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竜の鬼嫁〜そこ退けそこ退けツンデレが通る〜

作者: ジュレヌク
掲載日:2021/09/23


馬車の発達で、国と国の距離が近づいた。


俺の住む貿易大国メガトンには、多種多様な種族が集まり共存している。


元々人族の国だけに、人間が多い。


だから、竜族の俺も含め獣人の多くは、皆、人型をとって生活をしている。


そちらの方が、生活しやすいからだ。


しかし、一目見て種族の特徴は出ている。


俺の場合は、皮膚が薄らと鱗に覆われているし、犬族や猫族は、毛の生えた耳が頭の上から出ている。


彼らのユラユラと揺れる尻尾を見ると、つい笑みが溢れるのは、俺だけじゃないはずだ。


そして、その犬族の一人が、俺の番だったりする。


彼女の名前は、マメ。


想像を絶する『思い込み』の塊だ。


初めて会った時、俺に『喰われる』と信じ込み、ものすごい勢いで逃げようとした。


それを俺が人差し指と親指でつまみ上げてしまったことで、更に、パニックを起こし気を失った。


心配で起きるまで付き添っていると、起きた途端、また、気絶した。


確かに、竜族の俺は、他の獣人と比べても格段に人相が悪い。


一方、俺の番は『シバ』と言う種類の犬族だ。


特に彼女は体が小さく、『マメシバ』と言う希少種の疑いがあるとして、皆が過保護に育ててきた。


皆と言うのは、彼女が所属する冒険ギルド『集める動物の森』のメンバー達だ。


攻撃能力は劣るが、防御能力、情報収集能力に優れた採取型冒険者集団。


彼らに頼めば、手に入らない物は無いと言われている。


彼女を『マメ』と名付けたのも、そこのリーダー『ブルさん』だ。


ダンジョンの奥深くで、おくるみに包まれて、スヤスヤ眠っているところを彼が拾ったらしい。


何故、そんな危ない所に赤子が居たのか?


