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幻想郷バトルトーナメント!

作者: 坂上儚月

バトルトーナメント開始!

ある晴れ空の日の事、一人神社の縁側でお茶を飲みながら空を見上げていた霊夢は珍しく魔理沙が来ない事に首を傾げていた。何時もならもうとっくに来て、弾幕ごっこをしようなんて言っているはずなのだ。


「そう言えば魔理沙だけじゃなくて華扇も見てないわね...何かあったのかしら?...流石にそれは無いわね。最近暇だからこうも誰も来ないと疑ってしまうわね...はぁ。」


一人ため息混じりに呟いていると、突然何処からともなくから爆発音の様な音が聞こえてきた。


「!?」


霊夢は驚き反射的に立ったが、その後は特に何も起こらなかった。しかし、何だか嫌な予感がした。


「さっきの爆発音…何だか地面から聞こえてきた様な…もしかして、さとりの所にいる地獄烏がまた何かしでかしたのかしら…仕方ない、大事になる前に様子でも見に行くとしますか。」


霊夢は正直面倒だと思いながらも、音の発信源であろう地底に向かっていくのであった。しかし、その時の霊夢はまだ知らなかった…地底で起こっていたある事に巻き込まれる事を。



_____________________________________________



「とりあえず旧都に来てみたのは良いけど...これは一体...?」


霊夢は無事に(途中パルスィに攻撃されたが、難無く撃退した)旧都に辿り着いたが、そこで見たものは旧都のど真ん中に大きな建物が出来ていた。


「一体何時の間にこんな建物が出来ていたのかしら...」


霊夢が離れた所からその建物を見ていると、ふと後ろから気配を感じた。勿論霊夢にはその気配の持ち主を知っていた。


「珍しいわね。あんたが旧都に来ているなんて。」


「正直すぐにでも帰りたい所なんだけど...無理矢理エントリーされちゃったから帰れないのよね...」


「えんとりー?何よそれ。」


「つまりは個人戦の勝ち抜きバトルの参加をする所ですよ。霊夢もこのバトルに参加する為に来たのでは無いのですか?」


「違うわよ。神社でゆっくりしていたら地底から大きな音が聞こえてきたから様子を見に来ただけよ。」


「あら、そうなの。だったら勇儀や萃香に見つからないうちに早くここから離れた方が良いわよ。見つかったら強制参加させられるからね。」


「...それを早く言ってよ。もうこっちに来てるじゃない...」


霊夢がそう言うと華扇の後ろから二人の人影が近付いてきた。


「おーい、そろそろお前さんの出番だぞー!」


「ん~?華扇以外にも誰かいるぞ~?」


「おや、本当だねぇ。ありゃ...博麗の巫女じゃないか!こんな所で何してるんだい?もしかして道に迷ったかい?」


「そんな訳無いでしょうが。ここから大きな音が聞こえてきたから調べに来たのよ。」


「ん?爆発音?ああ!そりゃ私だな!さっきの戦いで対戦相手をぶっ飛ばした時に加減出来なくてな!」


そこまで言うと勇儀は豪快に笑った。すると萃香がこちらが予想していた事を勇儀に言い始めた。


「そうだ~。勇儀~霊夢も参加させないか~?」


「お、そりゃ良い考えだねぇ!どうだい!参加していくかい?」


勇儀は霊夢にそう聞いてきたが、目の方は確実に参加させると言っていた。


「...はぁ。どうせ強制的に参加させるつもりでしょう?」


「やっぱり分かってんじゃあないか!それじゃ、こっちに来てくれ!と言っても次の戦闘までは時間がまだあるからどっか適当にぶらついてから来てくれよ!」


勇儀はそう言うと大きな建物に向かって歩いて行った。萃香も勇儀と一緒に建物に向かって行った。


「…それで、やっぱり参加するのですか?霊夢。」


華扇は勇儀達の姿が完全に見えなくなると霊夢にそう聞いてきた。


「そりゃ参加しないと行けないでしょうね。じゃないと神社まで来そうだからね。」


「確かに有り得そうですね。では、私は先に行っていますよ。確か魔理沙も来ているので探してみてはどうでしょう?」


「魔理沙も来ているのね...全く、何しに来ているんだかあの馬鹿は。」


「確か地霊殿に用事があったらしいですよ?」


「地霊殿に用事ねぇ...」


霊夢は地霊殿に魔理沙が求めるような物が何かあったか考えたが、何も思い浮かばなかった。


「まあ良いわ。適当にぶらついていたら何時か見つかるでしょ。」


霊夢はそう言うと旧都の様子見がてらにあの大きな建物に向かっていった。


「しかしまあ、相も変わらずここは賑やかよね...旧都の妖怪達は疲れを知らないのかしら?」


霊夢は道中にある屋台や道具屋等に適当に入りながら時間を潰していた。しかし、地上とは違い地底特有の珍しい物などが多くあるのでそこまで退屈はしていなかった。そして、霊夢が何気に入った古道具に見覚えのある後ろ姿を見つけた。


