第16話 斬るのは、首だけでいい
レッサードラゴンの動きは、
もはや“個体”ではなかった。
「……完全に、
集団として動いてるな」
拠点のモニターに映るのは、
前線空域。
大型が中央。
レッサーが内側。
盾と中身。
崩すなら、中心だ。
《オーバーサイト》代表が言う。
「……大型を落とす?」
「落とせる」
俺は即答した。
「だが、
全部は無理だ」
「時間も、
コスパも合わない」
それは全員、分かっている。
「だから――
斬首だ」
一瞬、
空気が張り詰める。
「大型は、
“守っている”だけじゃない」
俺は、
地図を切り替える。
「指示を出している」
「位置調整、
射線遮断、
撤退判断」
「全部、
中心から来ている」
つまり。
頭を落とせば、
体は勝手に疲弊する。
使うのは、ミサイルだ。
今まで、
ほとんど使ってこなかった。
理由は単純。
高コスト
派手
目立つ
だが今回は、
一発でいい。
「……地下マスターが
ミサイルを使う日が来るとはな」
誰かが、
冗談めかして言う。
「誤解するな」
俺は、冷静に返す。
「撃つためじゃない」
「終わらせるためだ」
ミサイルは、
拠点内で生成する。
威力重視。
誘導重視。
数は、
一。
標的は、
大型ドラゴン一体のみ。
「……発射準備」
「待て」
俺は、
一瞬だけ止める。
「タイミングは、
陣形が完成した瞬間だ」
盾が、
完全に仕事をしている時。
そこが、
一番油断する。
来た。
大型が、
円の中心で止まる。
レッサーが、
内側で動きを止める。
今だ。
「撃て」
轟音。
空間を裂くように、
ミサイルが飛ぶ。
レッサーが、
一斉に反応する。
だが――
遅い。
盾役は、
“外”を警戒している。
上からの一撃は、
想定外だ。
直撃。
爆光。
大型ドラゴンが、
墜ちた。
完全な撃破ではない。
だが――
戦闘不能。
それで、十分だ。
次の瞬間。
レッサーの動きが、
乱れた。
突っ込む個体。
逃げる個体。
旋回を続ける個体。
統制が、
消えている。
「……効いてる」
《オーバーサイト》代表が、
低く言った。
「集団じゃない」
「ただの群れだ」
追わない。
深追いしない。
拠点射線を、
維持するだけ。
レッサーは、
近づけない。
だが――
無理に来ない。
代わりに、
散っていく。
戦闘終了。
被害、軽微。
弾薬消費、最小。
だが――
意味は、重い。
「……これで」
誰かが、言う。
「もう、
集団で来れない」
「ああ」
俺は、
地図を見下ろす。
「来ても――
維持できない」
大型を出せば、
狙われる。
出さなければ、
レッサーは守れない。
どちらに転んでも、
消耗する。
俺は、
一行メモを足す。
《対集団戦術》
・斬首
・殲滅不要
・疲弊誘導
これでいい。
倒さなくていい。
勝たなくていい。
機能しなければ、
それで終わりだ。
遠く。
ダンジョンの奥。
何かが、
静かに反応した。
大型一体が、
落とされた。
だが――
不滅王は、動かない。
代わりに、
“評価”が更新される。
地下で、
俺は仮面を直す。
「……次は」
呟く。
「龍が、
構造を警戒する段階だ」
ここからは、
知恵比べになる。
火力じゃない。
数でもない。
構造 vs 知性。
ようやく、
本番だ。
(第16話・了)




