜しまない。あなたの家の人にも話しつけましょう」

 いきなり現れた高飛車で単刀直入な人に面食らいオーナーをちらりと見たら、君の将来のためにはここにいるよりかは、秋乃さんの所にお世話になったほうがいいと言われて、その夜中には身一つでオレは彼女の家にいた。

 秋乃さんの家は、家っていうより邸宅と呼んだほうがいいぐらい広くて高級なものばかりで、どういう仕事したらこんな家建てられるんだよ、って思ったな。 

 彼女は、常にオレとの距離を保つ人で、仲はよかったけど、必要以上に親しくなることはなかった。今思えば、オレのことを思ってそういう風に接してくれていたのかもしれない。

 1年遅れで高校に通い始めて、学校のこと以外は全てピアノとボーカルと音楽の基礎のレッスンばかりだったけど、レッスンも学校生活も楽しかったよ。

 17歳の時に今の事務所に秋乃さんと出入りするようになった。

 社長は「私には娘ばかりで息子がいないから」とあの頃からいろいろ世話になってかわいがってもらった。

 ご飯をおごってもらったり、ミュージシャンのコンサートやリハーサル風景をタダで見せてもらったの覚えてる。


 秋乃さんとの出会いは突然だったけど、別れも突然だったよ。

 高校卒業と同時に、音楽のレッスンを今までどおり受けていくことを条件に、住むマンションを用意するから、これからは独りで生きていけ、と秋乃さんの邸宅から追い出された。


「あなたには、これからの将来の行く道を教えてあげたつもり」

 

 別れ際、秋乃さんはそう言ったよ。

 多分、どんなジャンルでもいいから音楽の道に進んでほしかったんだと思うよ。

 その当時、それを一番願っていたのは秋乃さんなんだ。

 それを押し付けることはしなかったけどね。

 そして、オレは秋乃さんのそういう思いに気がつきもしなかった。

 ただ「また、捨てられた」という思いばかりが強かったから。


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