チュートリアルを始めましょう(4)
魔導書はある程度の実力がないと読めないようになっているようだ。
力ないものが無茶な召喚をしないようにするための配慮だろうなと思った。
「さて、ハク達がラットを食べたりすると魔力が生まれるはずです。」
「ちなみに、1匹いくつなの?」
私がイリスにそう聞くと
「1匹につき5です。」
とかえってきた。
つまり、蛇ちゃんが2匹食べるとトントンと言ったところである。
そう思うとコスパ良さそうだけどそもそも魔蛇は魔物としては最弱と言っても差し支えない上にほとんど自己生産されないので実は効率の悪さから好まれて使われないらしい。
…なら、なんでそれを選択した。
とはいえ、私的には可愛い子が増えたのでいいのだけど。
ちなみに、ラットの処理は今は5匹の魔蛇達が中心となりハクはまた私に巻きついている。
「それでコアの登録と魔力の貯め方、防衛戦力の増やし方を行ったわけだけど…。」
「召喚以外では増やせないのですか?」
私の質問に思い出したようにハーティ様は答える。
「ある程度知性のあるものでしたらダンジョンにスカウト出来ますね。私のダンジョンだとドワーフやダークエルフ、あとはコボルト達がそうです。」
ドワーフは小人族の一つ。小さい割に力は強く金銭に貪欲とされている。とある鉱山は金貨を隙間に落としたドワーフが躍起になって掘り起こして見つけた…なんて噂があるくらいだ。
他には手先が器用で武器を作るのを得意としている。一般的に酒豪でもある。
ダークエルフはエルフ族の一つ。肌が黒く闇魔法を得意としているのでよく邪教を崇拝していると思われているが特にそういうことは無くエルフとしての誇りはむしろ白エルフと言われる種族より強い。
力はダークエルフの方が強く好戦的であり、白エルフより劣るが魔法もできる。
コボルトは獣人族の一つ。普通犬型の獣人はワードック(この世界の獣人はワー(英語名)が一般的)と言われるがコボルトと呼ばれる種族は体内に魔石があるため。魔物と扱われている。そのため、街にはおらず廃坑などがメインである。彼らは穴掘りが得意でありまたドワーフ達とは酒豪同士仲がいい。
「色んな種族がいるんですね。」
先ほど少し歩いたが誰にも会わなかったので分からなかった。
「まぁ、種族間の喧嘩など問題も起きますが…そこは管理者の出番ね。あなたも頑張ってね。」
そう笑うハーティ様。
そうか。種族が増えると揉め事も増えるのか…。
「それとそろそろ準備出来たでしょうから。やってみますか。」
そう言うとハーティ様は軽く指を鳴らした。
…なにか起きたようには見えなかったけど?
わたしが首をかしげていると
「マスターの体に損傷を確認。修復しますか?」
そんな淡々とした声が響いた。
イリスの声に反応して私は自身の体を確認する。
と右腕が肩からきれいさっぱり消えていた…。
唐突のことに頭が真っ白になる。
「修復しますか?」
「する!」
再度の問いに私はうなづいた。
といつの間にか右腕が復活している。
手を開いて感覚があることを確認する。
「と、このようにもうあなたの体は人ではなくなってます。」
ハーティ様はしれっとした顔でそういった。
初めて怒りがこの人に湧き上がる。
そんな私を見ても彼女は顔色を変えない。
「魔王の眷属がただの人の訳ないでしょうに。」
「こんなふうになるなんて誰も言ってない。」
「ならないとも言ってない。」
私の言葉に彼女はそう返した。
そして、さらに言葉を紡ぐ。
「今のあなたの体は魔力で体を作ってます。なので、イリスから生命維持に必要な魔力が無くならない限り死ぬことはありません。歳もとりません。」
淡々と告げれていく。
「おめでとう。不死者ですよ?」