「ん?あの後ろ姿は…魔理沙かしら?」


霊夢が魔理沙に近付こうとしたら、何やら魔理沙が店員と話している様だったので少し様子を見てみる事にした。


「いや、だからこれ以上は安くは出来ないんだよ。」


「えー!何でだよ!」


「これでも相当ギリギリまで安くしているからだよ。それに、さっきも安く売ったばかりじゃないか。これ以上安くすると旧都支店が持たなくなるからね。」


「うぐぐ…ケチー!」


「誰がケチだよ。全く、何なら朱鷺子に頼んで今まで売った商品を回収しても良いんだが?」


「ぐっ…それは困るな…」


「だったらこの値段で終わりだよ。」


「ちぇっ…」


物陰に隠れていた霊夢は会話を聞いていて、店員の声がどこかで聞いた事のある声だと思っていた。


「あの声どこかで聞いた事があるわね...それにさっき朱鷺子の名前が出てきたし...もしかして霖之助さん...?」


霊夢が隠れている物陰からは、魔理沙の姿は見えていても店員の姿は見えなかった。なので、隠れるのを止めて店員の正体を確認しに行くことにした。


「こんな所で何をしているのかしら?魔理沙。」


「ん?あれ!?霊夢じゃないか!霊夢こそどうしたんだ?」


「ちょっと野暮用で来たのよ。」


「おーい、魔理沙!とりあえずさっきの品を持ってきた...って、霊夢じゃないか。どうしたんだい?こんな所で。」


「あら、霖之助さんじゃない。って事はここは霖之助さんのお店だったのね。」


「ああ、そうだよ。ここは香霖堂の旧都支店なのさ。地上じゃ手に入らない様な品もあるからここにも店を構えたのさ。」


「そうだったのね。でも地上にある香霖堂は留守にしていても良いの?」


「そこは大丈夫さ。朱鷺子に店番を任せているからね。と言っても客なんて紅魔館のメイド長さんか魔理沙と霊夢ぐらいしか来ないけどね。」


霖之助はそう言うと椅子に座り横に置いてあった刀を手入れし始めた。


「ん?その刀...ただの刀じゃないわね?」


「流石霊夢だね。そう、これはただの刀じゃないよ。これは天叢雲剣と言って、能力を持っている刀なんだよ。」


「へえ、そんな刀も持ってたんだな!」


「まあね。ただ、この刀は使う者によってはとてつもない力を発揮するんだよ。」


「ふーん、ちょっと貸してもらっても良いかしら?」


「ん?別にいいけど…その刀は霊力の強い者が持つと自我を乗っ取られかねないから気を付けて。」


「大丈夫わよ。いざとなれば魔理沙が何とかしてくれるでしょ。」


霊夢はそう言うと天叢雲剣を霖之助から受け取った。すると、刀は眩い光を放ち始めた。


「えっ!?ちょっ...!」


「何!?」


「霊夢!?」


魔理沙と霖之助はあまりの眩しさに目をつぶってしまった。二人が再び目を開けると、そこには変わらずに立っている霊夢がいた。


「れ、霊夢!大丈夫か!?」


魔理沙は霊夢に急いで駆け寄った。


「…あら?何ともない…」


「大丈夫かい霊夢!」


「え、ええ…特に異変は感じられないわね…何だったのかしら…」


「そうか…全く何だったんだ?今まであの刀を手入れしていたが、あんな事は初めてだ。」


「…あ、そう言えばあの刀の能力は何なのだぜ?」


魔理沙が霖之助に刀の能力を聞くと、霖之助はサラッと一言。


「ん?あれは「天下を手に入れる程度の能力」を持っている刀だよ。」


「て、天下!?」


「サラッと言っているけどそれ結構な物じゃない!?」


「そうかい?僕は天下とかには興味が無いからね。」


「そう言う問題じゃなくて…もしその刀を他の誰かが手に入れて見なさい!そうなれば幻想郷を乗っ取ろうなんて輩が現れるでしょう!?(主に天邪鬼とか。)」


「ははは。その点に関しては大丈夫だよ。」


霖之助はそう言うと持っていた天叢雲剣を再び元の場所に戻した。


「どうしてそう言いきれるのよ?」


「最初に言ったと思うけど、この刀を使う者によってはとてつもない力を発揮するんだよってね。」


「確かに言っていたけど…それがどう関係するのよ?」


「霊夢。僕の能力を忘れたかい?」


「え?霖之助さんの能力...あ。」


「そう。だから僕はこの刀を自在に使いこなす事が出来るんだよ。つまりはこれを奪いに来ても僕が追い返すって事だよ。」


霖之助は笑いながら棚に直していた本を一冊取り出して読み始めた。


「そう言えば霖之助さんの能力の事を忘れていたわ…」


「えーと、良くわかんなかったんだが?」


どうやら魔理沙だけは理解していなかったようだ。霊夢は面倒だと思いながら魔理沙に説明をし始めた。


~霊夢説明中~


「あー、なるほどそう言う事か!」


「全く…何で二回も説明しないと行けないのよ…」


「ははは!悪ぃ悪ぃ!」


二人がそんな会話をしていると、霖之助が先程の刀を腰に差して出掛ける準備をし始めた。


「あら、そんな刀を持って何処かに出掛けるの?」


「ああ。ほら向こうにある大きな建物があるだろう?あそこで行われる勝ち抜きの戦闘に参加するんだよ。と言ってもあの鬼達に半ば無理矢理参加させられたんだけどね。」


「え?霖之助さんもバトルに参加するの?」


「そうだよ?って、ん?霖之助さん”も”って事は霊夢も参加するのかい?」


「ええ。霖之助さんと同じで勇儀達に無理矢理参加させられたのよ。」


「なんだ。霊夢も参加するんだな!」


「え?魔理沙もバトルに参加するの?」


「そうだぜ!だって楽しそうじゃないか!」


「魔理沙は相変わらずだね。とりあえず皆同じ場所に行くみたいだから一緒に行くかい?」


「そうね。一緒に行きましょう。」


そうして霊夢と魔理沙と霖之助は店を出て、あの大きな建物に向かっていった。



_____________________________________________



「…思った以上にいるわね...」


「と言うか想像を遥かに超えているんだが...」


「これは...僕には結構不利な気がしてきたんだけど...」


三人は大きな建物に到着したが、その光景に絶句していた。バトルをしに来た者達は有に100は超えており、戦闘をする場所はかなり広く空を飛びながらの戦闘じゃないとかなり疲弊しそうな場所であった。


「お!よく来たね!こっちに来てくれ!」


三人が絶句していると、後ろから勇儀の声が聞こえた。三人が振り返ると、そこでは団体戦のエントリーが行われていた。


「お~道具屋の店主も来てくれたみたいだね~」


「お、本当だねぇ!戦闘には向いていないと思っていたんだがな!」


二人は笑っていたが、霖之助はどうも早く帰りたいと言っている顔をしていた。


「あー、とりあえずさっさと始めない?早く帰って煎餅食べたいから。」


「おっと、悪い悪い。それじゃあこの箱から一枚紙を取ってくれ。」


「分かったわ。」


霊夢と魔理沙と霖之助はそれぞれ紙を箱から取り出した。


「私は...一番見たいね。」


「お、十番か。」


「僕は十三番だね。」


「決まったようだね。それじゃあ、これが対戦表だよ。ついでにルールを説明するかね。」


勇儀は三人に対戦表を渡し、バトルのルールを説明し始めた。


「まずはこのバトルは二人で1チームのメンバーになっている。そして、戦闘は弾幕とスペルカードだな。勿論武器の使用はありだ。勝利基準は相手が二人共気絶するか、降伏するかの二択だな。」


「なるほどね。さて、ルールも分かった事だし誰が一緒なのか...って、何これ!?」


霊夢が対戦表を見た途端に大声を出したので、魔理沙と霖之助は吃驚してしまった。


「ど、どうしたんだぜ?霊夢?」


「どうしたもこうも、対戦表を見てみなさい!」


二人は言われた通りに対戦表を覗いてみた。そこに書かれていたのは...


