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見ただけで理解できるから天才なんです

「で、助けるって言ったってあたしは何をすればいいわけ?」


「彼の話を聞いてアドバイスをしてあげてほしいのです」


「ふん。そんなことでいいんだ。それは別に良いけど、あたし無償の施しって嫌いだから、何かしら尽くしてもらうけどね~」


「それは彼と交渉してくださいね。ではマツバくん、後は彼女と話してみてください。大丈夫、リヴァディアさんは良い子ですから」


「は、はい。分かりました」



 そう言い残してライラ先生は教室を後にした。え?置いてけぼり?



「そんでそんで、どうやったの~?さっきの魔法!」



 彼女はお構いなしといったところで話を続ける。その際、何も気にせずに机の上に座るものだから、何がとは言わないが、ちらちらと見えかけそうになって大変ありがた…………いや、目に毒である。



 さて、正直にタネを話してもいいものなのか。でもぶっちゃけ俺がやってることはそんなに難しい話ではない。不燃性の気体で炎の周りに膜を張っているだけなのだから。まあ、話してしまっても大丈夫でしょ。



「炎があったじゃないですか」


「うんうん!」


「その周りをですね、燃えない気体で囲むんですよ」


「…………燃えない気体?」



 なるほど、前世の化学知識、それも難しいものではなくて中学生の理科で習うような内容で、空気中のおよそ80%ほどを占める気体である窒素は無味無臭かつ無色であることは当然の事実であるけれど、こちらの世界ではどうやら常識ではないらしい。



 ではどう説明したらいいものかと考えて、一つ実演をしてみることにした。



「えっとじゃあ見ててください」



 机の上に無造作に置かれていたガラス瓶を手にとって、その中に魔法で火を起こす。そのまま瓶の口を蓋で閉める。すると当然酸化反応が起こり、瓶の中は真空状態になる。すると火は自然と消えた。



 ちなみに魔法で炎を起こしたわけだけれど、一体何が燃えているのかは不明である。魔法だから非現実な所は許して欲しいところだ。



「消えた!」


「はい、そしてこの中に残ったのが燃えない空気というやつです」



 正確には今回紹介したのは二酸化炭素の実験であって窒素ではないけれど、まあ不燃性という意味では同じである。特に未知に触れる彼女にとってはどちらでも一緒であろう。



「…………なるほどなるほど。つまり空気には燃えるものと燃えないものがあって

君はそのうち燃えないものだけを集めることができる、と…………?」


「まあ、そうですね」



 どうやってるかっていうのはぶっちゃけ感覚である。俺は窒素という気体をしっているから、なんとなく窒素集まれ~って願いながら魔力を放出しているのだ。そしたらなんか出来た。理屈とか調べたこともないし。



「え~っとこんな感じかな?」



 彼女の前に炎が生まれる。更にその周りを空気が纏っていくのが分かる。気体が動くことで風が発生しているからだ。一度見ただけで再現できるってマジ…………?俺ボヤを出せるようになるまで五、六年かかってるんだけど…………



 しかし、そう上手くはいかないようで、所々から炎が漏れ出して、最終的にぐちゃぐちゃになってしまった。漏れた炎は床に垂れて、危うく火事を引き起こすかと身構えたが、彼女が素手で回収した。嘘だろ!?



「何をやって…………!?」


「手の周りに魔力纏わせてるからだいじょ~ぶ!ちなみにさっきも同じことしただけだよ~」


「人騒がせな…………」


「上手くいかなかったな~。なんでだろ。なんか違うんだな~」


「そりゃ、俺はここまで五、六年くらいかかってるわけですし、最初から同じことされたら嘆きますよ」


「なるほど」



 とんでもない生返事である。彼女、俺の話をきちんと聞いているか怪しいぞ。



 それに目を瞑って、体を前後にゆらゆらと揺らして何かを考え込んでいる様子である。数秒後彼女の体の動きが止まったかと思えば、目をキラキラと輝かせて彼女は言った。



「君、あたしのものにならない?欲しくなっちゃった!」


「いきなり何言い出すんですか!?」


「ほら、あたしって天才だからさ~、魔法界を10年進歩させたわけだけど~。一人だから()()()1()0()()()()進められなかったわけ。だからあたしの言うことを何でも聞く犬が欲しかったんだよね。君、ちょうどいいんだよね」


「そういう言い方されて、受け入れるとでも!?」


「褒めてるのに~」


「どこが!?」



 魔法の天才は代わりに言語能力を母の子宮の中に置いてきてしまったのかもしれない。犬になれ、とはあんまりじゃないか。



「ねぇ、君は理解していないよ。あたしが()()()()()()魔法のことで人を褒めるなんて生まれて初めてのことなんだからさ~。それに一度見た魔法を再現できなかったのだって初めてのことだったし。つまり君はあたしの初めての相手ってことだよ?」


「前半はちょっと嬉しかったけれど最後で全部台無しだよ」


「で、どう?あたしのものになる気はない?」


「残念ですが俺は今のところ誰のものにもなるつもりはありません」


「え~残念。手伝ってくれたらお礼は弾んだのにな~」


「詳しく聞かせてもらいましょうか」



 俺はお金に弱いぞッ!!

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