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第11話 何と戦うつもりだ

最初に黙ったのは、

《オーバーサイト》のメンバーだった。


視界遮断型の敵との遭遇。

ネットワークの初崩壊。

それでも全員、無事に戻ってきた。


結果だけ見れば、成功とも言える。


だが――

誰も、次の準備に入らなかった。


「……なあ」


拠点の休憩区画。

一人が、言葉を探すように口を開いた。


「正直に聞いていいか?」


俺は端末から視線を外さず、

短く答える。


「好きにしろ」


空気が、少しだけ張り詰めた。


「俺たち、

 どこまで行くつもりなんだ?」


続いたのは、

ずっと誰も言わなかった疑問。


「拠点を増やして、

 射程を繋げて、

 視界を支配して……」


「それで?」


沈黙。


誰も答えられない。


目的が、

まだ共有されていなかった。


その時、

配信コメントが画面を埋め始めた。


《地下マスター、何がゴール?》

《実験?攻略?支配?》

《誰と戦ってるんだ?》


しつこい。


だが――

当然でもある。


ここまで見せてきて、

何も言わない方が異常だ。


「……」


俺は、少しだけ考えた。


ここで全部を話す必要はない。

話す気もない。


だが、

黙り続ける理由もなくなった。


「……いい」


端末を置く。


仮面越しに、

全員を見る。


「理由の一部だけ話す」


空気が、止まった。


「俺は――

 ダンジョンの最深層に

 興味があるわけじゃない」


意外そうな顔。


「攻略にも、

 ランキングにも、

 興味はない」


それは、

今までの行動で分かっていた。


「じゃあ何だ?」


誰かが、問い詰める。


俺は、

一拍置いた。


そして、言った。


「……龍がいる」


一瞬、

音が消えた。


「は?」


「龍?」


「冗談、だよな?」


配信コメントが、

一斉に跳ねる。


《龍?》

《ファンタジーすぎ》

《作り話?》


「作り話じゃない」


即座に否定する。


「アメリカのダンジョンには、

 他と違う特徴がある」


「エリアごとに、

 龍の王がいる」


言葉を、最小限に絞る。


「全部は知らない」


「だが――

 一体だけ、発覚している」


《オーバーサイト》代表が、

低い声で聞いた。


「……どんな龍だ」


「不滅を司る」


短く答える。


「肉体も、

 魔力も、

 回復する」


「魔力切れが、ない」


沈黙。


さっきまで戦術を語っていた連中が、

言葉を失っている。


「倒せない」


俺は、はっきり言った。


「少なくとも、

 今の人類のやり方じゃな」


「……それが、目標か?」


代表が、

慎重に聞く。


「その龍を、

 倒すために?」


俺は、首を振った。


「違う」


少しだけ、

声を落とす。


「倒せるかどうかは、

 興味ない」


配信コメントが、

一瞬止まる。


「俺が知りたいのは――」


言葉を、選ばない。


「拠点が、

 どこまで通用するかだ」


ざわめき。


理解。

困惑。

恐怖。


全部、混ざる。


「国家が負けた相手だぞ……」


誰かが、呟く。


「分かってる」


俺は、淡々と返す。


「だから、

 火力に意味がない」


「だから、

 撃たない」


「だから、

 構造を作ってる」


今までの行動が、

一本の線で繋がっていく。


「……正気か?」


代表が、

半ば本気で聞く。


俺は、少し考えてから答えた。


「正気だ」


「正気だから、

 こうしてる」


「狂ってたら、

 とっくに前に出てる」


静寂。


その言葉は、

誰も否定できなかった。


配信コメントが、

再び流れ始める。


《だから拠点か》

《だから撃たない》

《だから視界》

《龍相手にそれを?》


俺は、最後に一言だけ足す。


「……不滅の龍は、

 No.2らしい」


「本人が、

 そう言い残したって話だ」


それ以上は、語らない。


長い沈黙の後、

《オーバーサイト》代表が言った。


「……覚悟が、必要だな」


「強制しない」


即答する。


「降りるなら、今だ」


代表は、

少しだけ笑った。


「ここまで聞いて、

 降りると思うか?」


「……思わない」


正直な答えだった。


俺は、仮面を直す。


「勘違いするな」


「世界を救う気はない」


「英雄にもならない」


「ただ――」


地下の地図を、指でなぞる。


「最強が通用しないなら、

 構造で試す」


それだけだ。


その夜。


ネットでは、

こう言われ始めていた。


《地下マスター、

 ラスボス見えてないのに挑んでる》


違う。


見えてないから、

挑むんだ。


地下で、

新しい拠点計画が動き出す。


次の相手は、

魔物じゃない。


龍だ。


そして――

それは、

まだ“入口”に過ぎない。


(第11話・了)

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