一戦目

1.霊夢、早苗チーム

VS

2.魔理沙、サニーミルクチーム


二戦目

3.天子、紫チーム

VS

4.藍、橙チーム


三戦目

5.レミリア、咲夜チーム

VS

6.美鈴、妖夢チーム


四戦目

7.霖之助、にとりチーム

VS

8.妹紅、輝夜チーム



「...これはまた厄介な奴らばかり集まっているな...」


「と言うか僕の対戦相手って不老不死じゃないか!?」


「いやそれ以前に何で紅魔館の奴らと天界、それに永遠亭の奴らも来ているの?!それに紫やら幽々子達も!」


「ああ、そいつらは何処から聞いたか知らないがこのバトルに興味があるから参加するって言ってきたな。」


「全く...何考えているのか分からないわ…」


「同感だぜ…」


「これは…もう帰りたいんだが…しかしここまで来たからにはやらないと行けないし…はぁ…」


三人はそれぞれ頭を悩ませながら指定された選手の控え室に向かった。



_____________________________________________



「さあさあ、やってまいりました!!今回は司会を努めさせてもらいます、稗田阿求と!」


「同じく本居小鈴です!」


何処からともなく自己紹介の声が大音量で聞こえてきた。勿論、霊夢はその二人の名前を良く知っていた。


「…なんであの二人も旧都に来ているのよ!?」


「そいつ等も何処かで噂を聞いたみたいでね~興味があるから来たんだってよ~」


霊夢が二人の方を見上げていると、ふらりと相変わらず酒に酔っている萃香が説明してくれた。


霊夢は若干呆れながらも後で二人には説教の一つでもしないといけないなと考えた。じゃないとまたこう言った事に首を突っ込みそうだからだ。


「さあ、まず最初のメンバーは…博麗神社の巫女、博麗霊夢さんと!」


「妖怪の山で霊夢さんと同じく巫女をしている奇跡の現人神、東風谷早苗さんです!」


「次にこのお二人と対戦するのは、魔法の森に住んでいるパワータイプの魔法使い、霧雨魔理沙さんと!」


「悪戯好きの光の三妖精の一人、サニーミルクさんです!」


「では、呼ばれた方々前へ!」


阿求のその一言で霊夢、早苗、魔理沙、サニーは広大な戦場となる場所の中央に集まった。


「まさかあんたと組むことになるとは思わなかったわよ。早苗。」


「まあまあ、たまには良いじゃないですか♪」


「お、悪戯好きの妖精と一緒なんだな。」


「魔理沙も人の事言えないでしょ。」


四人はそれぞれの一言を呟いて相手と正面切って構えた。


「さあ!それでは時間です!それでは…開始!」


小鈴が言うや否や霊夢と魔理沙は瞬時に空へと飛び、弾幕勝負をし始めた。


「へぇ、やっぱり考える事は一緒なんだな!」


「そりゃそうよ。あんたと弾幕勝負を何回したと思っているのよ。考えなくても身体が勝手に動くのよ。」


霊夢は魔理沙の激しい弾幕の雨を掻い潜りながら隙間を見つけては霊夢も弾幕を打ち出していた。


「いや~、霊夢さんと魔理沙さん結構激しく戦っていますね~」


「そんな事よりこっちも戦わなくても良いの?暇でしょうが無いんだけど...」


「それもそうですね。では私達は地上戦でやりますか?」


「私はどっちでも良いよ。」


「じゃあ、地上戦でやりましょう。と言うか空では出来なさそうですしね。」


「確かにそれもそうね。それじゃあ、行くよー!」


早苗とサニーも瞬時は離れて距離を取ると、早苗が先制攻撃を仕掛けた。


「まずはこれで!奇跡「白昼の客星」!」


早苗がスペルカードを唱えると何処からともなく光の光線がサニーに向かって降り注いだ。


「忘れているようだけど、私は光の三妖精!そして私は光を屈折させれるのよ!虹光「プリズムフラッシュ」!」


サニーは早苗のスペルカードを難なく自身のスペルカードで受け流した。


「妖精と言えども中々やりますね!」


「こっちは散々霊夢と魔理沙に理不尽な攻撃ばかりされていたからね!自然とそれで強くなってるのよ!」


サニーは自信満々に言っていたが、傍から聞くと暴力受けてそれで耐性が付いただけなのでは?と勘繰ってしまう。


「…と、とりあえず休んではいられません!こちらも霊夢さん達に負けないぐらいの弾幕勝負をしましょう!」


「言われなくても!」


霊夢と魔理沙。早苗とサニー。この一見すると普通に見える組み合わせだが、お互いに弱点を知っている組み合わせとなると勝負は中々つかない。勿論、早苗とサニーの面識はほぼ無いに等しいが、早苗は光り輝くスペルカードを使い、サニーは光を屈折させてスペルカードを受け流す。霊夢と魔理沙は面識もあり、異変解決組だ。勿論、お互いの強さは知っている。知っているからこその互いのスキを狙って戦うので勝負がつきにくい。そしてこの戦いは相手が気絶するか降伏するかの二択のみ。互いに全力で望まなければ勝ち目も無い。




~霊夢&魔理沙side~




「やっぱり強いな霊夢は!」


「あんたこそ前より強くなったんじゃない?」


霊夢と魔理沙は上空にて激しい弾幕をぶつけていた。然る事乍ら、このバトルを見に来た妖怪達をも魅了してしまう程の美しいと言える弾幕勝負だ。しかし、二人共未だに全力を出していないのもまた事実。


「でも、強くなったからってスキを見せるのは異変解決組としては失格よ?霊符「夢想封印」」


霊夢は弾幕を綺麗に避けて魔理沙の真横に素早く移動すると、魔理沙に向けてスペルカードを放った。


「スキなんて見せてないぜ!星符「サテライトイリュージョン」!」


魔理沙も霊夢に素早く向くとスペルカードを放った。二人のスペルカードはほぼ互角の威力でお互いのスペルカードを相殺させた。


「やるじゃない!でもまだ行くわよ!神霊「夢想封印 瞬」!」


霊夢は先程の夢想封印よりも更に速いスペルカードを魔理沙に放った。


「さっきのやつよりも速い!だけど私も負けてられないぜ!恋符「マシンガンスパーク」!」


しかし、魔理沙も負けじと懐から大量のミニ八卦炉を取り出してスペルカードを放った。すると、大量のマスタースパークが霊夢の夢想封印を一掃した。


「まさかここまでやるとはね…」


「そりゃそうだ!努力に勝るものは無いぜ!」


「全くあんたは…良いわ。それならこちらも本気を出してあげるわ。でも下手して死んでも知らないからね?」


そう言うと霊夢は頭に付けていたリボンを取り外した。すると、霊夢の様子が徐々に変化していくのが分かった。雰囲気は先程よりも殺意を帯びたかの様に寒くなり、身体のあちこちからは呪詛の文字の様なものが浮き始め、更には髪の毛の色も白銀に変わっていった。


「な…何だそれは?!雰囲気がさっきとはまるで違う…!」


「…さあ、魔理沙。待たせたわね。これが私の本気の力…禍をその身に纏いし聖とは正反対の力…禍なる者…博麗の歴史の中で最も残虐で非道にして無慈悲だった者の深淵なる闇の力…」


霊夢は持っているお祓い棒に力を入れると、その形は徐々に変えていき、その形は異形と言える程のお祓い棒に変化した。


「さあ、魔理沙も本気を出さないと…本当に死んでしまうわよ…?」


「くっ…良いぜ…わたしも本気を見せてやる!」


そう言うと魔理沙は指に付けていた指輪を取り外した。すると、魔理沙の魔力が一気に解放され、全身に黄色の魔力のオーラが滲み出て、首には魔力で形成されたスカーフの様なものが出現していた。


「膨大過ぎる魔力を抑えていた指輪…これを外したからには普通の弾幕でもかなり危なくなるぜ?」


「それぐらいが丁度良いわよ。こちらも殺す気で行くから…!」


霊夢と魔理沙は少しの間お互いを見据えていたかと思うと、一瞬にして姿が消えてしまった。すると、何も無い空間から攻撃のぶつかる衝撃波が出ていた。他の妖怪達は何がどうなっているか分かっていなかったが、華扇や紫といった実力のある者達はどうなっているのか分かっていた。しかし、あまりの速さの為目で追いつくのがやっとだった。


「…霊夢にあんな力があるなんて…」


「あれは前の博麗の巫女が無慈悲な妖怪の惨殺を行っていた時の力ね。まさかあの子にもあの力があったなんてね…想定外だわ…」


「前の…博麗の巫女?」


華扇は紫の言葉が気になったので聞き返した。


「そう。今から三代前の博麗の巫女なのだけど、その性格は残虐にして無慈悲。少しでも自分に害を与える妖怪達を次々に殺していったわ。」


「そんな事が…でもそんな事をしていたら他の妖怪達から恨まれなかったの?」


「勿論恨まれていたわ。だけどその子は強過ぎたの。自身の力の他に呪詛を使い更に力を底上げしていたの。」


「呪詛…」


「ただしその子は呪詛の扱い方を間違えてしまい、短命でその生涯を終えてしまったわ。」


「扱い方?」


「そう。呪詛は本来、相手に使う事が殆どなの。だけどあの子自分に使ったのは相手に使う方の呪詛だったの。そして、使い方を間違えてしまったあの子は、神社の縁側で静かに息を引き取っていたわ…」


「そうだったの…って、それなら今のあの霊夢はどうなの!?」


華扇が焦って紫に聞いてみた。


「あの子のは大丈夫よ。あれはちゃんと使い方の合っている呪詛だからね。まあ、流石にこの戦いが終わったら暫く疲れ果てて寝ているでしょうがね。」


「そう…良かった…」


華扇はそこまで聞くと安堵した。しかし、紫だけは何故か結界を張る準備をしていた。


「何故結界を張ろうとしているの?」


「あの子達の力は強過ぎて周りにも被害が及び兼ねないから客席の方とかに結界を張らないと他の妖怪達が暴走しかねないからよ。流石にこの数は多すぎるからね。それに人間も居るのだから守りながらの戦いはキツいから。」


「ああ、成程ね。」


華扇は上空で戦っている二人の様子を眺めた。正直、華扇でもあの速さは見る事が困難過ぎた。しかし、それでも何故か見てみたいと思った。勿論自分でもそれが何故かは分からない。一つ、ハッキリ分かる事は…二人の戦いが命を掛けている戦いのはずなのに、それが美しいと思ってしまっているからだ。




