新月の夜 9
「どっちの方向から、この町へ向かっているの?」
「えっと、北の街道沿いだから、王都からかしら?」
「王都?」
なんか、最近、王都がどうとか、よく聞くような・・・・・・
軍隊みたいに統制が取れている冒険者の大集団?
そういえば、ジョゼフィーヌが一週間前に、魔女退治のエキスパートの派遣を父親に頼みたいって言っていたけど。でも、だからって、こんな大集団なわけがないだろうし・・・・・・
そもそも、王都のある北からより、ニハデのある西の方から来るほうが自然だ。
「その集団、この町が目的地みたいなの?」
「う~ん? どうなんだろう? わからないわ。だれも私語とかしてなかったから」
「沈黙の冒険者たちか・・・・・・」
ますますヘンだ。冒険者といえば、にぎやかで陽気なのがトレードマークみたいなものなのに。
コレがどこぞの軍隊とでもいうのであれば、不思議ではないのだが。
軍隊なら統制がとれた一糸乱れぬ動きをするし、100人以上いたとしてもおかしくはない。それに行軍中に私語なんて、普通はしない。
「・・・・・・!?」
「・・・・・・!?」
「って、もしかして、本当に冒険者に化けているどこぞの軍隊なんじゃ?」
「か、かも!?」
「な、なんで、こんな時期に軍隊が!?」
「さ、さあ? 知らないわよ! 大体、アイツらが本当に軍隊かどうかも分からないのだから」
「そ、それはそうだけど・・・・・・」
この国には、軍隊がいくつかある。
もちろん、国直属の正規軍がもっとも人数が多く、精鋭ぞろいで、国内最強だといわれている。
その他に、王家直属の近衛隊、有力貴族や商人たちが所有する私兵などがある。
最近、特にこれといって反乱が起こったなんて噂を聞いたこともないし、軍事訓練が近くで催されるなんて話もない。
正規の国軍が動いているのなら、ある程度事前に沿道の町々へ連絡があって、宿舎や食料の拠出などの協力を求められるのが常だけど、そんな要請は最近この町で聞いたことはない。
ということは、正規軍ではなく、どこかの私兵か?
でも、有力貴族たちの私兵は反乱を起こさせないために、法律で、それぞれの領地以外への出動が禁止されている。もし無断で領地外で活動していることがバレると、即座に、いかなる理由があろうと反乱とみなされ、国軍を中心に、各有力貴族の私兵団も含めた討伐軍が編成されることになる。
ん? 待てよ!
もしかすると、この冒険者集団は、本当に、どこぞの有力貴族の私兵たちか?
身元がバレないように、冒険者を装っているとか?
それなら、つじつまが合いそうではある。
ずい分、リスクの大きい行動だけど、十分にありえるだろう。
なにはともあれ、この冒険者たちの目的地はどこか、そこで何をしようとしているのか、早急に探り出さないことには、オイラとしては、どうしようもない。
ここは、シルフさんに、もう一度探ってきてもらわなくちゃ!
「そ、そうね。わかったわ」
オイラの思考を読んでいて、シルフさん、そういうと、再び、どこかへ飛んでいった。
一体なんなんだろう? この突然現れた冒険者たちって?
う~む・・・・・・