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登校時間が一番の無駄だよね(※個人差があります)

 学生の立場に戻って二日目の朝。かんむり屋で働いていた時より二時間もはやく起きねばならないのが苦痛で仕方がない。前世でも今生でも午前十時頃に開店する店が多いのにも関わらず、子どもに限っては朝八時半には授業が始まってしまうというのはあまりにもおかしな話ではなかろうかと問いたい。


 しかもうちからドゥナー魔法学院まではおよそ歩いて一時間ほどの距離であるから、朝ご飯や準備の時間を鑑みて朝七時には起きていなければならなかった。



 これで往復二時間の無駄時間である。一日は二十四時間しかないというのにそのうちの二時間をただ歩くだけの時間に充ててしまうのはもったいないことこの上ない。しかし、本などを読みながら歩くと危ない。だから上手く利用するためには暗記が一番良い方法なのだろう、と思ったが、やりたくないので却下である。



 なんとか魔法で徒歩以外の移動方法を確立してやる。もちろん勉強はなるべくしないで。



 俺は今日の一時間をカサブランカとの関係をどう構築していくかについて考える時間に充てることにした。昨日はプライドの高いお嬢様になんとか上手く取り入って仲良くなるための布石を形成することに成功した。



 予想外だったのはあまりにカサブランカが人とのコミュニケーションに慣れていなかったことである。彼女のためを思えば俺が彼女と周りとの緩衝材になって、上手く周りとやりとりが出来るようにしてやればいいのだろうが、俺の計画を達成するためには都合が悪いので、彼女には俺以外に味方がいないと誤認してもらった方がいいかもしれない。



 まだ数度会話を交わした程度だから決めきれない部分も多いが、まずは彼女について深く知る必要がありそうである。



 あーだこーだと妄想レベルのことにまで考えを発展させかけたところで学院についた。一生着かなくてもいいくらいだけど。



 校門に入る前、あまりの不快感からこみ上げてきた吐き気を抑えるように口を手で覆い、揺れ始めた視界を閉じて足早に学院の敷地内に入った。この感覚を毎日味わわなければならないのかと思うとげんなりしてきた。



 今日は授業がないのが救いか。その代わりゼミでの交流会や、必修、選択授業の説明などがある。その後、各自受けたい授業を選択するのだが、今週中はどの授業も第一回の授業をオリエンテーションとして用いており、シラバスを配って授業概要を説明する。そして第一回に関しては出席点が取られることもない。



 つまり別に帰ってしまっても何の問題もない…………のだけど、その後が大変になるだけだ。二週目に入るころには単位選択を終えてしまわなければならない。シラバスもなければ、授業概要もしらないとなれば、自分が受けたい授業を選択することは困難だ。



 だから歯を食いしばって出来るだけ多くの授業を受けておくのが最適である。その中で別のゼミの友人が出来ることだってある。学期始めに必要なのはより多くの情報なのである。ここをサボれば間違いなく後に響く。更に『宿題やらない大作戦』の三、先生と仲良くなることにも繋がる。この一週間を耐える必要があった。



 そして授業が終わればサークルの見学に行くつもりだ。『宿題やらない大作戦』の二、頼れる先輩の確保に向かう。ここで選ぶのは真面目な先輩ではダメだ。真面目な先輩は真面目に授業を受けるから、楽な授業はどれかなどという視点で見ていない。つまり、出来るだけ不真面目ではあるが、最低限単位を取っているような先輩が好ましい。これから一週間を使って見定めていくつもりだ。



 さて、今日はまず担当教員であるライラ先生の研究室に集合するよう、昨日のうちに指示があったため向かう。現在時間は指定された時刻の三十分ほど前である。丁寧にノックをし、中からどうぞ、の声が聞こえたため中に入る。



「おはようございます。失礼致します」


「おはよう、マツバ君。好きな席にどうぞ、まだ時間はあるから好きにしていてちょうだい」



 部屋の奥にある積み重ねられた本と書類の山の向こうからライラ先生の声が聞こえてくる。今にも倒れてきそうで怖いけれど、どうやら絶妙なバランスを保っているようで、ぴくりとも揺れない。あと、ライラ先生、俺のこと見てないはずなのになんで俺って分かったの。声?



 好きな席に、と言われたため何処に座ろうかと考えて、先客が二人いることに気づいた。向かい合わせに置かれた長机のちょうど対角線上になるように座っている。手前にはカサブランカお嬢様、奥にはエトさんである。互いに互いの存在を無視するように座っているようにしか見えず、居心地が悪いことこの上ない。



 じゃあ、俺もどこかの頂点に座ろうかな、と思って移動しようとしたところ、カサブランカ嬢が隣の席を軽くバンと叩いた。どうやら俺の座る場所は決められていたらしい。おとなしく彼女の隣に座ることにしよう。

久しぶりに書く時間が取れました。ブックマーク、評価ありがとうございます。地道に気ままに頑張ります。応援よろしくお願いします。

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