~早苗&サニーside~




「ちょっとあれは不味い気がするのは私だけかな…?」


「いえ…私もそう思います…」


霊夢と魔理沙が初っ端の戦いで本気を出し合い、更には命を懸けた戦いをしているので、巻き添えを喰らうのではと思い二人は岩場の影に隠れていた。


「それにしても、これからどうするの?一応私達は敵同士って事にはなっているけど…」


「でもこの様子では私達は戦いも出来ませんし…ここは静かに隠れている方が良いかも知れませんね…」


「やっぱりそれの方が良いよね…でも霊夢と魔理沙の姿が変わったのには驚いたけど、早苗は何か知らない?」


「うーん、魔理沙さんのはちょっと分からないですけど霊夢さんのなら分かるかも知れません。」


「あ、魔理沙のなら私は分かるよ。あれは多分指輪で抑えていた魔力を解放した姿だと思うよ。」


「魔力の解放ですか?あそこまでの魔力って結構凄く無いですか?」


「相当なものだよ。多分魔力で魔理沙に勝る人はだれもいないと思うよ。」


「そんなにですか…でも封じていてもあの強さは羨ましいです…」


「まあ、あれは魔理沙の努力の賜物だからね。それはそうと、次は霊夢のあの姿に関して教えてくれない?」


「そうですね。あれは呪詛の力ですね。」


「呪詛?それって何なの?」


「呪詛はまあ、説明が面倒なので紫さん達の会話で何となく把握して下さい。」


「ちょっとここでメメタァな発言は駄目なんじゃ!?」


「仕方ないですよ。儚月さん(うp主)が疲れ果てているので。」


「儚月しっかりしなさいよ!全く…」


二人が物凄くメタイ話をしていると、霊夢と魔理沙の流れ弾が早苗達の方に飛んできた。


「うわわ!?流れ弾が飛んできた!?」


「大丈夫です!任せて下さい!」


そう言うと早苗は二人の周りに結界を張った。


「これで暫くは流れ弾の心配はありませんよ。」


「お~!流石現人神!」


「でもこの結界じゃ長くは持たないですね…さて、どうしましょう?」


「どうするもこうも…とりあえずここから離脱しない?」


「それが一番ですね。では…逃げましょう!」


そう言うと早苗はサニーを抱えて最初に入って来た所から戦線離脱したのだった。一方、霊夢と魔理沙は…




~再び霊夢&魔理沙side~




「あら?早苗とサニーはここから離脱したみたいね。」


「まあ、仕方ないだろ。こっちの流れ弾喰らっちゃ唯じゃ済まないだろうからな。賢明な判断だと思うぜ?」


「それもそうね…さて、これで他には誰も居なくなったから更に本気を上げていくわよ…!」


霊夢と魔理沙は再びその場から消えたように素早く移動しながら瞬速の弾幕をぶつけ合った。


「どうしたんだ、霊夢!さっきよりも弾幕の速さが落ちたんじゃないのか?」


「……」


霊夢と魔理沙は素早く動きながら弾幕をぶつけ合っていると、不意に霊夢が弾幕を射つのを止めた。


「おいおい、どうしたんだ霊夢?まだ勝負はこれからだろ!」


しかし霊夢は魔理沙の方を見据えると、静かに…


「残念だけど…あなたの負けよ魔理沙…」


魔理沙は霊夢の言葉に一瞬で理解し、周りを見ると既に大量の弾幕に囲まれていた。


「くっ…!さっき弾幕の速さが落ちていたと思っていたのはこれを仕掛ける為だったのか…!」


「気付いてももう遅いわ…さよなら、魔理沙…」


霊夢はそう言うと、腕を上げて魔理沙の方へ下ろした。


「凶霊符「夢想封印 永劫」…」


魔理沙の周りに浮いているように静止していた弾幕は霊夢がスペルカードを唱えると同時に魔理沙に向かって一斉に放たれた。


「くそっ…ここまでか…まあ、霊夢に殺されるならまだ良いか…」


魔理沙は覚悟を決め、目を瞑った。しかし、待っても一向に痛みは来ない。不思議に思い目を開けると、霊夢が地面に倒れているのが見えた。


「なっ!?霊夢!」


魔理沙は急いで霊夢に駆け寄った。しかし、霊夢は一向に動く気配を見せなかった。


「おい!霊夢!起きろよ!…嘘だろ…?まさか…そんな…」


魔理沙は霊夢を抱き抱え、声を掛けたが全く動かなかった。魔理沙は霊夢を抱き抱えたままうずくまった。周りで観戦していた妖怪達も司会をしていた阿求と小鈴もその光景に呆然としていた。そして、誰もが霊夢は死んでしまったと思った…しかし、ある二人を除いてはだが。


「…う、ううん…」


「っ…!れい…む?」


「ううーん、あれ?私…どうしたんだっ…むぐ!?」


「良かった…!良かったぜ霊夢!」


「ちょ!どうしたの魔理沙!?」


魔理沙は霊夢が生きている事に喜び、抱きついた。霊夢に関しては何がなにやら全く理解していないようだった。


「霊夢覚えてないのか?さっきの事…」


「さっき?うーん、何かやってたかしら…なんだか戦っていたって言うのはぼんやり覚えているけど…よく思い出せないわね…」


「それは、後でじっくりと説明してあげますよ霊夢。」


ふと、後ろから声が聞こえたので振り返るとそこには、紫と華扇が立っていた。


「とりあえず次の戦いがあるから早く離れましょう。ちなみに霊夢は魔理沙がまだ意識がある時に気を失ったから一回戦目は魔理沙とサニーのメンバーの勝ちと言う事になったわ。途中で早苗とサニーは離脱したけど、魔理沙が最終的に勝ったからサニーも一緒に勝ったことになったわ。」


「そうなの…全く、やっぱり嫌な予感は的中してたのね…とりあえず疲れたから早く休みたいわ…」


「分かっていますよ。さ、行きますよ。」


華扇は霊夢を背負うと魔理沙、紫と一緒にその場を離れた。



_____________________________________________



「さて、とりあえずどうなっていたのか教えてくれるかしら?」


霊夢は華扇に背負われて、医務室に運ばれていた。何故かそこには永遠亭の八意永琳がいた。どうやら彼女は選手の怪我の治療を任されたらしい。


「そうですね…簡単に言うと頭のリボンを取って本気を出して魔理沙にスペルカードを放ったと同時に気を失った…って所ですね。」


「あー…そう言われるとそんな感じの記憶がぼんやりとあるような…」


霊夢は医務室のベッドの上で横になった状態で華扇の話を聞いていた。


「それにしても、まさか霊夢が呪詛を使えるとは思わなかったわ。何時覚えたのかしら?」


紫は霊夢に呪詛の事を聞いてみた。すると想像の斜め上の返答が帰ってきた。


「ああ、あれは先代の博麗の巫女に教えてもらったのよ。」


「先代の博麗の巫女が?おかしいわね…確か先代の巫女は呪詛を使えなかった筈…」


「そうなの?良く私に呪詛の正しい使い方とか呪詛の抑え方、序に呪詛の反射の方法とかも教えて貰ったわよ。」


霊夢の言葉にますます眉を寄せる紫に対し、華扇の方は少しだけ心当たりがあるようだった。


「先代の博麗の巫女とは少しだけですが話した事があるのですが…どうやら先代の巫女はあの無慈悲だった博麗の巫女の血を少なからず受け継いでいると言っていました。もしかしたらそれのお陰で呪詛の使い方を知っていたのではないですか?」


