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新月の夜 8

 ずい分前に、エリオットは自室に戻った。

 すぐに部屋の明かりが消えたし、もう就寝したのだろう。

 エリオットの部屋からは、何の気配も感じられない。

 一方、裏木戸に面した裏通りの方からも、特に殺気のようなものが伝わってくることもない。

 レオンは、今日もこないのだろうか?

 今日も、平和な夜がこのままふけるのだろうか?

 それは、そうと、シルフさん、そろそろ戻ってこないかな?

 オイラ、かなり退屈になってきたのだけど・・・・・・

 星を見上げて、線で繋いで、星座を作り、その物語を考える。

 あれとあの明るい星と、向こうの青い星、それに、手前の小さな星で・・・・・・

 オイラと同じ箒の形。

 今日から、この星座を箒座と呼ぼう!

 そう、この箒座は、天の星々の支配者。星座の王!

 すべての星は、この箒座の指図に従って、夜空を運行し、東の空から、西の空へと天を渡る。

 南の空のクソ生意気なフィオーリア座も、東の空の性悪ジョゼフィーヌ座も、箒座のおかげで、夜空で輝くことが出来るのだ!

 もし、箒座の怒りを買うことがあれば、星々はその身を恐怖で震わせ、光をまたたかせて、身を投げ出し、箒座の許しを請わねばならない。

 なんと、すばらしい星空の世界!

 ウハハハハ・・・・・・・

 と、不意に、視界の端の方で、

 オッ!? 流れ星!

 長い尾を光らせ、地面へと落ちていく。

 一瞬で消えた。

 あんな瞬間で消えるのでは、三回も願い事を唱えるなんて、土台無理な話。

 この世界で、流れ星が消える前に、願い事をキチンと三回唱えた人物など、歴史上、一人でもいるのだろうか?

 大いに疑問だ!

 というか、それぐらいの能力があるのであれば、なにかもっと自分を活かす道があって、そちらを追及する方が、本人のためだと思うのだけど・・・・・・

 などと、とりとめもなく考えていた。


 不意に、風が中庭に吹き込んできた。

 シルフさんだ!

 シルフさん、開口一番、困惑しているかのような声をだした。

「ねぇ? なんか、ヘンなのよ! さっきからヘンなヤツラが、この町へ向かってきているの!」

「あ、シルフさん、おかえり。ヘンなヤツラ?」

「うん、そう、一応、冒険者みたいな格好をしてはいるのだけど、妙にその人数が多いの」

「何人ぐらい?」

「100人はいたわね。もしかしたら、もっとかも」

「100人? 盗賊団かなにかかな?」

「ううん、そうじゃなさそう。盗賊たちみたいに、薄汚れた格好はしていなかったし。冒険者風といっても、キチンと身奇麗な感じ。それに、なんていうか、整然としているというか、その、う~ん・・・・・・」

「統制がとれているの?」

「そう、それ! 各自が自分勝手に行動してなんかいないの!」

「う~む、軍隊みたいな感じ?」

「うん、そう! でも、格好は冒険者風」

「な、なんだろうね?」

「なんでしょうね?」

 オイラもシルフさんと一緒になって、困惑するばかり。

 冒険者なんて、ダンジョンにもぐりこんだり、モンスターを退治したり、隊商や旅人を護衛したりするのが主な仕事。

 一瞬の判断ミスが、生死に直結するような危ない仕事する連中。

 そして、なによりも、冒険者というのは、任務の達成すらよりも、生きて帰るのが一大命題の存在なのだ。任務を達成するために、犠牲者を出すなんてことは絶対に許されない。

 生還してこそ、冒険者としての名声や富を享受できるのだから、死んでしまってはもともこもない。

 もちろん一方で、犠牲をいとわずに、任務の達成を目指す存在もこの世にはあって、それが軍隊ってもの。冒険者とはまったく違う考え方で行動する。

 だから、冒険者がパーティを組んで行動するときには、どんなに多くても、10人未満でしかない。

 それより多いと、連携がうまくとれず、かえって、犠牲者が発生してしまうことになる。それでは冒険者失格!

 なのに、冒険者が100人?

 自分たちの安全に敏感な冒険者たちにとって、ありえない!

 一体なんなのだ?

 なにものが、こちらへ向かってきているのだろうか?



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