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第27話 引き渡し線

ドローンの残数が、

危険域に入った。


「……残り、

 あと二割を切りました」


淡々とした報告。


だが、

全員が意味を理解している。


これは――

続けられない数字だ。


爆弾も同じだった。


自爆特攻用。

対ゾンビ用。

低コストで量産できる――

はずだった。


だが、


量産できる

≠ 無限に使える


不滅王の保険。

ゾンビ編の切り札。


使い切れば、

次はない。


「……地下マスター」


《オーバーサイト》代表が、

静かに言う。


「そろそろ、

 限界じゃないか」


俺は、

頷いた。


「ああ」


否定しない。


その時だった。


通信が、

割り込む。


中国政府、

正式回線。


画面に映る担当官は、

深く頭を下げた。


「感謝します」


その言葉の後ろに、

感情が滲んでいた。


「貴殿の行動により」


「ゾンビダンジョン前線は、

 我々が対処可能なラインまで後退しました」


地図が、

表示される。


赤い領域が、

縮んでいる。


隔離線。

封鎖線。

火力投入可能エリア。


「……ここまで来れば」


担当官は、

はっきり言った。


「国家の仕事です」


次の映像。


輸送機。


箱。


開封。


ドローン。

爆弾。


数は――

十分すぎる。


「お礼です」


「そして、

 追加の協力要請ではありません」


一拍。


「撤退してください」


その言葉に、

一瞬、静寂が落ちた。


撤退。


それは、

負けではない。


だが――

終わりでもある。


俺は、

画面を見つめたまま言う。


「……条件がある」


担当官が、

頷く。


「拠点は残す」


「封鎖用として、

 使ってくれ」


「破壊は、

 するな」


拠点は、

俺の城だ。


だが、

今回は違う。


これは――

引き渡し線。


人類と、

地獄の境界。


「……了解しました」


中国政府は、

即答した。


通信が、切れる。


誰かが、

小さく息を吐いた。


「……終わったな」


「いや」


俺は、

首を振る。


「終わらせた」


それだけだ。


ゾンビは、

いなくなっていない。


ダンジョンも、

消えていない。


だが、


思考ネットワークは潰した


人間爆弾は封じた


拠点は残した


国家が動ける余地を作った


それで、

十分だ。


俺は、

最後にダンジョンを見た。


静かだ。


以前のような、

“知性の圧”はない。


だが、

気配は残っている。


「……次は、

 もっと上手くやるだろうな」


ゾンビ側が、だ。


拠点を、

一つずつロックする。


貸し出し終了。


役目、完了。


帰還。


地下マスターとして、

俺はまた一つ、

“やりきれない成功”を積み上げた。


英雄でも、

救世主でもない。


ただ――

最悪を、次に渡さなかっただけ。


中国ゾンビダンジョン編は、

ここで終わる。


だが、

世界は覚えた。


倒せない敵がいる

増える敵がいる

管理しないと終わる敵がいる


そして――

それに対処した人間が、

確かに存在したことを。


(第27話・了/中国ゾンビダンジョン編 完)

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