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第20話 不滅は、縛られる

不滅王は、疑わなかった。


それは慢心ではない。

経験がなかったのだ。


危険。

敗北。

窮地。


そういう概念が、

彼の時間には存在しなかった。


三つの拠点が、

静かに稼働していた。


A、B、C。


どれも、

攻撃をしない。


威圧もしない。


ただ――

待っている。


「……誘導、完了」


《オーバーサイト》の声が、

低く響く。


不滅王は、

自然にそこへ来た。


壊れた地形。

修復される空間。


回復の中心。


三角形の、ど真ん中。


「……本当に、

 気づいてないのか」


誰かが、

息を詰めて言う。


俺は、

答えなかった。


気づく理由がない。


今まで、

一度も“罠”に

かかったことがない存在だ。


「開始」


その一言で、

すべてが動いた。


三方向から、

魔力が伸びる。


太さは、

ロープ程度。


だが――

密度が異常だ。


「魔力消費、

 想定上限突破!」


「続行!」


止める理由はない。


ここは、

一発勝負だ。


不滅王は、

まだ理解していない。


腕に、

魔力ロープが触れる。


脚に、

絡みつく。


「……?」


初めて、

小さな疑問が生まれる。


だが――

回復する。


切れない。


治る。


問題ない。


そう、判断した。


二本目。


三本目。


三方向から、

同時に締め上げる。


空間が、

軋む。


「……魔力圧、

 限界!」


「外周、

 安全圏維持!」


三角形の外、

半径百メートル。


誰も、近づけない。


触れられたら、終わりだ。


ここで、

ようやく。


不滅王が、

“違和感”を覚えた。


回復しているのに――

自由が戻らない。


魔力は満ちているのに――

拘束が解けない。


「……なるほど」


その声は、

笑っていた。


「……気づいた」


誰かが、

震えた声で言う。


不滅王は、

初めてこちらを見る。


正確には――

構造を見る。


「これは、

 殺すためのものではないな」


その瞬間。


完全に、

理解した。


「……はは」


嗤った。


今まで、

誰も聞いたことのない嗤い方で。


「そうか」


「不滅を、

 終わらせに来たのではない」


「不滅を、

 戦場から排除しに来たのか」


声が、

楽しそうだった。


魔力ロープが、

完全に固定される。


三点拘束。


逃げ場、ゼロ。


破壊しても、

回復しても、


位置が変わらない。


「……ああ」


不滅王は、

満足そうに言った。


「これは、

 初めてだ」


「ピンチというものを、

 理解した」


魔力消費は、

限界を超えている。


誰かが、

膝をつく。


それでも、

手は止めない。


「……維持、

 あと十秒!」


「十分だ」


俺は、

静かに言う。


最後の固定が、

完了する。


不滅王は、

完全に動けない。


だが――

敗北していない。


ただ、

そこに居るだけだ。


沈黙。


誰も、

声を出さない。


不滅王は、

拘束されたまま、嗤っている。


「……人類よ」


低く、

楽しげに。


「これは、

 美しいあがきだ」


俺は、

端末を閉じた。


近づかない。

語らない。


勝利宣言もしない。


ただ――

構造が成立したことを確認する。


それでいい。


三角形の中心。


不滅は、

縛られた。


殺されていない。

倒されていない。


だが――

戦えなくなった。


それが、

この作戦のすべてだ。


不滅王は、

最後まで嗤っていた。


自分が、

初めて“理解された”存在として

捕まったことを。


地下で、

誰かが小さく言う。


「……勝った、のか?」


俺は、

首を振る。


「違う」


「通用した」


それだけだ。


(第20話・了)

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