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魔女の言うことは信じるな!  作者: くまのすけ/しかまさ
魔女の言うことは信じるな!
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魔女の言うことは信じるな! 6

 一方、ガシュー商店の近くの大通りでは、二人の戦士が激しく剣を交えていた。

 斬り、突き、払い、薙いで、押しこむ。

 二人の戦士の力量はほぼ互角だった。

 パワー、スピード、テクニック。

 どちらも十分に鍛錬され、高度に錬成されていた。

 キィーーーン!!!

 ガシッ!

 ガシャッ!

 カキィーーーン!!!

 二人の体は何度もぶつかり合い、飛び離れ、突進していく。

 どちらも体のあちこちに無数の切り傷を作り、血をにじませているが、どのキズも深いものではなかった。

 ガシュー商店を包む火炎に照らされた二人の戦士は、まるで奇妙なダンスをお互いの周りで踊りあっているかのよう。

 とても幻想的な光景だった。

 ただ、そんな二人の間で、無数の火花が現れては消え、現れては消えしているのが、二人が戦っていることの証であった。

 キィーーーン!!!!

 剣を打ち合い、火花が飛び散る。全身の筋肉を使い、押し合う二人。でも、次の瞬間には、二人の体は離れた。

 その飛び離れる瞬間に、一本の剣は、切り落とすかのように、上下の半円を描き、もう一本は、水平に扇状に刃の軌跡をきらめかす。

「ふっ! やるな! ジャスティス!」

「ふふふ、レオン・フランシス、お前も!」

「しかし、これだけの腕前の相手なら、私が、忘れるはずはないのだが・・・・・・?」

「・・・・・まだ、思い出さないというのか!」

「すまぬ。生憎と・・・・・・」

「お、おのれぇ~!!!」

 マーティン・ジャスティスの目に怒りの色が。とはいえ、それでも、その怒りに全身を支配されるなんてこともなく、頭の中は冷徹なまま。

 二人の戦士は、ジリジリと時計回りにまわり始め、次の瞬間、突撃に移った。

 カキィーーーン!!!

 剣が打ち合う。火花が散る。

 二人とも半歩跳び下がり、構えた。

 先に動いたのはレオンだった。

 渾身の力をこめて、剣を振るいジャスティスに叩きつける。

 だが、ジャスティスは冷静な頭の片隅で、距離を測っていた。

 これなら、体を開くだけで、レオンの剣先は、鼻先を掠めるのみで、ジャスティスの体には届かない。

 そして、渾身の力をこめて振るっただけに、剣の勢いに引きずられ、必ず、レオンは一瞬だけ、バランスを崩す!

 そこを水平に払えば、致命傷まではともかく、相手の動きを弱めるのに十分な深手ぐらいは負わせることができるだろう!

 そのとき、ジャスティスは自分が勝ったということを確信していた。

 思わず、笑みがこぼれ、魔剣を握る手に力がこもった。


 ジャスティスは勝利を確信していた。

 あとは、タイミングを合わせるだけ!

 3年前、まだ、国軍所属の騎士であったジャスティスが、王都の御前試合でのトーナメント一回戦、始めの合図の音が完全に消え去る前に、突きの一撃で倒された屈辱!

 あれは絶対、レオンのフライングだ!

 必死の抗議も審判団に受け入れてもらえず、かえって、未練がましく女々しい行為だとして、国軍を追い出される羽目になった苦い記憶。

 どれもこれも、レオンのせいだ!

 復讐してやると、必死に鍛錬しつづけた3年間だった。

 そして、とうとう、そのレオンを倒す瞬間が、訪れようとしていたのだ。

 言い知れぬ歓喜が、全身を襲っていた。

 俺は勝った! 勝ったぞー!!!

 そう叫んで走り回りたかった。

 だが、ジャスティスにとって、不幸な事実がひとつあった。

 ジャスティスは気がついていなかったし、レオン自身も、特に気にも留めていなかったことだが。

 それはジャスティスの背後に今まさに燃え落ちようとしているガシューの店があったこと。

 ・・・・・・


「フッ! 強敵だった。だが、しかし、おかしいな、コレだけの相手なら、私の記憶に残っているはずなのだが・・・・・・」

 レオンはそうつぶやくと、足元に転がっていた剣を拾い上げた。

 マーティン・ジャスティス・・・・・・とことん不幸な男だった。


 レオンは、マーティン・ジャスティスが所持していた魔剣ストロング・ブレードを手に入れた。

 もちろん、その剣は、レオンが神殿に戻ってきたときに、フィオーリアに取り上げられ、オイラの魔力の足しとなる運命にあるのだが。

 というわけで、レオンは、テーブルナイフ2号を手に入れることになる。

「マーティン・ジャスティスの形見が・・・・・・」

 無念そうな表情を浮かべて、好敵手の不幸を嘆き悲しむ男を残して。



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