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ストレスボール

ストレスが溜まりすぎた男の話

 『ストレスが上限に達しました。ストレスボールを1個作成します』

 脳内にメッセージが流れた。

 佐伯忠司は一瞬耳を疑った。周囲には誰もいない。夜のワンルーム、自宅マンションには自分一人だけ、脳内のメッセージは一度流れた切り沈黙している。

 何が起きた。そう思った瞬間少女が目の前に現れた。年齢は見たところ高校生か中学生、黒髪黒目のロングヘアー、服装はこれも黒一色のワンピース、裸足で立っている。

 「初めまして、私はナビゲーター。ストレスボールが作成された人物に自動的に召喚されるAIです。」

 忠司は何が起きたのかわからず正面に立っている少女を凝視している。少女は続ける。

 「あなたはストレスが精神異常をきたす上限を超えたため。一時的にストレスをボールへと移行しました。少女が右手をかざすと黒い球が現れた。

 「これはあなたのストレスを具現化したものです。使用方法は様々、誰かを病気にすることもできますし、誰かの病気を治すこともできます、誰かを不幸にすることもできます、逆に誰かを幸福にすることもできます。譲渡はできません。あなた自身に対する願いも受け付けません。あくまでも対象者はあなた以外の誰かに対してになります。選択権はすべてあなたにあります」

 忠司は目の前で起きていることに頭がついていかず混乱していた。ここ最近は仕事では失敗続き、上司に叱責されまくり、労働時間は1日に12時間を超え、朝から晩まで働き詰めで睡眠もろくに取れていなかった。たまに休みが取れても仕事の心配ばかりしてしまい、睡眠も浅く少し体調がおかしくなり始めていた。いよいよ頭がおかしくなってしまって、幻覚でもみているのかと少女を凝視した。

 少女は沈黙している。

 「お前は誰だ?」

 忠司はやっと言葉を発した。追いついていない頭をフル回転させてやっと出た第一声だった。

 「私はAIです。名前はサキ、先ほども説明した通りストレスボールが作成された人物に自動的に召喚されます、あなたの願いはなんですか?」

 願い?忠司は言葉を頭の中で反芻した後答えた。

 「そんなものは特にない」

 「そうですか、このままですとあなたは死ぬことになってしまいますがそれでもよろしいですか?」

 サキは淡々と答えた。そして続ける

 「あなたは自分の許容範囲上限を超えたストレスを抱えてしまいました。このまま何も願わなければストレスボールはあなたの体内に返還されあなたは精神異常でそのまま死にます」

 物騒なことを言い出した。

 「待ってくれ、たかがストレスが少し溜まったくらいで人が死ぬのか?」

 「少しではありません。人によって許容量は様々ですがあなたは自分の許容上限を突破したストレスを抱えてしまったのです。だからこうしてストレスボールが作成され、私が召喚されたのです」

 サキは変わらず無感情で説明する。

 忠司は頭を抱えた。目の前にいる少女は幻覚には見えない。言ってることもあながち間違いではないような気がする。言ってることがすべて真実だとすれば今俺は生きるか死ぬかの瀬戸際にいることになる。

 「他の人は何を願ったりするんだ?」

 忠司は何も思いつかない頭を振り絞って質問を返した。

 サキは少しの沈黙の後、口を開いた。

 「人それぞれです。この世で生きることに疲れそのまま死なれる人もいますし、怨恨のある人物を病に臥せらせ恨みを晴らす人もいます。逆に赤の他人の病気を治す人もいます」

 サキは淡々と答える。

 忠司は一瞬このまま死んでしまってもいいのではと頭をよぎる。

 「願いを言うまでの猶予はあるのか?」

 やっぱりこのままただ死ぬのはいやだと思い、思いついた質問をぶつける。

 「1時間、それ以上待っても願いを口にしない場合は願いは無いものとみなし、死んでいただくことになります」

 サキは変わらず淡々と言葉を発した。

 「ただ願いを言えばそれが叶うのか?」

 「相手の目を見てあなたが願えば叶います。相手の許可は必要ありません」

 時計の針は午前1時を超えようとしていた。

 今から誰かに会いに行くということは現実的に不可能だ。かといって見ず知らずの人間を今から外に出て見つけ、自分の願いを勝手に押し付けるのも気が引ける。

 そもそも会いに行けるような知り合いなど忠司には親以外存在しない。会社の知り合いなど深い付き合いの人物もいなければ、学生時代の知り合いも友達と呼べる人物はいない。

 忠司は頭を巡らして一つの答えにたどり着いた。それは一種の賭けに近い。死ぬよりはましだと思い。その場しのぎだがやってみることにした。

 「願いを叶えるための条件はほかにあるか?」

 忠司は確認する。

 「ありません」

 サキは答える。

 「例えばAIを人間にするなんてことも可能なのか?」

 サキは初めて困惑の表情を見せた。

 「いままでそのような願いを口にした人はいません。叶うか叶わないかはやってみないことには・・」

 一瞬目をそらしかけたサキを見て忠司は願いを口にする。

 「あなたを人間にしたい」

 その瞬間、サキの右手にあったストレスボールから眩い光がはなたれサキに吸収された。


 『願いはかなえられました。管理者権限に抵触しました。一部管理者権限の移行手続きを開始します』

 

 光は忠司の身体にも吸収され部屋の中は白一色に染まった。


 

勢いで書いてしまった話、続きはまたいつか書きます。

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