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パンラル・ルージュ  作者: 4コマ
きっかけ
2/9

知る者

 教室に戻ると、私の席には知らない生徒が座っていた。

 その子は、初対面の凛子と楽し気にしゃべっている。

 

「あ! 夜魅さんおかえり~!!」


 私に気づいた凛子がそう言うと、私の席に座っている子も馴れ馴れしく「お帰り~」などと言ってくる。

 それに対し私も「ただいまさん」などと返す。


「あれ? あの金髪の子はどうしたの?」


 凛子が気になった様子で聞いてくる。

 それに便乗する形で、もう一人の子も聞いてくる。

 凛子だけなら言ってもいいのだが、生憎、この子は知らない為、なんて言えば良いのか考えなくてはならない。


「部外者みたいだったので、今先生に事情聴取されている最中だと思います」

「部外者? 事情聴取? 何のこと?」


 知らない子はそう聞いてくる。

 それに対して、凛子は何かを察したらしく少し驚いた表情になっていた。

  

「この学校に入る前に私達全員にクラスの情報が届いたはずです」

「あ~あれね。 私めんどくさくて見てないんだよね」

「まぁ、それでその情報にない部外者が侵入していたんですよ。 その人があの金髪の人です」


 最低でも私たちの情報以外のことなら話しても別に問題ないでしょう。

 それにしても、さっきまでは全くの知らない人だと思ったが、よく見ると、見たことのある顔だった。

 しかし、名前が出てこない。 


「あらま! それは大変だね魅夜さん」

「本当に朝から大変で仕方ないですよ……え?」


 突然彼女は私のことを【夜魅】ではなく【魅夜】と言ってきた。

 魅夜という名前は、ちょっと前に金髪の子も私のことをそう言っていた。

 その時は、濡れ衣を着せるために調べたのだろうが、今回に関しては少し違う。

 この子は、確実に私の知り合いだ。


「ん? どうしたの魅夜さん」


 私のちょっとした動揺を見て、心配したように私の名前らしき名前を言う。

 すると、さっきまで静かだった凛子が口を開いた。


「もぉう! 美友音(みゆね)ちゃん! 名前間違えてるよ!」


 凛子がそんなことを言うと、美友音という彼女は「何言ってるの凛子さん? 魅夜さんだよ」と、まっすぐに言ってきた。

 私は冷静さを忘れずにその子に聞く。 


「ごめんだけど貴方は誰ですか?」

「あら? 魅夜さん忘れちゃった?」

「すみません覚えてなくて」

「なら、また自己紹介するね」


 そう言って彼女は言った。


「私の名前は竹取(たけとり)美友音(みゆね)ちょうど一年前にあなたに助けられた竹取美友音」


 竹取美友音……彼女の名前を聞いても誰なのかが分からない。

 彼女は一年前に私と会っている。夜魅(わたそ)じゃない魅夜(わたし)に。

 

「まさか再会できるとは思わなかったよ!!」


 美友音は久しぶりの再会のためか、すごく興奮している様子だった。

 しかし、私からしたら誰なのか分からない。

 でも、分からなくても、なぜか胸の奥の方がズキズキとした感覚に合う。

 そんな中、いまだに状況が読み込めていない凛子は何が何だかわかっていない状態だった。


「えっと……夜魅さんと美友音さんは友達なの?」

「そうだけど? と言っても、魅夜さんとは一年前に喋ったきりだから友達というよりかは、知り合いの方なのかな?」

「夜魅さんとはもう六ヶ月の付き合いだけど、まだまだ私の知らない秘密があるとは……!!」


 その言葉は私が一番言いたいセリフなのだが……

 そもそも、過去の私が何をしていたのかを組織の人たちは教えてくれなかった。

 だから自分で調べようとしたが、私の過去十五年に関する情報は組織の情報からすべてなくなっていた。


「そういえば夜魅さんって、私と関わる前は何をしていたの?」

「あ、それ私も気になります!! 何していたのか気になります!!」


 二人は私に質問してきた。

 しかし、二人がしてきた質問は、すべて答えられない。

 さて、どうすればいいのか。

 そう考えていると、ちょうどチャイムが鳴った。それと同時に教室の扉が開き、そこから先生が中に入ってくる。


「よしお前ら全員いるな。 なら今から訓練場に行く」


 来るなり先生はそんなことを言ってきた。

 そして、先生は私を見つけると、私にこう言った。

 

「あと美稲、話があるから来てくれ」

「……わかりました」

 

 運よく二人の話から抜け出せたが、何を話されるか心配だ。

 

 ◆


 夜魅さんが先生に呼ばれたため、私は美友音ちゃんと一足先に訓練場に行くことにした。

 それにしても、美友音ちゃんが言っていた事って何だろう?

 私が夜魅さんと組んだ時は、上の方からは新人と言われたのだが、蓋を開けてみれば、新人と言う言葉が嘘みたいにその動きは洗練されていた。

 そういえば、私って夜魅さんのこと何も知らないきが……

 

「ねぇ凛子さん……」

「なぁに美友音ちゃん」

「凛子さんも世界平和のために戦っているの?」


 美友音ちゃんは突然そんなことを言ってきた。

 そういえば、美友音ちゃんとは昔からの友達だったけども、夜魅さんと会ったみたいな話は聞いたことなかった。


「もちろんそうだよ。 そういえば、なんで美友音ちゃんは、この学校に入ったの?」

「うーん……強いて言うなら憧れかな」

「憧れ? 夜魅さんと関係があるの?」

「夜魅さん……というよりかは、魅夜さんにかな……」


 そういえば、美友音ちゃんが言っている【ミヨ】って言う人は誰なんだろう?

