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パンラル・ルージュ  作者: 4コマ
一年の夏
6/9

先輩面

 世界には、勝者と敗者がはびこっている。

 勝者が敗者に好き勝手する行為。

 命令、パシリ、カツアゲ、暴行、強姦、痴漢、拷問、差別などなどたくさんある。

 これらを簡単にまとめて言うならば、いじめですね。

 いじめでよく言われる議論が、誰が悪いのかということ。

 一般的な結論を出すなら、最初に手を出してきた方が悪ってのが正しいのでしょう。

 しかしだ、私の結論は違う。

 私の考えでは、そもそものこと傍観者でいる第三者が、争いが起こる前に止めていれば、いじめ自体は起きないのです。

 いじめの原因は、たいていは、加害者の心の問題、被害者からの挑発、そして第三者、周りの人間の傍観が揚げられる。

 怖い、関わりたくいない、いじめられたくない、関係ない、めんどくさい、面白い、そんなことを思っている奴らが傍観者である第三者なのだ。

 私からしたら、被害者、加害者よりも一番の悪者が第三者でしかない。

 ま、そんなことを言っていたら私も悪者でしょうね。

 それでも、一番の悪者は第三者である傍観者だ。



 

 今日は、学校の初登校日。

 なぜか今年で二回目の始業式。

 しかも、ここまでのことがたったの三日で進んでいる。

 普通に考えてやばすぎるでしょ。


「夜魅さーーーーん!!!」

「おっと、急に抱き着かないでください」

「いいじゃーん。 それにまた一緒だよ!! 嬉しくない!?」

「ハイハイ嬉しいですよー」


 昨日の出来事で、二人タッグで学校に転入する話で進んだ。

 それに、一人だけなのはさすがのプレッシャーになるとのことでの二人タッグのようだし。

 北、南、西、東、の四か所にある高校に入学している。

 ちなみに、会議に来ていた生徒はあれが全員ではないらしい。

 ただたんに忘れていたらしい。

 

「お! 見えてきたよ! あれが薯蕷(とろろ)専門高等学校!!」

「いつ聞いてもおかしな名前な学校ですね」


 とろろと言うだけあって、とろろについての学校かと思ったら、ごく普通の普通高でした。

 周囲には体をソワソワさせた一年生らしき生徒がたくさん見える。

 他には、入り口付近にいる先生たちがいるぐらいだ。

 門近くに来ると、近くの熱血系かつ体育系らしき先生が挨拶をしてくる。


「おはようございまーーす!!」


 隣にいる凛子は元気に挨拶を返す。

 それに続く形で私も「おはようございます」とあいさつをした。

 玄関近くに貼ってあるクラス名簿を確認する。


「ぎゃあああ!!! 夜魅さんとちがうクラスだあああああああああ!!!!」

「私は二組のようですね……、凛子は四組ですか」

「おおお四とは……ふきつじゃ、ふきつじゃ……」

「失礼ですね。 確かに四は不吉な数字ですが、キリスト教などでは、四はラッキーナンバーなんですよ」 

「そんなラッキーいらないよ!!! ここ日本だよ!? 四で喜ぶ人なんて見たこと――!!」

「やったああ!!! 四組じゃん!!」

「いましたね」

「…………」


 私達二人の隣で四組であることに喜ぶ男子生徒。

 見た感じ、一つ上の先輩のようだ。

 じっと見ていると、視線に気づいたのか、先輩らしき人がこちらに顔を向いた。


「あら? 君一年生?」

「まぁはい。 今日からここに入学します」

「マジ!! とうとう俺も後輩ができる時代なのか!! 考え深いな……」


 先輩は何かにふけっているように上を向いている。

 なんだこの先輩。

 すると、先輩は思い出したかのように「やっべ!! 会場準備があったんだった!!! 悪いな話はまた後でな!!」

 とか言っていなくなった。


「さっきの人知り合い? 夜魅さん」

「いえ、全くの他人です」


 そんな玄関での出来事が終了して、教室の中に入る。

 教室内では、さっそく楽しく会話をしているグループがあった。

 その他だと、椅子に座って本を読んでいる生徒などがいた。

 紙のブックカバーで隠している本のたいていはライトノベルがお決まりなのだ。

 だって私だって読んでるし。

 と、そんなのは今はどうでもいいのです。

 今は、右手に持っている生徒手帳をどうするかを考えなくては。

 

「なんで、あの状況で落とすんですか……」

 

 まさか、いなくなる直前で生徒手帳を落とす馬鹿がどこにいるんですか。

 そう、先輩ですね。

 仕方なく持っているけども、ほんとにこれどうしよう。

 何気に見てみると、生徒手帳には、生年月日が書いてあった。

 

「名前は……沙里影(さりぎ)|(かげ)? 変わった名前ですね。 苗字に関しては聞いたこともないですね」


 しかも、誕生日が四月四日って、この先輩四に愛されすぎじゃありませんか?