未だに謎だが、今大事なのは、そこじゃない。


マメは、何を勘違いしたのか、俺を捕食者だと思い込んでいる。


『丸々太らせてから、美味しく焼いて食べるつもりなんでしょ!』


とキャンキャン吠えてくる。


何度違うと言っても、


『騙されないわよー!やーーー!』


と棍棒を振り回す。


チョンと棍棒を摘んで、ポイッと捨てると、この世の終わりのように泣きながら逃げ去るのだ。


ブルさんが、ポンポンと俺の肩を叩いて、



「ドラン、お気の毒に」



と声を掛けてくる。


そう思うなら、仲を取り持つくらいしてくれても良いだろう。


ただ、『集める動物の森』のメンバーは、皆、マメ至上主義者なだけに、泣かす俺は敵らしい。


時々街角で、どこからともなく小石が飛んでくる。


全く気配を感じさせないから避ける事もままならず、地味に痛い。


しかし、アレが、ナイフや爆弾でないだけマシだ。


彼らの攻撃力が低いことに、俺は、感謝するべきなのだろう。































彼女と出会って、半年ほど経ったある日、ブルさんが俺の務める騎士団の屯所に駆け込んできた。



「ドラン、マメが連れ去られた!」



「なんだって?どこのどいつだ?」



「分からない。だが、マメは希少種だからな。悪質な奴隷商なら、喉から手が出るくらい欲しがるだろう」



「くそっ!」



稲穂色のフワフワとした髪の毛に、まん丸な黒い瞳。


つい撫で回したくなる容姿は、万人受けする事間違いない。


俺は、竜型へと変化すると、彼女が拉致されたと思われる現場へと飛んだ。


俺以外は、皆、地を走る。


土埃が舞い上がり、街道に一本の白い線が浮き上がった。


小柄な者ばかりだが、そのスピードと体力は、並外れている。


追いついてくるのも、時間の問題だろう。


一足先に到着した俺は、上空から眼下に広がる森を見下ろした。


しかし、残念ながら、生い茂った枝葉で、地面は、覆い隠されている。


耳を澄ましても、風に揺れるザワザワとした葉擦れの音で敵の気配が読めなかった。


俺は、地面へと降り立つと大きく息を吸った。


番にしか分からない匂いを感じる為に。


二度、三度、意識を集中させて鼻をきかせると、微かに右前方から甘い匂いがして来た。


野苺のような甘酸っぱさと、マンゴーのようなトロリと濃厚な香りが混じっている。


俺にとっては、恋しくて愛しくて、嗅ぎ過ぎると頭からおかしくなりそうなメスの匂い。


惹き付けられる気持ちそのままに、俺は、全力で走り出した。


ドンドンと香りが強くなっていくに従って、焦りも強くなっていく。


何故なら、俺を魅了する香りに混じって、血の匂いがしてきたから。


木を避けるのすら煩わしい。


俺は、鉤爪に気を集めると、目の前の大木を薙ぎ倒して前へ進んだ。


俺の後に出来た道を、犬型に姿を変えて四足歩行に切り替えたブルさん達が追って来た。


もう、彼らも、なりふり構っていられないのだろう。





ウォォーーン





彼らが遠吠えをする度に、ドンドン仲間が増えていく。


その足音が地響きを起こすようになるのに、時間は、掛からなかった。


マメを大切に思う仲間が、更に、別の友人達をも呼び寄せたのだ。


種族を超えた友情が、そこにはあった。


俺は、今まで、彼らに認められていないのかと不安になっていたが、そうではないらしい。


小石を投げくらい、可愛いものだったのだ。


俺は、心強い加勢を受け、更にスピードを上げた。






















「ぎゃー!」



前方から、野太い男の悲鳴が聞こえた。


目を凝らして見ると、マメが盗賊の一人に噛み付いている。


鼻の先に牙を立てられた男は、地面をのたうち回ってマメを引き離そうとしているが、彼女も必死に食らい付いていた。


周りの敵に棍棒で殴られても、離す気配はない。


マメは、両手を後ろで縛られているらしく、これを逃せば、反撃の余地がないとばかりに命懸けなのだ。


どうやら、拉致されたのはマメだけでなく、幼い獣人達が、皆同じようにロープで縛られている。


子供を狙った、悪質な奴隷商のようだ。


マメの攻撃に気を取られていたのか、敵は、俺達の到着に気付くのが遅れた。


俺は、人型に戻ると、姿勢を低くして敵の真ん中に突っ込んだ。


そして、マメを抱えて地面を転がる。


ブルさん達も、各々子供達を保護して敵から距離を取らせた。


一箇所に集められた被害者達は、泣きながら震えている。


その中で、マメだけが、興奮状態でガルルルルと威嚇をやめない。


余程、他の子供達を守ろうと必死だったのだろう。



「マメ、後は、俺に任せろ」



そっと地面に置いてやると、フッと体の力が抜けて俺を見上げて来た。


強面で申し訳ないが、なるべく優しく微笑んでやる。


ブワッとマメの目に、涙が浮かんだ。


殴られた箇所は、擦り傷や打撲になっていて、痛々しいなどという生やさしい状態じゃないのに、



「他の子は?」



と不安げに聞いてくる。



「ほら、周りを見てみろ。形勢逆転だ」



そこで、やっと自分達が『集める動物の森』メンバーに囲まれていることに気づいたらしい。


微かに笑ったかと思うと、そのまま気を失った。


俺の体内で、今、血が沸騰している。


愛しい番を傷つけた報いは、受けてもらおう。








ガォオオーーーーー!







咆哮と共に、俺は、敵へと突っ込む。


剣を一振りすれば、巻き起こった風の刃で離れた場所の敵すら切り裂いた。


だが、楽に死なせてなどやらない。


意識を保ったまま細かく切り刻み、マメの恐怖と痛みを味合わせてやろう。


ブルさんが、



「おぇー、グロ過ぎだ!皆、子供達の目を閉じさせろ」



と叫んだって気にしない。


指を。


耳を。


鼻を。


目を。


足を。


腕を。


徐々に失っていく気分は、どうだ?



「た、たすけ…」



俺に縋りつこうとする男の喉笛を切った。


ヒューヒューと空気が漏れる音がして、声を出せなくなったようだ。



「えげつねぇ」



誰かが叫んだが、自業自得だろう?


奴隷商を生業とするコイツらだって、今まで命乞いをしてきた人間を助けたことなんてないはずだ。


それに、竜族の男が愛情深いのは有名な話だ。


過去に、番を殺された竜族の男が、たった一人で一国を殲滅したことだってあった。


この半年、マメを追いかけ回し続けた俺のことは、街では知らぬ人間はいない。



『恋に狂ったバーサーカー(狂戦士)』



って渾名されるくらいだからな。


なのに、彼女を狙ったと言うことは、竜の番という物珍しさに目をつけたと言うこと。


最初から、お前らは、俺に喧嘩を売ってたんだ。


なら、買ってやろうじゃねーか!



