第8話
第8話
ニムがレイバッハ王国の王都に着いたのは、老婆を看取った2週間後のことだった。そして、その足で冒険者ギルドを訪れたニムは、冒険者登録を行った。
「はい、登録確認しました。ニ厶・アデリアンさん。職業は「占い師」ですね」
受け付け嬢の口からから出た職業名に、
「は?」
ニムは目を瞬かせた。
「それにしても珍しいですね。占い師を生業にしている方が、冒険者になろうとするなんて」
女性は、長年冒険者志望者を受け付けていたが、こんなことは初めてだった。
「いや、オレは元衛兵だから、騎士とは言わねえけど、職業は戦士のはずなんだけど?」
申請書にも、確かにそう記載したはずだった。
「え?」
受け付け係の女性は、驚いて登録内容を再確認した。
「いえ、先ほど行なっていただいたジョブ判定では、確かに「占い師」となってますけど」
「てことは」
ニムは、背中に背負った神の指針を見た。
コイツの仕業か。神の指針か何か知らねえが、どうあってもオレに占い師をやらせてえみたいだな。
「しかも、どういうわけか、転職もできないみたいですね。こんなことは、普通ありえないんですけど」
受け付け係は困惑した。
「あー、それは、もういいや。理由は見当がついたから」
無駄なことに、余計な労力は割かない。それがニムの主義なのだった。
「んなことより、あそこにあるのが依頼だろ? 登録済ませたんだから、オレも受けていいんだよな?」
「は、はい。ランク制限はありますけど」
「んじゃ、ちょっくら見てくらあ。ありがとよ」
ニムはクエスト掲示板に歩み寄ると、依頼内容を見て回った。そして、1つの依頼書に目を止めた。それは、ある村に出没するという魔獣の討伐依頼だった。
受け付け係の話によると、その魔獣は神出鬼没で、被害は甚大だが、いまだ退治はおろか、発見すらままならないということだった。
「ふーん。そういうことなら、こいつにするか」
「いいと思いますよ。今、その魔獣を退治するために、国から討伐隊が出ているはずですから。もし、あなたが占いで、その魔獣の居場所を突き止めることができれば、王家からも謝礼が出るかもしれませんし」
「討伐隊が出てんのかい?」
「ええ。でも、それがむしろ村人たちを困らせているようなんです。魔獣が見つからない討伐隊の方々は、村に居座って、毎日タダ飯を食らっているようで。実際、村人たちは、魔獣より討伐隊のほうに迷惑してるって話ですから」
「なるほどねえ」
ニムは、無精髭の生えたアゴを撫でた。
そして数秒考えた後、この依頼を受けることにしたのだった。