第19話 不滅専用
最初に口を開いたのは、俺だった。
「このままだと――
日本も、龍の住処になる」
会議室の空気が、
一段、重くなる。
日米合同。
だが、主導権はどちらにもない。
あるのは、
一つの前提だけだ。
不滅王は、
アメリカだけの問題じゃない。
「……根拠は?」
日本側の代表が、
慎重に聞く。
「移動じゃない」
俺は、
地図を映す。
「拡張だ」
アメリカのダンジョン。
生存圏の縁。
「龍は、
“空いた場所”を嫌わない」
「支配できる余地があれば、
そこを広げる」
「今、
アメリカは“構造”で押し返してる」
「だが――」
一拍、置く。
「構造がなければ、
次は日本だ」
誰も、
笑わなかった。
笑える話じゃない。
「……仮に」
アメリカ側の軍関係者が言う。
「それが事実だとして」
「我々は、
どうすべきだ?」
「簡単だ」
俺は、即答する。
「倒せる構造を、
最初から作る」
不滅王は、
普通の敵じゃない。
自己回復。
魔力回復。
時間が、
味方になる。
「正面火力は、
意味がない」
「消耗戦も、
無意味」
「だから――」
端末に、
大きく文字を出す。
不滅王専用構造
「これは、
兵器じゃない」
俺は、
先に釘を刺す。
「環境だ」
・回復を“意味のない行為”にする
・魔力循環を遮断する
・存在し続けること自体が
リスクになる空間
「不滅を、
“続けられない状態”にする」
それが、
目標だ。
日本側の代表が、
眉をひそめる。
「……それは、
倒すというより」
「機能停止だ」
俺が、続きを言う。
「死ななくていい」
「不滅でいい」
「ただ――
そこに居られなくする」
沈黙。
だが、
誰も否定しない。
不滅王相手に、
これ以上現実的な案はない。
「問題は」
アメリカ側が、
現実に引き戻す。
「それを、
誰が作るかだ」
俺は、
一瞬だけ間を置く。
「俺が、設計する」
はっきり言う。
「拠点。
ネットワーク。
誘導。
封鎖」
「ただし――」
視線を上げる。
「一国じゃ無理だ」
理由は、明白だった。
・規模
・資材
・試験場
・失敗許容回数
全部、
国家レベル。
「だから、
日米合同だ」
「どちらかが主導するなら、
俺は降りる」
「構造は、
政治の下に置かない」
強い言い方だった。
だが――
退かない。
数秒の沈黙。
やがて、
日本側の代表が言った。
「……日本としては」
「“迎撃”ではなく
“予防”という位置づけなら」
アメリカ側も、
続く。
「我々も同意する」
「英雄を作るつもりはない」
「再現可能な構造を
残したい」
意見が、
一致した。
会議の結論は、
一つ。
不滅王専用構造
日米合同開発計画
非公開・段階実証
実戦投入は、
“不滅王が動いた時のみ”
誰も、
楽観していない。
だが、
逃げもしない。
地下。
俺は、
一人で設計を始める。
地形。
魔力流。
回復挙動。
そして、
一行、赤字で書く。
「勝つ前提で、
考えない」
勝てなくてもいい。
倒せなくてもいい。
ただ――
不滅が、
意味を失う構造を。
仮面を置く。
深く、息を吐く。
「……ようやく」
独り言のように、呟く。
「不滅専用だ」
これが、
次の段階。
構造が、
神話に触れる。
(第19話・了)