 夜魅さんは夜魅さんのはずなのに、美友音ちゃんは【夜魅】さんを【ミヨ】と言っている。

 どうゆうことなのだろう。

 私は、夜魅さんのことを知ったつもりになっているのかな?

 それとも、ただ知りたくないだけなのか。


「その魅夜さんってどんな人だったの?」

「一言でいうならハチャメチャな感じで、誰にでも明るい優しい人だったかな」

「結構あいまいだね」

「そりゃもう一年前なんだから仕方ないでしょ。 でも、今の魅夜さんは一年前とは雰囲気が違って見えたの……」

「そう? 私からしたら普通に見えるけど?」


 美友音ちゃんは夜魅さんのことをおかしいと思うけども、私から見たらいつもの夜魅さんにしか見えない。

 

「だって、再開したら名前も性格も変わっていだもの。 あんなに明るかったのに、今は心に光がないようなそんな空気を出してるもの」


 本当に夜魅さんっていったい何者なんだろう……


 ◆


「と、話とは何ですか?」

「あ~話ってのはお前の記憶に関してだ」


 いきなり先生に呼ばれると、先生は突然そんなことを言ってきた。


「記憶? どうゆうことですか? 私の記憶を戻す方法を教えてくれるんですか?」

「興味を持ってくれるのは嬉しいが、残念だが俺からは何もできない」

「なら、なぜいきなりそんなことを? それに、知っていたんですね」

「これでも先生なんだ。 生徒の事情を知らないのはいかがなものだろ?」


 そう言いながら先生は、ポケットから煙草を出し火をつける。

 

「それで、なぜ私の記憶について話したのですか?」

「あ? まだ知らねぇのか?」

「何がですか?」


 先生は煙草を一、二回吹かした後に口を開ける。


「知らないなら俺が言っておくか……まず、お前が依頼された任務だが、あれは建前上だ。 本当の任務は、美稲夜魅の心身の回復及び、記憶の復活だ」


 先生のそんな言葉は今の私にとって重大と言った言葉では表せないぐらい大切な話だった。

 しかし、それが何で私に伝えられていないのだろうか?

 普段ならそんなことはないのに……


「そんな話聞いてないですね……」

「ま、俺がお前を呼んだのはこれを報告するためだけだ。 この話に関しては、これ以上は何も知らない。 別に、一人の子供の記憶なんざに付き合う気はないが、これも仕事なんでね」


 そう言いながら先生は再び煙草を吹かす。


「んで、理由は知らないが、お前の記憶の回復にこの学校がカギになっているらしい。 だから、このまま任務を終わらせて帰るのも良いし、ここにいて記憶を取り戻すカギを探すか、そこは自由にしてくれ」


 その言葉に私は何も言わなかった。

 なんて答えれば良いのか分からなかったからだ。

 だから私は、話が終わったことを確認したのち、この場から逃げるように訓練場に移動した。

 その間、先生からは小さな声で「これ……話してよかったんだよな……?」などとブツブツとつぶやいていた。

 そんな言葉を聞かなかったことにしながら訓練場に移動する。

 

 


 訓練場につくと、入学したばかりの生徒たちがたくさんいた。

 一人は、百メートル走だったり、反復横跳び等々。

 その状況を見てみると、生徒たちは体力テストのようなことをしていることに気づいた。

 

「まずは生徒一人一人の実力を測ることのようですね……」


 教室で、先生が言っていたことが正しいのならば、即刻に生徒たちの実力を知る必要があるのだろう。

 なぜなら、ここは普通の学校じゃないからだ。

 となると、私もこの体力テストをやらなくてはならないみたいだ。

 近くの先生に事情を説明したのち私も混ざることにした。

 体力テストの内容は一般的な物とは違い、この学校独自のやり方となっている。

 肉体的なテスト以外にも、射撃、反射神経など、普段は調べないようなところもやった。

 

「ふぅ……なかなか疲れた」


 久しぶりの長時間行動だった為、少しだけ疲労がたまった。

 しかし、肉体の運動能力を調べ終わると、今度は体術のテストがあるらしい。

 

「いや体術テストって何?」


 名前から予測すると、だいたい何をするのかが分かってしまった。

 説明のプリントを見てみると、予想通り、一学年全体で組み手をするらしい。

 

「なかなかめんどくさそうですね……」


 正直に言えば体術で負ける気がしないのが私の率直な言葉だ。

 なんせ、ここは育成学校にもかかわらず、育成しきった私がやってしまったら結果は当然私の圧勝だ。

 どうせ結果は見えているのだ。




 帰宅の準備をする私に美友音さんが話しかけてきた。

 それに対し、答えられる限りのことを喋った。  


「すみません魅夜さん。 本題は変わるけど、魅夜さん……いや、夜魅さんは私のことを覚えていますか?」


 美友音さんは私にそんなことを聞いてくる。

 何も答えられない。 

 分からない。

 知らない。

 私は誰なの?

 







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