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魔女の言うことは信じるな!  作者: くまのすけ/しかまさ
魔女の言うことは信じるな!
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魔女の言うことは信じるな! 2

 バンッ!

 ちょうどそのとき、オイラたちの足元の方から、扉が勢いよく開けられる音が聞こえてきた。

 たちまち、

「な、なんだ、これは!」

 大人の男の驚愕した声が上ってきた。レオンだろう。

 レオンたち、ようやくバリケードを取り外して、外にでてきたようだ。

 さっきからすごい異様な音が外から響いていたから、様子を見にでもでてきたのだろうか?

 つづいて、

「まあ! なんなの、これは!」

 エリオットの声かな?

「おお、神よ!」

 当然、ジョーンか?

「とにかく、町の人を救助しなくちゃ、レオン、ジョーン、手伝って!」

「お、オー!」

「はいっ!」

 神殿の周りの火の海へ駆け出していく人影が見えた。

 その人影へ向かって。

「ちょっと、レオン! あんた何のために、腰の剣もってるの?」

 人影のひとつが、オイラたちの方を見上げたようだ。

 尖塔に上に、オイラたちの姿を認めると、なにか問いたげな表情を浮かべた。

 やがて、ひとつうなづくと、ソロリと腰の剣を抜く。構えると、

「エリオット、ジョーン、待った! そこを動くな!」

 そして、鮮やかに剣を一振り。

 次の瞬間、振られた剣の軌跡から、大量の水流が家々を燃やす炎の方へ跳んでいく!

 まるで滝のように。

 神殿の前の家々の火事は一瞬のうちにおさまった。たった剣の一振りによって。

 レオンは、同じように神殿の四方で剣を振るい、町の家々の火事を消していく。

 結局、神殿の周りの火の海は、たった四回の素振りによっておさめられたのである。

 幸いなことに、火の海になっていたとはいえ、炎は家々の外側を焦がしただけ。町の人々は、襲撃者たちの異様な雰囲気を恐れて、扉や窓を堅く閉めていた。消火もレオンによって、すばやくなされた。

 そのため、家の中まで火がまわることもなく、神殿の周囲の人々で命を落とした者はだれもいなかった。ただ、数人軽い火傷を負ったぐらいで。

 だが、襲撃者たちの方はそうはいかなかった。

 彼らは屋外にいて、まともにフィオーリアの光の玉を浴びたのだから。

 朝になって日が昇ったとき、町の人々は、人型の炭をあちこちで見かけることになる。


 レオンは、大通りの方へ駆けていった。

 神殿の周辺の消火は済んでいるが、まだ大通りの方は火の海のままだった。

 家々を舐める火の手に向かって剣を振るう。

 振るった剣の軌跡から、大量の水流が飛び出し、滝のように燃えている家々を襲う。

 すぐに、火勢は弱まり、白煙を上げるだけとなる。

 それを道々何度か繰り返し、大通りの火事はほぼ消し止められた。

 大通りの両側の家々の外観は、黒く焼け焦げたものになったが、人的被害はここでもほとんどなかった。

 そして、さらに、東へ駆けていくと、今まさに炎を噴いて燃え盛っている建物が見えてきた。

 ガシューの店だ。

 元々2棟の大きな建物だったはずだが、すでに一棟は燃え落ち、倒壊したようだ。

 残りの一棟も逆巻く火炎に包まれている。

 これでは火を消しても、使い物にはなりそうもない。取り壊すしかないだろう。

 だが、ここで火の手をとめなければ、周囲の民家も巻き込んで倒壊する恐れが十分にある。

 レオンはガシューの店に向けて、剣を構えた。

 そのときだった。

 左手の家の軒先に停まっていた荷車の荷台に腰掛け、レオンの様子をジッと見つめていた一人の男がユラリと立ち上がった。

 レオンはその人物から猛烈な殺気が発せられているのを感じ取った。

 炎の明かりに照らされたその顔は、シルフさんならすぐに気づいただろうが、襲撃隊のリーダーだった。

 彼は生き残っていた。フィオーリアの攻撃魔法をかいくぐって。

「そこもとは近衛隊フランシス隊長のご子息レオン・フランシス殿とお見受けする」

 レオンは、その人物に視線を向ける。

「左様」

「我は、王て・・・・・・」

 襲撃隊のリーダーが名乗りを上げようとするのを制して、

「待て! もし、おぬしが今晩の襲撃に関係する者であるのなら、我がここでその名を聞いたのでは、我が友にとっても、そちらの主君にとっても、差しさわりがあろう」

「うむ、確かに・・・・・・」

 その人物も納得したようだった。

「では、改めて、我が名は、マーティン・ジャスティス。お主に3年前の御前試合で苦杯をなめさせられた。あのときの屈辱、今ここで、晴らさせてもらうぞ!」

 復讐に燃える強い眼光でレオンを見つめるのだが、レオンはというと、

「ま、マーティン・ジャスティス? だれだそれ? そんなヤツと、戦ったか? 3年前に?」

 怪訝な表情。実際、まったく覚えていなかった。

「な、なに!? 我を覚えていないだと!」

「どこで対戦した? 決勝ではないよな。確か決勝の相手は、国軍のブライト・ヒューイとかいう小隊長だったし」

「我を見忘れただと! 覚えてないのか? ・・・・・・ほ、本当に?」

 探るような眼。

「うむ。準決勝じゃないよな。確か、あの時は、対戦相手が前の試合で負傷して、不戦勝だったし、準々決勝は・・・・・・ 確か、ロンバール公のご子息だったはず。お前じゃないよな?」

「ち、ちがう!」

「あとは・・・・・・ 大した相手いなかったはずだが?」

「なっ、なに! あの突きを忘れただと!」

「はて・・・・・・?」

「お、おのれぇぇぇぇ!!!」

 リーダーは剣を構えた。その剣、薄く光っているところを見ると、魔力を秘めているようだ。

 レオンもそれに気づいたようで、剣を構えなおす。

 そして、壮絶な決闘がはじまった。



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