「成程…その考えもあるわね。でも私ですら先代があの子の血を受け継いでいたのは知らなかったわね…」


「あら、紫でも知らない事はあるのですね。ちょっと意外でしたね。」


「そりゃあ私も万能って訳じゃないのだから知らないのもあって当然よ。」


霊夢達が話をしていると、席を外していた永琳が戻ってきた。


「お話の所悪いけど、そろそろ出番みたいよ。」


「あら、もうそんなに経っていましたか。では行くとしましょう。」


紫はスキマを出して会場へと向かって行った。


「さて、所で具合の方はどうかしら?」


「私なら問題無いわよ。でも力を使い過ぎたみたいでまだ動けそうには無いわね。」


霊夢はそう言うと、手のひらをヒラヒラさせた。


「でしょうね。特にあなたの場合は一気に力を使ったから相当な疲労が溜まっているみたいだからね。」


永琳は事務用の机の前に置いてある椅子に座った。


「それで?私に聞きたい事があるんじゃないの?」


「あら。相変わらず勘は鋭いのね。と言ってもちょっとした質問みたいなものね。」


「質問?なにかしら?」


「ま、あなたを治療した時に呪詛の力と霊力以外に別の力を感じたからね。何か身に覚えはあるかしら?」


霊夢は永琳の言葉で香霖堂であの刀を触れた時の事を思い出した。


「ん?それってこーりんの刀を触った時と何か関係があるんじゃないか?」

ぬなふ

どうやら魔理沙も同じ事を考えていたようだ。


「こーりん?ああ、香霖堂の店主の事ね。所で、刀って今日の戦いに参加している一人の事よね?そのこーりんって言う人は強いのかしら?」


永琳は頭脳明晰だが、流石に相手の戦闘能力は測れないようだった。


「強いと言うよりは多分弱い分類に入ると思うわよ。戦いを好まない人だから。」


「あらそうなの?じゃあ何で参加しているのかしら。」


「そりゃ勇儀達のせいよ。無理矢理参加させているんだから。」


「ああ、あの鬼達ね。でも断る事も出来たんじゃないの?」


「断った所で結局は参加させられるのだから霖之助さんも諦めて参加したらしいわ。」


「あの鬼達は相手の事を考えないのかしら…」


「無理ね。勇儀達は自由気まま過ぎるから。他の人の事なんてあんまり考えないのよ。」


霊夢はベッドの上でお祓い棒を弄りながらそう言った。話を一緒に聞いていた魔理沙と言うと…こちらも疲れていたのか何時の間にかもう一つのベッドで爆睡していた。


「まあ、後で勇儀達には私の薬の実験に付き合って貰うけどね。」


(あ、これは永琳も無理矢理連れてこられた感じね。)


霊夢は心の中で勇儀達に合掌すると、永琳に次のバトルを見に行きたいと言った。


「まあ、歩く分には問題は無いけど念の為に私もついて行くわ。ま、序にあの五古老の実力も見てみたいからね。」


永琳はそう言うと、霊夢に肩を貸して先程の場所に向かった。



_____________________________________________



「さあさあ、お待たせしました!第二回戦の開始です!」


「二戦目のメンバーは非想非非想天の娘、比那名居天子さんと!」


「幻想郷の五古老の一人にして妖怪の賢者、八雲紫さんです!」


「そして次のメンバーは八雲紫さんの式神にして策士の九尾、八雲藍さんと!」


「八雲藍さんの式神、凶兆の黒猫、橙さんです!」


四人は互いの仲間と話しながらバトル場に入って来た。


「まさか貴女と組むことになるとはね…」


「それは私も一緒よ。何でまあ…でもたまには一緒に戦うのも良いんじゃない?」


「まあ、それもそうね。だけど…また前みたいに要石を落とすなんて事したら…分かっているわよね?」


「分かってるわよ。流石にそんな事はもうしないわよ。」


一方の藍達は…


「藍しゃま~前が見えないですよ~」


「橙は私が守る…!」


とまあ、物凄い過保護過ぎる藍の行動が見受けられた。


「さあ、第二回戦はどちらのチームが勝つのでしょうか!」


「それでは、両チーム構えて!バトル開始です!」


小鈴の合図と共に橙は天子に攻撃を仕掛けた。


「藍しゃま!私はこの人を相手にしますので紫しゃまをお願いします!」


「橙…!分かった!怪我をするなよ!」


「あらあら、相変わらず仲が良いわね。」


紫は藍と橙の会話を聞きながら微笑んでいた。


「当たり前です。私の式神ですからね。」


紫はそれだけでは無いでしょうと言いかけたが、言わなかった。


「ま、最近動いてなかったから丁度いいわね。藍の実力もどこまで上がったか確認もしたいしね。」


「橙と良く弾幕ごっこをしているので多少は強くなっているはずですよ。まあ、紫様の自由気まま過ぎる行動のお陰でストレスも溜まっていますからね。ちょっと潰す気で行きますかね。」


「ねぇ、今物騒な事言わなかった!?」


「気の所為ですよ。…さて、どうやってお仕置きをしましょうかね…」


「だから聞こえてるわよ!?」


「敢えて聞こえるように言っているんですよ!さあ、覚悟は良いですか!!」


「イヤー!!」


藍は紫に向かって弾幕を放ってそれを紫が逃げているという何ともシュールな事が起きていた。しかも紫は演技をしている訳では無く、本気で逃げているようだった。藍も本気で紫を潰す気で弾幕を撃っているようだった。




~橙&天子side~




「うーん、あの姿を見ているとあの時に私を本気で消そうとした時の威厳が全く見受けられないわね…」


「藍しゃまは紫しゃまの自由奔放にストレスが溜まっているようだったので仕方ないですよ。」


「あの紫がねぇ…あ、桃食べる?」


「あ、貰います!」


藍が紫を追いかけている時、橙と天子は二人の追いかけっこを見ながらゆっくり座って話をしていた。何故戦っていないかと言うと、理由としてはお互い半ば無理矢理に連れてこられた様なものだったので戦わなくても良いと判断したからだ。ちなみに藍と紫は二人が戦っていない事に気付いてないようだった。


「それにしても、紫が私をバトルに誘うなんて正直驚いたわね。」


「何でですか?」


「ま、ちょっと前に異変を私が起こした時にね…紫が本気でキレちゃってね。正直あの時の紫はヤバかったわね…」


「異変ですか?でもそこまで珍しくない異変で紫しゃまがキレるのは珍しいですね…」


「まあ、そこはあまり聞かないで…あれ、結構トラウマみたいになっててね…」


天子はそこまで言うと、頭を抱えた。


「あの紫しゃまがトラウマを植え付ける程…」


橙は紫が異変でキレた事があったか思い出してみたが、やはり異変でキレた姿を見た記憶は無かった。


「うーん、やっぱり紫しゃまが異変でキレた様な記憶は無いですね。」


「でしょうね。異変でキレたのは私の時だけみたいだし。」


天子は緋想の剣を弄りながら藍と紫の追いかけっこを眺めた。


(しかし、あの藍って言う式神も大変ねぇ。ま、私も人の事言えた義理でも無いけどね。)


天子も自分の我儘過ぎるのは自覚していた。しかし、今は我儘もかなり落ち着いていた。先の異変のせいもあるが、やはり一番の理由はその異変の時に自分を犠牲にしようとしてでも天子を守ろうとした衣玖のお陰が一番大きい。


(衣玖のお陰で今、私はここに居る…私も衣玖に何か恩を返さないと行けないわね…)


