プロローグ
豪華絢爛、その様は夢の如く。
葬ったのは五つの魂。
後世にて読み解く者よ、我らの罪を継ぐ者よ。
真、哀れなことなりてここに綴る。
――蔓由木家所有古書『五歳千書』より『序』。現代語訳。
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その正式名称を、カル・メティアル・セイ・ユールレイと云う。
『修央堂大学付属ユールレイ学院』
世界に名だたるその学園のシンボルは、ただ一つの花。
不可思議なその形状。複雑奇怪なるエンブレム。訪れた者は、問う。
『これは?』
学園の、小さき案内人は、その手の問いには悠然と笑むのが常であった。
客人を例外なく招きいれ、そして例外なく立ち入らせない【迎賓館】。その中央に飾られた、豪奢な金の額縁に似合う、複雑な花。
ユールレイと名を冠す、学園のシンボルであり、エンブレム。美しく格式高きそれ。けれど、学園は皆一様に、同じ微笑みを携え、口を閉ざす。
『さあ?存じ上げません』
かくして、学園は囁かれた。
なんと閉ざされた地か、と。
世に、楽園の名を冠す地あり。
ある者は光のと呼び、
ある者は水のと云う。
――ユールレイ
華々しく刻まれてゆく歴史と、世界に裏付けされた絶対の誇り。
ただ一つの“約束”に囚われた者たちの箱庭は、やがて大きな“役目”を負った。
『水と光の楽園』
世に、楽園の名を冠す地あり。
華々しく刻まれてゆく歴史と、世界に裏付けされた絶対の誇りを持つ、名を、ユールレイと云った。