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襲撃 8

 フィオーリア、ジョゼフィーヌ、レオン、今度は、三人で、祈祷台の陰に集まって座り込み、こそこそ相談を始めた。

 ここなら、声をひそめれば、ジョーンとなにやら、熱心に話し込んでいるエリオットには話を聞かれる心配はない。

「で、魔女。この状況、なんとかなりそう?」

「だれに、口きいてるのよ。虫の分際で」

「なんだと、腐れ魔女め! 生き残ったら、絶対、お前を火あぶりの刑にしてやる!」

「ふん! その前に、アンタをネズミの姿にしてやるわ!」

 って、いつのまにか、この苦境から脱出して、生き残ること前提になってるし。

 話がまた脱線しそうなので、レオンが介入。

「魔法で、外の敵を始末できるか?」

「う~ん・・・・・・ わかんない。今の私の魔力じゃ、ファイアーボールひとつ打てないし」

 途端に、レオンの目に戸惑いの色が・・・・・・

 ま、こないだから、散々ファイアーボールに悩まされ、さっきは雷撃の魔法を見せられたのだし、当然か。

「でも、アンタのそれ、魔剣でしょ?」

「ああ、そうだ。我が家に先祖代々伝わる聖剣メテオ・クラッシャーだ」

「ふ~ん、なら、それ、貸して?」

「・・・・・・な・に?」

「だから、そのメタルクラッカー? とかいうの、貸して!」

「・・・・・・メテオ・クラッシャーだ!」

 逡巡の色が顔に・・・・・・

 そりゃそうだろう。

 まがいなりにも、レオンが所持しているのは、オイラのファイアーボールすら、一撃で切り払ってしまえるほどの魔力を秘めた魔剣。滅多やたらに貸し与えれば、たちまち精神を乗っ取られて、バーサーカー化してしまう。

「分かっているだろうが、これは魔剣だからな。精神を乗っ取られることもある危ない剣だぞ? 妖しいそぶりを見せれば、すぐに取り上げるからな」

 散々、ぐずったあげく、フィオーリアに背負っていた大剣を渡した。


 受け取った剣を目の前に横たえると、

「箒、ちょっとこっちへ来て、あたしを手伝いなさい!」

 フィオーリアがオイラを呼ぶ。今まで一度もなかったことだ。

 三人の視線が、隅にいたオイラに集まった。

 人前では、絶対に動いたりしない主義なんだけどな、オイラは!

「ほら、箒。なに、ぐずぐずしてるの!?」

 ム~~~!

 主義に反するのだけど。ま、この場合は、仕方がないか・・・・・・

 オイラは、起き上がり、とことこと三人のもとへ歩いていく。

 途端、ジョゼフィーヌとレオン、腰を浮かせ、逃げ腰、恐怖の表情。

「ほ、箒が・・・・・・!」

「ほ、箒が歩いた!!」

 なんだか、新鮮な気分。歩いて見せただけなのに、こんな風に怖がってくれるなんて。

 ぐふふ。

 クセになりそう!

 でも、オイラが近づくと、ひとり当然という顔で怖がっていないフィオーリアは、無造作にオイラの柄をつかんだ。

 そして、空いている方の手で、目の前の魔剣メタルクラッカー(だっけ?)を触る。

「ふぅ~ さすが、魔剣なだけあるわね。すばらしい魔力だわ。もう、あたしの魔力容量いっぱいになっちゃった。まだまだ瞑想修行が足りないわね。魔力をもっともっと練らなくちゃ」

 そして、フィオーリアにつかまれている部分から、何かがオイラの中に注ぎ込まれてきた。


 しゅぅぅぅぅ~~~~

 なにかが萎むようなマヌケな音が聞こえてくる。

「な、な・・・・・・ め、メテオ・クラッシャーが・・・・・・」

 レオンの悲痛な声。

 オイラの中、半分くらい何かが溜まった。

「ふぅ~ こんなものね。箒はまだまだいけそうだけど、魔剣の方が魔力残ってないみたいだし・・・・・・」

 反対側の手を見ると、テーブルナイフほどの大きさと形の金属片が・・・・・・

 その金属片を、泣きそうな表情で、まじまじと見つめるレオンがオイラの前にいる。

 フィオーリアは、そのテーブルナイフをヒョイと取り上げると、レオンに渡した。

「ほい メタルクラッカー」

「め、メテオ・クラッシャーが! 我が家の家宝メテオ・クラッシャーが!」

「あ、そうか、メテオ・クラッシャーとかいう大層な名前だったわね、それ」

「め、メテオ・クラッシャーが! 我が家の家宝メテオ・クラッシャーが!」

 フィオーリアの言うことなんて、聞いちゃいない。

「ったく! いい加減、うるさいわね! それは元々魔剣なんだから、1万匹ほど、魔物を殺して血を吸わせれば、元に戻るじゃない!」

 ムッとした顔で言うフィオーリアに、呆れ顔のジョゼフィーヌが、

「って、どこに魔物なんかいるんだよ! それも1万匹も!」

 冷静な突っ込み。少なくともオイラは今まで魔物なんて、見たことない(ただし、オイラ自身はのぞく)。

 そして、フィオーリアはふんぞり返って、のたまった。

「・・・・・・知るわけないでしょ、あたしが、そんなもの!」

「って、オイ!」

 そんな二人の近くで、手の中のテーブルナイフを見つめて、いつまでも同じ言葉をつぶやく男が一人。

「め、メテオ・クラッシャーが! 我が家の家宝メテオ・クラッシャーが!」

 あわれ・・・・・・


 ともあれ、レオンはメテオ・クラッシャーを失い、テーブルナイフを手に入れた!!



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