 逆にここまで四が多いと不吉ですね。

 

「まぁ、私には関係ないですけども」


 適当に時間をつぶしていると、周りの席には人がどんどんと座っていく。

 ざわざわと、新しい生活に心を震わせる声が教室中に響く。

 自然と、教室内には明るい緊張が広がりつつあった。

 ガラガラと音を出しながら開く扉に周りの人たちも身を引き締めるのだった。

 担当の先生らしき人が、ニコニコしながら私たちの前に立つ。

 そして、軽い自己紹介をしたのちに、始業式までの流れを軽く説明をしてくれた。




 始業式も終わり、教室内では、さっきまでの緊張感はあまり感じ取れない。

 今の生徒たち希望に満ちているのだろう。

 私以外は。

 しょせん私は任務のためにやっているだけで、希望なんざ、はなからないに等しいのだ。

 話が終わり、昼休憩がまわってきた。


「仕方ありませんね……」


 食事を済ませる前に、先輩がいる教室に行くことにした。

 いつまでも私が持っているのは、先輩からしたら迷惑極まりないと思いますし。

 廊下を歩いていると、突然近くの教室から爆発音がしました。


「――え?」


 すぐに音のした教室に向かい、扉を勢いよく開ける。

 煙が散乱した教室内のすぐそこには、白衣を着た女子生徒が倒れていた。


「大丈夫ですか!」


 見た感じ、外からの攻撃ではないようだが、しかし、いきなりこのようなことが?

 それに、誰がこんなことを?


「う……し、失敗してしもうた……」


 あ、この人が原因らしいですね。

 それにしても、なのをどうしたらこんな失敗をするのですかね?


「あれ君見ない顔だね? 一年生?」


 何事もなかったように立ち上がり、服に着いた汚れを落とす。

 そして、特徴的なぐるぐる眼鏡をクイっと上げる。


「まあそうですけども。 あなたはここで何を?」

「私? 私はね、自分の思考が思うままに研究をするただの科学者さ!!」

「そ、そうですか…… なら先ほどは何を作っていたんですか?」

「透明になる薬を作っていたのですけどね……、なぜか爆発物が……」

「それはそれですごい気が……」


 気になって、テーブルに置かれている瓶を見てみると、一つだけとんでもない物があった。


「ニトログリセリン……」


 なぜ学校にこんな危なっかしい物があるんだ?

 先生たちは何をしてるんだ。


「おいおいまた爆発してるんですけども!?」


 気が付くと、後ろには朝の先輩が立っていた。

 

「まーた危なっかしいことしてんのかよ!! あれほど言ってんのになんでやるんだよ!!」

「君には関係ないだろ!! それに、私は人類のかなめなんだよ!!」

「何が人類のかなめだ!! てめぇのやってることは人類の反逆行為の間違いだろ!」

「失礼だな!! 後輩の分際で!!」

「先輩のくせに、後輩を巻き込む実験なんてすんな!!」

「ぐぬぬぬ!! 後輩のくせにー!!」


 私は何を見せられてるんだ?

 なに? この人たち友達同士なの?

 そういえば、今いるし、生徒手帳返しておこう。


(かげ)先輩これ落としてましたよ」


 さりげなくかげ先輩に生徒手帳を出す。

 受け取るときに、なぜか落ち込んだような表情をしていた。


「はははは!!! (かげ)先輩だってよ!!」

「うるさいな!! 間違えは誰にでもあることなんだよ!!」

「えっと……名前違いましたか?」

「そうだね。 (かげ)じゃなくて、(しょう)て読むんだ……」


 なんとそんな呼び名とは!?

 

「申し訳ございません。 (しょう)先輩」

「ま、呼び方なんてぶっちゃけどうでもいいしな…… それよりも、この馬鹿な先輩に手が焼けてしまう方が問題だよ。 後輩よりも危ない先輩とかこっちが嫌なんだけど」


 確かに先輩(二年生)からしたら、先輩もいて後輩もいるで、一番成長ができる時期でもあるのでしょう。

 後輩の悪いところを指導し、分からないところは先輩に聞ける。


「失敬な!? 君だって私がいないと危ないことの方が多いでしょうが!!」

「いつ危ないことがあったて?」


 これは、いつまでも話が進まない気がしますね。

 それに、そろそろ昼休みの時間が終了してしまいますね。

 せっかく弁当を持ってきたのですけども、残念ですね。


「そろそろ昼休みが終わりそうなので、私はこれで失礼しますね」

「そういえばそんな時間だったね。 こんな頼りない二年生はほっといて戻りなさいな」

「なーに先輩ずらしてんだ!!」

「事実先輩でしょうがああああ!!!」

「お言葉に甘えます」


 そう言って、私は、個性的な先輩に少しだけ笑うのだった。



「よかったのかい? 約半年ぶりなんだからもう少し話せばよかったのに」

「なにいっちょ前に先輩ずらしてんだよ。 別にいいんだよ。 今のあいつは見た目が同じだけの他人なんだよ」

「そお言うわりには少しだけ嬉しそうだったけど?」

「先輩の気のせいでしょ」


 馬鹿にするように俺はそう先輩に言った。

 先輩の言っていることに間違いはない。

 嬉しいに決まってるじゃないか。

 

「そういえば沙里義君に聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

「なんですか……?」

「なんで美稲魅夜の記録を全部消したのかな?」

「それ聞いちゃいます? それ」

「先輩の命令は絶対なんだよー」


 正直、話すかどうかはその人次第なのだが、この人にはしゃべっても問題はなさそうだ。

 先輩の性格からすると、自分を縛るものは大っ嫌いな人だから、わざわざ報告はしないだろう。


「……先輩は特殊機の話は知ってますか?」 

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