「あれ?天子さん?どうしましたか?」


「ん?ああ、何でもないわよ。ちょっと考え事をね。」


少し考え過ぎていたみたいだったようで、橙が心配そうにこちらを覗き込んでいた。


「ま、この話はまた今度ね。とりあえず今はあの二人の追いかけっこでも眺めていましょう。」


橙と天子は話を一旦止めて、藍と紫の追いかけっこを再び眺める事にした。




~藍&紫side~




「い~や~!!許して~!!」


「今までのストレスを解消するまでは許しませんよ!!」


天子と橙がのんびりと話をしている間(勿論二人がのんびり話をしている事に紫達は知らない)、紫と藍の二人は追いかけっこ(という名の藍の一方的な攻撃)をしていた。


「何で私だけなの~!?一緒に連れてきた天子もいるでしょう~!?」


「何で関係の無い人を巻き込もうとするのですか!?お仕置きだけでは足りませんか!?」


「嫌だ~!!」


紫は結界を張りながら攻撃を防ぎ、藍は攻撃が防がれたら更に攻撃を叩き込むと言う感じになっていた。それを観客席から見ていた霊夢達は呆気に取られていた。ちなみに一緒について来ていた永琳だけはクスクスと笑っていた。


「何がどうしたらこうなっているんだ?」


「そんなの私が聞きたいわよ。あの紫が逃げに転じているなんてねぇ…」


「ま、紫もあの使い魔に苦労ばかりさせているから使い魔も本気で掛かっているみたいよ?紫はあの使い魔に捕まったら色々言われるのが分かっているから逃げているのよ。」


「何でそんな事分かるのよ。」


「あそこで天人と座っている凶兆の黒猫に聞いたのよ。」


「凶兆…ああ、橙の事か。」


「わざわざ二つ名で言わなくても良いんじゃない?」


「気分よ気分。なんなら霊夢達も二つ名で呼んであげましょうか?」


「良いわよ言わなくて。面倒だし。」


「何が面倒なんだ?」


「全部が。」


霊夢は魔理沙の問にすぐに答えた。それを見ていた永琳は何故か微笑んでいた。


「ん?何で笑っているのよ。」


「いえ、何でも無いわよ?ただちょっとね…」


永琳は月で暮らしていた時の事を思い出していた。あの小さかった依姫と豊姫は元気にしているかしら…そう考えているうちに霊夢達は司会をしている阿求達の所に向かっていた。


「でも、ここでの生活も楽しく感じてきたわね…やっぱり面白い人間や妖怪がいるからかしらね…」


永琳は踵を返すと、そのまま医務室に帰っていった。そして紫達の方はと言うと…未だに追いかけっこをやっていた。


「待ちなさい!今説教をされるか帰ってから説教されるか!どちらか選びなさい!」


「どっちも嫌に決まっているでしょう!?」


紫は相変わらず攻撃をしないで逃げているだけだった。勿論それに藍は少し首を傾げていた。


(あの紫様が逃げるだけなのはおかしい…何を考えているのか?)


藍と紫はどちらとも頭脳明晰の強者で相手の行動もある程度は憶測出来る。しかし、藍と言えども紫の行動全てを憶測出来なかった。すると、紫はいきなり逃げるのを止めて立ち止まった。


「…そろそろ諦めましたか?」


紫はゆっくりと藍に振り返った。しかし、その顔には確かな微笑が浮かんでいた。


「…何を笑っているのですか?」


「ふふふ、やっぱり藍も一から修行し直した方が良いわよ?じゃないと…」


紫はそこまで言うと指を鳴らした。すると、今まで逃げていた道から大量の細かなスキマが出現した。


「なっ!?これは!」


「私だってただ単に逃げていただけじゃないのよ?こうやってわざと逃げて相手が攻撃だけに専念している間に罠を仕掛けていたのよ。」


「くっ!しかしここでやられる様では紫様の式神として失格!こちらも全力で防がせて貰いますよ!」


紫と藍は攻防が逆になり、それを見た霊夢達はやっぱりかと言うような顔をしていた。


「あいつが簡単に逃げる訳ないから何か仕掛けているとは思っていたけど、やっぱりだったか。」


「だな。しかし、藍の奴はあのスキマからどうやって乗り切るんだろうな?どうせあの中から大量の弾幕でも出るんだろうしな。」


「ま、ここはお手並み拝見しましょう。」


霊夢と魔理沙は何時の間にか一足先に辞退していた天子と橙の所に向かった。


「さあ、この状況からどうやって抜け出せるのか見物ね。」


紫は更に指を鳴らすとスキマから大量の弾幕が藍に向かって飛んでいった。


「くっ!防ぎきって見せる!」


藍は全方位に結界を張り、弾幕を防ごうとした。しかし、弾幕の密度はかなりのものですぐに結界にヒビが入ってしまった。


「…っ!このままでは!」


藍は何とかして突破口を見つけようとした。そしてそれはすぐに見つけた。それは…弾幕の中を突っ込んでくぐり抜けるという何とも自殺行為的な策だったが、藍は確信していた。先程、紫が言った様に攻撃にだけ専念している間…その言葉通りに相手も思わない事を成功させれば相手の虚を付けると。しかし、成功率は…たったの5%程だけだった。


「しかし…ここでやらなければ後が無い!」


藍は結界を解除して紫に突っ込んで行った。勿論、紫はその姿は見えていなかった。そして藍は…何とその無謀な策を成功させた。虚を付かれた紫は藍の読み通り驚き隙を一瞬見せていた。


「…流石、私の式神ね。これは私の負けだわ。」


藍は紫の首元に爪を突き付けていた。しかし、その姿はボロボロで今にも倒れそうな感じだった。


「ハアハア…これで…示しも…付きましたね…」


藍はそこまで言うとその場に倒れてしまった。


「全く、あれだけ私の弾幕を受けて立っていただけでも大したものなのに、更に爪も突きつけるなんてね…良い家族を持ったものね。私は。」


紫は藍を抱き抱えると、その場から離れた。



_____________________________________________




「えー、先程のバトルですが、紫さんはお互いに戦闘が出来る状態では無いので勝った方のメンバーも次のバトルには参加しないとの報告がありました!」


「ですので、次のバトルには二回戦を突破した方は出場しません!」


「ですので、二回戦だったバトルは無くなります!ですので、一戦目で勝ったチームは待機になり、三戦目と四戦目で勝ち上がったチームでバトルをして貰います!そして、勝ったチームは一戦目を勝ったチームと戦ってもらう事になりました!」


「とりあえず、時間も惜しいのですぐに三戦目を始めたいと思います!」


「次の三戦目のメンバーは、紅魔館の永遠に幼き紅い月、レミリア・スカーレットさんと!」


「同じく紅魔館の完全で瀟洒な従者、十六夜咲夜さんです!」


「そして、対戦相手は紅魔館の居眠り門番、ザ・中国さんと!」


「白玉楼の庭師、魂魄妖夢さんです!」


「いや、ちょっと待って下さい!?何で私だけ名前じゃないんですか!?」


「え?だって面白いじゃないですか!」


「私で遊ばないで下さいよ~!」


「まあまあ、良いじゃないの。ザ・中国w」


「咲夜さんまで~!」


「…フッ」


「いまお嬢様も笑いました!?」


「そんな事は良いので早く始めませんか?日頃の鍛錬の実力を発揮したいので。」


「そんな事って…(´;ω;`)」


レミリア達は中央に行ったが、美鈴だけははしょんぼりしながら行った。


「さあ!それでは三戦目、開始です!」


「さて、始まったけど…咲夜は誰とやるのかしら?」


「では私は庭師を相手させてもらいます。」


「分かったわ。それじゃあ私は美鈴を相手にするわね。美鈴も庭師の方もそれで良いかしら?」


「私は構いませんよ。後、私の事は庭師では無く妖夢と呼んでください。」


「私も構いませんよ…」


「全く、何時までしょげてるのよ。これじゃ勝負にならないかもよ?」


「大丈夫ですよ。勝負の時は全力でやりますので。」


美鈴は妖夢と咲夜から少し離れた。レミリアも美鈴に続いて少し離れた。


「咲夜、妖夢。私たちの戦いが終わるまで離れて待っていてくれるかしら?じゃないと…」


「巻き添えを喰らって死ぬかも知れないので!」


「わかりました。お嬢様。」


「分かったわ。」


咲夜と妖夢は二人の言う通りにその場を離れて端の方で待機した。


「それじゃあ、美鈴。久しぶりにあの時と同じ様に全力で、そして殺す気で来なさい!」


「かしこまりました…紅美鈴、参ります!」


二人は瞬時に構えると、接近戦を始めた。しかし、普通の接近戦と一つ違うのがあった。それは、相手の動きが見えない程素早すぎる格闘をしていたのだ。


「二人とも拳が全く見えない…吸血鬼であるレミリアは分かるけど、それに全く引けを取っていないあの門番は一体何者なの…?」


「さぁ…実は私も良く分からないけど、一つだけ確かな事はあるわ。それは、格闘ならあの鬼にも匹敵する程の実力を持っていると言う事だけね。一応、お嬢様に一度格闘で勝っているのよ?」