「親兄弟親類縁者まで、全員殲滅しやる!地獄で待ってろ!」



俺が、剣を振り上げ首領らしき男の頭に振り下ろそうとした瞬間、



「ドラン、お座り!」



緊迫感漂う戦場で、俺の可愛い番の声が響いた。


俺は、慌てて剣を放り投げて正座した。


番には、逆らってはいけない。


先祖代々受け継がれた家訓だ。


どうやら、やり過ぎた俺を心配して、ブルさんがマメを叩き起こしたようだ。


こっちを睨むマメの目が怖い。



「ドラン、小さな子供達の前で、なに殺戮繰り広げてんの」



「す、すまない」



「騎士団て、私闘は禁じられてるわよね?アンタ、辞めさせられるわよ」



「そ、それは困る」



「それに」



「それに?」



「アタシ、怪我してんだけど」



「は?」



「歩けないよの。ほら」



両手を差し出され、俺の頭の中は、真っ白になった。


これが世に言う『ツンデレ』か?


口を尖らせ、視線を地面に向けながら、手をニギニギしているマメの愛らしさたるや!!



「ご、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん」



俺は、地を這ってマメに近づき、そーっと抱きしめた。


小さくて、柔らかくて、良い匂いがする。



「アンタ、返り血浴び過ぎ。臭い。早く帰るよ」



「了解!」



俺は、翼を広げるとマメを抱きしめたまま空へ舞い上がった。


向かうは、『集める動物の森』が拠点とする西のギルド。


医者もいるし、風呂もあるし、マメの寝床もある。


唖然とする仲間と地面に転がる敵を無視して、俺は、全速力で一直線に空を飛んだ。

















「最悪」



不貞腐れるマメを前に、俺は、首を垂れる。


マメ拉致事件から、一週間。


彼女の体は、未だに包帯が巻かれ、痛々しい姿を晒している。


だが、問題は、そこではない。


あの死闘の中で、半狂乱の俺を『お座り』の一言で収めたマメは、今、街で『鬼嫁』と呼ばれている。


まだ、付き合ってすらいないのに『嫁』。


俺としては、嬉しい限りだが、マメの不機嫌は治らない。



「なんで、『鬼』なのよ!」



自称可憐で可愛い皆のアイドル『マメ姫』なのに、『鬼』呼ばりとは腑が煮えくりかえるのだろう。


しかし、『嫁』の部分は、気にならないのか?


チロリとマメを見ると、バツが悪そうに視線をそらす。



「マメ……好きだ」



「知ってる」



「結婚してくれ」



もう、何千回と繰り返してきたプロポーズ。


断られ慣れた俺だけど、やっぱりマメが良い。


黙り込んだマメの前で、俺は、腹を上にして床に転がった。


所謂、服従のポーズだ。


あまりにふられ続ける俺を見かね、ブルさんが、こっそり教えてくれた。



「シバ犬族の女は、警戒心が強くて頑固者だ。しかし、一旦気を許すと、あれだけ誠実で愛嬌のある種族もいない。威嚇されたら、逆らうな。喧嘩が終わらねぇ。それと、過度のスキンシップも好きじゃねぇからな。お前は、近寄り過ぎなんだ」



確かに愛し過ぎて、ついつい抱っこしたり頬擦りしたりしていた。


その度に怒られ、反省するの無限ループ。


もう、同じ過ちは、繰り返すまい。


俺は、床に転がったままマメを待つ。


巨体をなるべく小さくして、彼女を見上げるとびっくりし過ぎて瞳が落ちそうなほど目を見開いていた。



「アンタ、プライドは、ないの?」



「マメが手に入るなら、ドブに捨ててやる」



「なに、それ…」



マメは、何故か泣きそうな顔をしていた。


そして、ゆっくり俺に近づくと小さな手を俺の頭を撫でた。



「アンタ、本気?」



「あぁ」



「アタシ、面倒くさいよ」



「知ってる」



ムスッ。



マメの不機嫌に拍車がかかったが、殴られたり蹴られたり逃げられたりすることはなかった。


それどころか、俺を撫でる速度が速くなる。


照れ隠しか?



「私、鬼嫁らしいわ」



「後で、噂を広めた奴を全員殴ってくる」



「いや、それ、余計嫁の貰い手なくなるから」



マメの眉が、情けなく下がる。



その表情、可愛い以外のなにものでもないのだか?



「俺が貰ってやる」



「返品不可なんだけど」



「永久就職、三食昼寝付きでどうだ?」



「乗った」



マメは、モソモソと俺の体をよじ登ると、胸に頬を当てて目を閉じた。


いや、急にデレられると心臓がもたない。


激しく鼓動が打ち過ぎて、痛みすら感じる。


そんな俺を無視して、



「じゃぁ、お休み」



マメは、俺の胸の上を寝床に決めたようだ。



「今から寝るのか?」



「別に、良いでしょ?」



「ま、まぁな」



俺は、マメが落ちないように、両手で囲いを作ってやった。


少し、空気が冷たい。


秋が近づいてきているんだろう。


マメは、体が小さいから体温を保つのが難しい。


俺は、この冬、喜んでマメの布団になってやろうと心に決めた。



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