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第35話 龍は、見ていなかったわけじゃない

最初に異変を察知したのは、

アルテミス天導国でも、人類側でもなかった。


アメリカ大陸の深層ダンジョン。


龍の観測圏が、

わずかに“歪んだ”。


「……何かが増えた」


それは言葉ではない。


概念に近い感覚。


龍にとって世界は、

数値と構造で出来ている。


支配領域


影響力


脅威度


その中に、

昨日まで存在しなかった項目が現れた。


《天使国家》


数値は、まだ低い。


脅威度も、

龍基準では取るに足らない。


だが――

性質が異質だった。


「……国家?」


龍は、

初めてその概念を“意識した”。


ダンジョン由来の存在が、

外界で国家を名乗る。


それ自体は、

珍しくない。


過去にもあった。


すべて――

消えた。


「だが、今回は……」


龍は、

さらに深く観測する。


天使国家は、

拡張していない。


侵略も、していない。


人類と交易し、

外交し、

境界を定めている。


「……選別か」


龍は、

理解した。


これは、

人類の延命策だ。


龍と真正面から戦う前に、

戦力を増やすための布石。


「愚かだな」


だが、

笑いはしない。


龍は知っている。


人類は、

追い詰められるほど

選択肢を広げる種族だということを。


そして。


その中心にいる

一人の人間の存在も。


「地下マスター……」


龍は、

その名を“思考した”。


天使国家。

ゾンビダンジョン。

不滅王の拘束。


すべてに、

同じ人間が関わっている。


「……面倒だ」


だが、

危険だ。


龍は、

行動を選んだ。


殲滅ではない。


侵略でもない。


試験。


最初の一手は、

静かだった。


アルテミス天導国近郊。


ダンジョン外縁。


空が、

わずかに歪む。


天使たちは、

即座に反応した。


警戒。

防御展開。


だが――

敵影はない。


次の瞬間。


一つの拠点が、

“消えた”。


破壊ではない。


爆発でもない。


存在そのものが、

切り取られた。


「……何が起きた?」


天使少女――

国家代表の声が、

初めて揺れる。


解析不能。


魔法でもない。


物理でもない。


「……龍だ」


彼女は、

直感で理解した。


これは、

警告。


「お前たちは、

まだ盤上に上がっていない」


人類側にも、

情報が届く。


「アルテミス天導国周辺で、

 未確認消失現象」


「敵対行動か?」


「……違う」


誰かが、

呟く。


「見られた」


その時。


俺は、

遠くから報告を受けていた。


そして――

一言だけ言った。


「……来たな」


龍は、

天使国家を

“敵”とは認定していない。


だが――

無視もしなかった。


それが、

何を意味するか。


天使少女は、

理解していた。


「……私たちは」


小さく、

呟く。


「世界に、

 入ってしまった」


龍にとって、

世界とは。


価値があるか


利用できるか


それとも消すか


その三択しかない。


天使国家は、

今。


初めて、

“評価対象”になった。


そして――

その評価は、

次で決まる。


(第35話・了)

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