「そこまでの実力を持っているなんて…さっき見せた様子からとは全く違うのね。」


「でも、あまり実力を見せようとはしないのよね。」


「何故?」


「それはね、美鈴が面倒臭がりだからなのよ。勿論、暇な時は良く鍛錬をしているみたいだけどね。」


「え、そんな理由で?」


「そ。普通に聞いたらおかしな話だけどね。でも、美鈴は面倒臭がりで実力を出している訳では無いのよね。本人は面倒だからと言っているけどね。」


「その理由って何ですか?」


「それはね、実力を出したら紅魔館に力比べで挑もうとする輩が増えるのを危惧して実力を出さないの。勿論、それだけならお嬢様だけでなんとでも出来るのだけど、美鈴はお嬢様よりも更に強い妖怪や人間が居ることを知っているの。だからお嬢様に危険が及ばない様にしているのよ。まあ、あの紅白巫女と白黒魔法使いだけは例外だけどね。」


「そうなのですか…私も見習わないと行けないですね…」


「まあ、見習うのは良いけどあの面倒臭がりまで見習うのは止めときなさいよ?」


咲夜は笑いながら妖夢に言った。勿論、妖夢も釣られて笑ってしまった。一方そんな事を話している間、美鈴とレミリアの戦闘は過激と化していた。


「流石美鈴ね。これだけ動いても息切れ一つも起こしていないなんてね。」


「それはお互い様ですよ。さて、そろそろ少しづつ本気を出して行きますか。」


「それもそうね。準備運動も終わった事だし、私も本気を出して行くわよ。」


言うや否や、次の瞬間に二人の拳がぶつかり合っていた。その力はとてつもなく、拳がぶつかった瞬間にその場から衝撃が放たれる程だった。


「なっ!?ちょっと強過ぎないですか!?」


「…流石にこれは予想外ね。美鈴もお嬢様も本気を出してなかったのね…妖夢さん。念の為に武器を構えていた方が良いわよ?もしかしたら衝撃で岩とかが飛んでくると思うから。」


「分かりました。咲夜さんはどうするのですか?」


「私は時を止めれるからそれで避けるわ。」


「あ、それなら最低でも私から2メートルは離れていて下さいね?間違って斬ってしまったら元も子もないですからね。」


「分かったわ。戦う前にやられたら大変だからね。」


二人はそれぞれの得物を構えて備えたのだった。


「しかし、やっぱり強いわね。美鈴は。吸血鬼と同等…いや、それ以上で戦えるなんてあの巫女と魔法使いを除いて貴女だけかもね。」


「それは分かりませんよ?接近戦なら出来ますが、弾幕勝負になるとめっぽう弱いんですからね?」


二人は激しく拳をぶつけながらも、普通に会話をしていた。


「それじゃあ美鈴。皆に驚くものでも見せてあげなさい?」


レミリアはそう言うと、素早く美鈴から離れてスペルを放った。


「神槍「スピア・ザ・グングニル」!」


レミリアは深紅の槍を創り出すと、それを美鈴に向かって物凄い勢いで投げつけた。


「…ハァ!!」


しかし、美鈴は避けること無くその槍を素手で弾いてしまった。


「ふふふ、やっぱり弾いたわね。この槍を弾けるのは流石に美鈴だけでしょうね。」


「お褒めに預かり光栄ですよ。でも、これでは何時まで経っても勝負が付かない様な気がしてきたのですが?」


「やっぱり美鈴も思っていたわね。私も丁度同じ事を考えていたのよ。」


「でもどうしますか?流石にどちらかが降伏すると言う訳にも行かないですし…」


「それもそうね…まあ、どちらかが倒れるまで戦うしか無いんじゃない?」


「やっぱりそうなりますかね?」


「そうなるわね。」


二人は少し止まるとまたすぐに戦闘を再開した。


「でも本当にどうします?これじゃ勝負が付かないですよ?」


「それなのよね…どうしようかしら。」


「あ、そうだ。だったらもうどちらもこんな拳をぶつけるだけでは無くて、もう問答無用で攻撃を当ててから気絶するまでやるのはどうですか?その方が早く済みそうですよ?」


「…何時もと違って好戦的になってない?」


「だってこうやって殴り合いをするのは久しぶりでして…ちょっと荒れていた昔の頃が出てきてるみたいでして。」


「まあ、それなら仕方ないわね。だったら…覚悟は出来ているわよね?」


「それはこちらのセリフですよ。下手しても死なないようにして下さいね?」


「本当何時もと全く違うわね…」


レミリアと美鈴は拳を交えた後、すぐに距離を取りそして…


「ハァ!」


「フッ!」


素早く間合いを縮めて連撃の嵐を繰り出した。


「隙あり!」


最初に一撃を入れたのはレミリアで、諸に喰らった美鈴は吹っ飛んでしまった。そしてレミリアは、すぐに美鈴の方に飛んでいき追撃をしようとした。しかし美鈴も負けじとギリギリでレミリアの追撃を躱してカウンターの一撃を叩き込んだ。レミリアは避けようとしたが、美鈴の拳の方が若干早くて喰らってしまい、地面に叩きつけられてしまった。


「ふう…流石に少ししか動いていないのにここまで強い攻撃を喰らうと疲れますね…」


「ま、それもそうね。と言うか本当に問答無用で叩きつけてくれたわね。全く。」


「あ、やっぱり無事でしたか。」


「それ遠回しに無事じゃない方が良かったのかしら?」


「いえいえ、お嬢様ならこんなのは耐えれるだろうと想定していましたので。」


「成程ね。それで、まだやった方が良いのかしら?正直もう体ボロボロで辛いのだけど。」


「それは私もです。どうしましょうか?」


「うーん、最善の方法は…何かあるかしら?」


「…特に出てきませんね。やっぱり戦った方が良いのでしょうかね?」


「そうなるでしょうね…あ、一つあるじゃない。」


「え、何か良い案がありましたか?」


「良い案と言うより最後の一撃に全てを込めて叩き込むのはどうかしら?それで立っていた方の勝ちって事で。」


「成程。それは良い考えですね。では…覚悟は出来ていますね?」


「それはこっちのセリフよ。」


二人は再び構え直すと、力を溜め始めた。二人が力を溜めると、二人の全身からは力が溢れているのか美鈴は翠色の気が、レミリアからは紅色のオーラが溢れていた。


「…もしかしてこれってここに居たら危ない感じですか?」


「もしかしなくても危ないわね。下手したら巻き添えで死んじゃうかもね。」


「…それならやる事は一つですよね?」


「勿論よ…逃げるわよ!!」


咲夜と妖夢は巻き添えを喰らうまいと一目散に撤退した。それを見ていた霊夢と紫(藍を医務室で寝かして霊夢と合流していた)は流石にヤバいと判断してバトル場だけに強力な結界を張っていた。


「流石咲夜さんと妖夢さんですね。この状況をちゃんと判断してくれたみたいですね。」


「それを言うなら霊夢と紫もでしょ?ちゃんと結界も張ってくれているのだから。」


「ふふ、それもそうですね。それでは、抑える必要も無いですね。」


「当たり前よ…覚悟は、出来ているわよね?」


「大丈夫ですよお嬢様。覚悟は…とっくに出来ていますから…!」


観客から見ていた妖怪や霊夢達からは、二人は力をまだ溜めてるのだろうと思っていた。しかし、実際は違ったのだ。既に二人はぶつかっていた。しかし、あまりの速さに二人がまだ力を溜めているように見えてしまっていたのだ。そして…


ドゴォン!!


