ある日の人王
「疲れた。これをあと6個作るのか。」
椅子に寄りかかりながら黒いローブを着た女性はそう呟いた。
天を仰ぐと松明が揺らめいている。
彼女、ハーティ ディザスターは魔王として世界に名を轟かす魔女である。
元が人なので人王と呼ばれておりその強さは龍王に次ぐと言われている。
そんな彼女は特に世界の征服などは目的としていない。
オリジナルの魔術の研究。
それが彼女の目的であり、魔王になったのはそれを叶えるのに適していると判断したからだ。
国から支援を貰うのではなく国を手に入れ民から徴収すれば良い。そう思ったのが始まりで思ったが吉日と研究内容でもあるダンジョンの作成、その魔法陣の研究。魔物の研究などなどここ数百年は働きづくめだった。
そして、人王領という手にいれた領地も落ち着きやっと彼女の研究もダンジョンコアという形である程度形となった。のだが…。
「あとはそのサンプルの試験をするだけなのに人材育成というのは疲れるものね。」
今日のことを思い返して彼女は呟く。
いろいろ予想外のことが多かった。
それが疲労の原因だろう。
とはいえ、ダンジョンコアが人の体を得てる…なんて面白い現象に立ち会えたのは幸運だった。
原因は不明だがあるとしたら今日拾ったあの少女だろう。
「『万物の王』なんて初めて『視た』な。」
彼女は少女を思い出して笑った。
今回の召喚の魔法陣はある設定をかけて作ったものだ。
初め少女を見た時はなんで召喚されたのか分からなかったが再度視た時納得した。
これだから。召喚というのは面白い。
仲間内からダンジョンコアの管理者を出さなくて良かったと思う。
まぁ、出したら領の管理が回らなくなるというのも原因なのだが。
控えめのノック音が部屋に響く。
入るように言うとメイド姿の女性がドアを開き入ってきた。
「ハーティ様。第2のダンジョンに向きました渓谷を発見致しました。」
そう彼女は報告する。
とても美しいが彼女の頭のヤギのような角が彼女は人ではないと告げる。
「ありがとう。ミシャ。あとで抱いてあげるわ。」
ハーティはそう笑うと椅子をたちコアをひとつ手に取った。
「久しぶりのお食事…。という訳ですね。あまりに頂けないので魂を頂けるのかと思っておりました。」
メイドはからかうようにそう笑った。