表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/39

第25話 空から、すべてを終わらせる

ゾンビの防御力は、高くない。


それは、

中国ゾンビダンジョンで

最初に共有された常識だった。


数は多い


能力は厄介


だが、防御は紙


だからこそ、

火力で押すと――

増える。


その常識が、

ずっと足枷だった。


「……逆だな」


俺は、

モニターを見つめながら呟いた。


「防御が低いなら、

 残さなければいい」


誰も、

すぐに返事をしなかった。


四角形に配置された、

四つの拠点。


A、B、C、D。


その中心。


今、

ゾンビが“溜まっている”。


前線ゾンビ。

人間爆弾候補。

能力なし個体。


そして――

背後には、能力者ゾンビ。


思考ネットワーク。


指揮。


「……あそこが、

 脳だ」


《オーバーサイト》代表が、

静かに言う。


「……地下マスター」


「言うな」


俺は、

先に止めた。


「分かってる」


使うのは、

ドローン。


不滅王の時、

“万が一”のために

大量に用意していたもの。


使わずに済めば、

それが一番よかった。


だが――

済まなかった。


「……高度、確保」


「侵入角度、

 真上」


「爆弾、

 自爆特攻用」


声が、

淡々と進む。


誰も、

勇ましいことは言わない。


「……確認する」


俺は、

一度だけ言った。


「これは、

 隔離じゃない」


「管理でもない」


「一掃だ」


つまり。


中心にいるものを、

まとめて消す。


ドローンが、

夜空を覆う。


静かだ。


あまりにも。


ゾンビは、

気づかない。


上を、

見ないからだ。


思考ネットワークは、

地上を見ている。


「……投下」


次の瞬間。


爆発。


一つじゃない。


十。

二十。

三十。


絨毯爆撃。


空から、

地獄が落ちる。


爆風が、

中心部を削り取る。


前線ゾンビが、

吹き飛ぶ。


人間爆弾が、

起爆する前に消える。


能力者ゾンビも、

例外じゃない。


防御が、

間に合わない。


思考ネットワークが、

途切れた。


それが、

はっきり分かった。


動きが、止まる。


連携が、消える。


ゾンビが――

ただのゾンビに戻る。


沈黙。


爆煙の向こうに、

何も残っていない。


「……終わった、のか」


誰かが、

震える声で言う。


「中心は、な」


俺は、

静かに答えた。


勝ったか?


……違う。


これは、

逃げ場を潰しただけだ。


だが――

今は、それでいい。


人間爆弾は、

消えた。


思考ネットワークも、

消えた。


少なくとも、

“あの地獄”は繰り返されない。


《オーバーサイト》代表が、

ゆっくり言う。


「……地下マスター」


「これ……

 やり続けられるか?」


俺は、

首を振った。


「無理だ」


「これは、

 保険だ」


「切り札は、

 何度も使えない」


ドローンは、

減った。


爆弾も、

減った。


そして何より――

戻らないものがある。


俺は、

画面から目を離した。


「……これが、

 俺の限界だ」


管理でも、

構造でもない。


ただの、

破壊。


その夜。


中国政府は、

一時的な成功を発表した。


だが、

誰も“解決した”とは言わなかった。


分かっている。


これは――

延命措置だ。


俺は、

新しいメモを開く。


次の構造案。


タイトルは、

まだ書けない。


ただ、一行だけ。


「空から消せばいい、

という考えに頼り始めたら、

もう終わりだ」


ゾンビは、

弱い。


だが――

弱さを前提にした瞬間、

人類は負ける。


(第25話・了)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