「なっ!?うわっ!」


「ちょっ!結界にヒビが!?」


「これは…想定外過ぎるわね。」


二人の力は紫ですら考えていた以上だったらしく、作っていた結界にヒビが入ってしまった。そして、再びバトル場に目を向けるととんでもない光景が広がっていた。


「ちょっ!!バトル場に大穴が空いているじゃない!」


「いや、それよりも二人は何処に行ったんだ!?」


「もしかして…力が強過ぎてお互い消し飛んでしまった?」


「何だと!?」


霊夢、魔理沙、紫が二人を探していると上の方から声が聞こえた。


「…私は此処に居るわよ?」


三人は上を向くと、目を回している美鈴を抱えたレミリアが空中を飛んでいた。


「レミリア無事だったのね。」


「当たり前でしょ?まあ、流石にあれは私も力を使い過ぎてしまったわ…もう飛ぶ力も殆ど残ってないわ…とりあえずこの結界解いてくれないかしら?そっちに行けないのだけど…」


「っと、ちょっと待ってて。すぐに解くから。」


霊夢は解くとは言っていたが普通に解くとは言ってない。そんな訳で霊夢はお祓い棒で結界をぶん殴って結界を壊してしまった。


「はい。これで入れるわよ。」


「…普通に解くかと思ってたんだけど、違ったわね。」


「だってヒビ入ってたから殴って壊した方が早いのよ。」


「そ、そう…やっぱり神社に人が来ない理由がそれなんじゃ…」


「ん?何か言った?」


霊夢はお祓い棒を握り直してニコニコしながらレミリアを見た。


「ナ、ナンデモナイデスヨ-」


「はいはい。そんな茶番は良いからとりあえず降りてこないの?」


レミリアは紫に促されてとりあえず人(妖怪)が居ない所に案内をした。


「ここが良いわね。とりあえずその抱えている門番をここに置いといたら?」


「それもそうね。よっと。」


レミリアは抱えていた美鈴を近くにあった椅子に座らせると、バトル場に向き直った。


「あーあ。ちょっとやり過ぎたかしら?」


「十分やり過ぎよ。全く、地面の8割が無くなっているじゃない。」


「でもどうするのかしら?まだメイド長さんと庭師さんの決闘もあるでしょう?」


「それですが、既に決着は着いていますよ。」


「あら、咲夜…って何で顔が赤くなってるの?て、お酒臭い!」


「あ~やっぱりお酒臭いですか~?」


「って、しかも酔ってるし!」


「いえいえ酔ってませんよ~うふふ♪」


「…前の宴会の時は酔ってなかったけど、咲夜ってこんなに酔うの?」


「私だって知らなかったわよ…」


「でも酒に酔っていて勝負して来たと言っていたから…あ、大変。妖夢は泣き上戸だから多分今頃は…」


紫がそこまで言うと、幽々子の声で助けてー!と言う声が聞こえた後に、妖夢の声で何か色々言っている声が聞こえてきた。


「あちゃ~、やっぱりか。」


「まあ、幽々子も妖夢に苦労かけてる見たいだから良いんじゃない?」


「いや、そんな事より次のバトルはどうなるのかしら?」


「うーん、ちょっと阿求と小鈴に聞いてみる?」


「まあ、あの子達も飛び入りで司会をやっている見たいだから何か知っているとも思えないけどね。」


「ま、行ってみるだけ行ってみましょう。」


酔っている咲夜の相手をしているレミリアをその場に置いていき、霊夢達は阿求達の所に向かった。


「あ、霊夢さん。どうしましたか?」


「いやバトル場があんな事になっているから次のバトルはどうなるのかと思って聞きに来たのよ。」


「うーん、この状況だと流石に出来ないでしょうからこの場所が直り次第って事になるでしょうね。でも直るのに時間がかなり掛かるので、今回はとりあえず保留という事になりますね。」


「やっぱりそうなるわよね…それで、この後はどうすれば良いのかしら?」


「実はそれも決まっていなくて…多分何処かで宴会をやるとは思うのですが…」


「それなら紅魔館で宴会する?咲夜は酔っていて参加は出来ないけど。」


後ろからレミリアの声が聞こえたので振り返ると、肩で息をしながらレミリアが歩いてきた。


「あらレミリア。かなり疲れているみたいだけど大丈夫なの?」


「大丈夫よ…でも咲夜にお酒は飲ませない様にするわ…」


「…何があったのよ。」


「うん。聞かないで…いや本当…」


レミリアは震えながらそう行った…一体何があったのだろうか…


「分かったわよ。それで、皆で紅魔館に行った方が良いのかしら?」


「そうしてちょうだい。」


「それなら私がスキマを開くからそれを使って行った方が早いわよ。」


「じゃあ紫のスキマを使っていきましょう。じゃないと美鈴と咲夜運ぶのが大変…」


「でしょうね。それじゃあスキマを開くわね。」


そう言うと紫はスキマを開いて霊夢達はその中に入って紅魔館に向かっていった。



_____________________________________________



「さて、それじゃあ宴会だー!!」


「「「「「「「「「おおーー!!」」」」」」」」」


紅魔館では先程のバトルでの宴会が行われており、紅魔館の中はかなりの大所帯となっていた。鬼と飲み比べをしている者も居れば、テーブルに並べられた料理を食べまくっている者も居た。ちなみに料理やお酒等は紫が何処からか用意してくれたらしく、すぐに宴会は開催出来た。


「それにしてもあの時の霊夢ってガチで強かったな!」


「ああ、あの禍の力を使っている時のね。でも実際は一度使うと自分の力をかなり消費しちゃって一週間は寝込みっぱなしになる筈なのよね。何故か今回はそれが無かったけど。」


「ふーん。まあ、そんな事より酒飲もうぜ!」


「あんたから話を振ったんでしょうが…」


霊夢は呆れながらも魔理沙と酌を交わしながら紅魔館の中を見回した。


「…やっぱりたまにはこんな感じで賑やかなのも良いものよね…」


「ん?何か言ったか?」


「何でも無いわよ。」


霊夢は今日は色々な事に巻き込まれたりして厄日だなと思っていた。しかし、こうして宴会をしながら皆と笑いながら過ごせる日々がずっと続けば良いと誰よりも心の底から思っていた。そして、今日と言う日が終わり、また明日と言う日が来ると霊夢は平和な幻想郷を守る為にまた幻想郷を飛び回るのだろう…それが博麗の巫女として、そして己の信念の為に。

はい。うp主が限界だったので四戦目は無理矢理無しにしてしまいました。どうか思いっきりいじってやって下さい。後、最後ら辺の一週間は寝てしまうですぐに歩けるまで復活したのは、香霖堂の旧都支店で天叢雲剣を持った時に天叢雲剣の力が霊夢に少しだが宿ったので、それが代償の代わりになりすぐに復活したのです。え?何で此処で言うのかって?そりゃあ、此処で言わないと話が長くなってしまうかr…って、うわうp主何するやm((粛清

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回初めて、読ませて頂きました。素人ですが、参考程度に。 ・霊夢や魔理沙などの能力に独自の設定を盛り込んでいる。(ただの知識不足だったらすみません。) ・原作に忠実。 ・登場人物の会話文に…
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