単位
友達になるつもりだったカサブランカから強烈に敵視されることになってしまった。数分前に時を遡って自分を殴ってやりたい。
ゼミが始まるまでの数十分間は隣を見ることが出来ず、ちくちくと刺さる視線に気づいていない振りをしながら目の前に偶然あったプリントを眺めていた。え~と?水魔法基礎概論のシラバス…………?
[授業名:『水魔法基礎概論』
科目担当教員:ライラ・アルバム
分類:選択授業
単位数:4
科目の要旨・概要:水は我々の生活に欠かせない存在です。飲み水は言うまでもなく、洗濯や炊事など我々の生活を支える基盤として水は重用され続けてきました。水を生み出すことは国を潤すことと同義とも言えるでしょう。本授業を通じて水のありがたみ、そして重要性を正しく認識できるようになりましょう。
水魔法基礎概論では水魔法の使用における魔力の活用方法およびイメージ構築の重要性、使用の注意事項の説明を合わせて実施していきます。ポイントは以下の4つです。
1)魔力のコントロールが上手く出来ている
2)水を生み出すイメージが構築出来ている
3)十分な水量を生み出すことが出来ている
4)水についての十分な知識を持っている
本科目は、第1回目授業において指定教室においてガイダンスを実施します。第1回目のガイダンスには必ず参加してください。履修者多数の場合は抽選による履修制限が行われる可能性があります
成績評価の基準・方法
1)本科目は各授業の冒頭に実施する小テスト及び学期末の最終考査及び、実技テストの点数で80点以上の者にのみ単位が与えられます。
2)出席回数が授業回数の4分の3以上の場合に評価の対象とします。
3)評価項目と配点
実技課題と筆記課題の総計を100点とし、各項目の配点を以下の通りとします。
小テスト 20点
学期末考査 30点
実技テスト 50点
以下、各授業のスケジュールについて説明します。
第一回――――]
やっばこれ。
見るだけで頭がくらくらしてくる。こういうのを見るとやはり俺は学校にまた囚われるのだという気持ちが強く感じられる。吐きそう。
この授業は選択授業ということだし、出来れば避けて通りたいところである。特に毎回の授業でテストが行われるというのが最悪だ。自学に時間を取る必要があるのが明白なのが良くない。
シラバスを見てこれから訪れる未来にげんなりしていたら、続々と生徒が集まってきて、規定の集合時間になり、書類と書籍の山の向こうから、ライラ先生が現れた。
「皆さん、おはようございます。全員集まっているみたいですね」
ライラ先生は柔和な笑みを浮かべて生徒を見渡す。続けて単位の説明を始めた。
「皆さんも知っているとは思いますが、ドゥナー魔法学院では単位制を採用しています。卒業に必要な単位は全部で120。単位の取得を終え、卒業判定試験に合格すれば晴れて卒業という流れになります」
前世における単位制の学校とシステムはさほど変わらないみたいだ。いや、むしろ条件は厳しくなっているだろうか。
「講義の説明に移りますね。我が校で開講される講義には主に二つありまして、それが必修授業と選択授業です。どちらも名前の通りなのですが、必修授業は全ての学生が必ず受けなければならない講義を指し、選択授業は皆さんが受けたいものを自分で選んで受講するものになります」
選択はまだいいんだよ。条件が厳しそうなものは自分ではじいてしまえばいいから。でも必修、お前は許さん。前世でどうしても肌に合わない講義が必修にあって、俺は四回目の再履修でようやく単位を取得した。周りには馬鹿にされたが自分ではどうしようもないのだ。
「基本必修は知識修得を目的とし、選択は実践演習を目的とした講義が多いと思っていいでしょう。人には魔法の属性に適性がありますが、皆さんはおそらくまだ自分が何に向いているかが分からないと思いますから、まずは全ての属性の基礎学問授業を選択するのをオススメしておきます。その後は一つの属性に絞ったとしても卒業単位は取得できるようになっています」
おっと、それは朗報だ。俺はもう火の魔法をある程度使うことができるから、火の魔法の授業を集中的に選択してもいいかもしれない。そうしたら実技の試験で楽が出来るのでは!
その後は開講される講義一覧のプリントをもらって、各自で何を選択するかについて考えておくようにと言われ、ゼミは終わった。他の奴らが教室から出ていくまで、どうやって時間をつぶそうかなと考えていたら、案の定カサブランカに絡まれた。
「どの授業にするの?」
どうやら彼女と同じ講義を受講しなきゃいけなくなりそうである。