表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/54

新月の夜 6

「えぇぇぇ!?」

 エリオットの絶叫が。

「今晩、ジャン・ルイは来ないの!!」

 手紙を読み終えたエリオットが、絶望の声を上げた。

「どうして? なぜなの? アンタ、ジャンから何か聞いてないの?」

 コレは、部屋のソファーに腰掛けているはずの、さっきの青年への問いかけ。

「はっ、特になにも・・・・・・」

「一体、どういうこと? 毎月、新月になったら、必ず私の元へ来てくれていたのに・・・・・・」

「は、はぁ~」

 ってことは、ジャン・ルイっていうのが、いつもの黒マントの男の名前ってことか。で、今日現れたこの青年は、そのジャン・ルイの従者かなにかって所かな?

 いずれにせよ、ジョゼフィーヌやレオンの関係者というわけでもなさそうだ。

 ちょっぴり一安心。

 安心した途端、これからこの二人の間で何がおこるのか、むくむくと興味がわいてくるもので。

「ま、まさか、ジャンに他の女が・・・・・・!?」

「い、いえ、決してそのような・・・・・・」

 今頃、部屋の中では、嫉妬に狂って、顔から血の気が引いたエリオットが、手紙をねじって、唇をかんでいるのかも。

 オイラは、中庭にいて、部屋の中の様子が見えないが、あれこれ想像をめぐらして、中の気配を探っていた。

 もちろん、目だけは油断なく、路地裏の暗闇を見張ってはいたけど・・・・・・


「わが主は、ただいま王都にご滞在でございます」

「王都? 王様に呼ばれているの?」

「はい、そのようでございます」

「そうなの・・・・・・」

「はい」

 しばらくの間、部屋の中が沈黙していた。

「そう、それなら仕方がないわね。王様のお呼びじゃ」

「はい」

「でも、ジャン・ルイに王様がなんの御用なのかしら?」

「さ、さぁ? 私には、分かりかねます」

「そうよね。さ、お茶でも飲んでちょうだい。冷めないうちに」

「ありがとうございます。いただきます」

 青年がズズとお茶をすする音が聞こえてきた。

「今晩は、王弟殿下主催の晩餐会もございまして、そちらへ向かわれる前に、私に手紙をお預けになられたのです」

「ん? そうなの・・・・・・」

 なぜかより一層沈んだ様子。

「王弟殿下といえば、キャスリーン様、お元気?」

「はい? 奥方様ですか?」

「ええ」

「はい、お元気で、いつもうるわしくおわせられます。先日も奥方様のお父上様であらせられます王弟殿下がガスペールのお屋敷の方においでになられまして、お泊りになっていかれました」

「そうなの・・・・・・」

 ガスペール? どこかで聞いた名前だ。

 え~っと・・・・・・

 でも、そのときは、オイラ思い出せなかった。

「じゃ、それじゃ、セバスチャンは?」

「せ、セバスチャン? ああ、若様のことですか? さあ、若様は、先日、王都の寄宿学校へご入学遊ばれて以来、旦那様も、私たちもお会いしておりませんので・・・・・・」

「そうなの・・・・・・」

 ため息をひとつ。

「あの? ひとつお尋ねしてよろしいでしょうか?」

 おずおずと青年が質問をする。

「あなた様は、旦那様と、その、どのような?」

「どのようなって・・・・・・」

 そんなことを改めて尋ねるまでもなく、わかるでしょ? 普通、若者よ!

 すこし間があって、

「あ、いえ、失礼いたしました・・・・・・」

 この青年、すこし察しが悪いようだ。

「あの、その、あなた様は、若様のことをご存知なのですか?」

「え? どうして?」

「あの、その、先ほど、呼び捨てになさいましたので・・・・・・?」

 すこし考えるかのような間があって、

「ああ、そうか、ええ、そうよ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 何かを待っているかのような間、そして、何も答えたくないという頑な沈黙。

 ハァ~

 今、ここにシルフさんがいてくれたらな。

 エリオットと青年の会話に、適切な解説をしてくれただろうに・・・・・・

 もしかしたら、今までの一連の会話の中から、なにか思わぬ事実を取り出して、オイラに教えてくれたかもしれない。

 はやく、シルフさん、戻ってこないかな~



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