恩師の教え
出だしが、少々下品で申しわけないです
ヒナコの自宅マンション付近の化け物を、一掃したタカシさん、一つ疑問に思う事がある。
今は12月にプローン(伏射)のスタイルでいるのに、腹が冷えてない。
これは、タカシさんの学生時代の話だが、今と同じ時期の12月ぐらいだったか。
同じ部の〇島君は、国体に出るほど優れた競技者だったのだが、プローン訓練時に時射撃場の床がキンキンに冷えていたため、マゾな〇島君は、ご褒美ほしさに声を出したんだ
「先生! 腹が冷えて、ウ〇コでそうです!」
そんな〇島君の訴えを、片手に1mの竹定規を持った自衛官を退官上がりの、ドS教員が叫んだ。
「このケツか! このケツ穴がたるんでんのか! このホモサピエンス野郎が!!」
そう教員は言葉を放ち、竹定規でパシンパシンと、〇島君の尻を叩き、ジャージの前をふっくらとさせている。
真正マゾの〇島君は、喘ぎ声をあげて喜んでWin-Winな関係を見せられ、うんざりした話ではなく。
昨日の夜から疑問に感じてたが、暖かすぎるのだ、腹が冷えないどころか汗が滲む気温なんておかしい。
25度以上の気温に感じる、生態系のバランスが崩れて異常気象でも起きているのか?
そんな事を考えていたら、背後に気配を感じ飛びのくと、こん棒が地面を叩いた、そんな物騒な輩の姿を見ると。
ゴブリンだ、ゴブリンがこん棒を持っている、少なくともこん棒の有用性が理解出来るほど、賢いのだろう。
学生時代に、教員に射撃中も背後からの攻撃に注意しろとの教えが、身に付いてなかったら今頃は怪我をしてただろう。
当時は、競技射撃の背後をダレが襲うんだアホかと思ってたけど、生まれて初めて役にたったよ。
「ゴッブゥーラァ!!」
「危ねっ!」
再び、ゴブリンが距離を詰めて、こん棒を振るいギリギリ、避けるタカシさんだが。
避ける際に、こん棒がライフルとエアタンク間のホースにぶつかり、ホースが壊れた!
「ガッテム! ホースが壊れたじゃねーかコノ野郎!!」
こいつはマズイ、こん棒もヤバいがそれを武器として、認識しているあたりが嫌な感じがする。
ここで殺しておかないと、イカンと本能が警告している。
ホースが壊れライフルは使えない、近接武器のナイフはバイクに置いてきた、使えそうな物といえば。
屋上に居た避難民の残したゴミと………… 金属製の物干し竿がある。
無いよりはマシと、物干し竿を拾い大振りにゴブリンの足を払う!
足払いされたゴブリンは、痛みより意表を突く攻撃に驚きの表情のまま、うつ伏せに倒れた。
うつ伏せに倒れた、ゴブリンを見てタカシさんは、ニヤリと笑い物干し竿をゴブリンの肛門に突き刺した。
「ゴブギャァァアーー!!」
「このケツか! このケツ穴がそんなにイイのかっ! このホモサピエンス野郎が!!」
そのままゴブリンを物干し竿で、一本釣りしてマンションの屋上から投げ捨てた。
先生、タカシさんは紛れもなく、先生の教え子だったようです、今度お会いできたら伝えたかった言葉を言おうと思います。
ホモサピエンスは、悪口ではないですよ先生…………
暮れのお歳暮にプリプリハムを、お送りしたが食べてくれただろうか?
そんな恩師の事を思い出しながら、マンション屋上から降りてゴブリンの死体を確認に行ったら、まだ生きている。
「まだ生きてるとは、頑丈な奴だな…………」
タカシさんは、ライフルのストック部分でゴブリンの頭部を、ゴリッと潰し止めを刺した。
「じゃあな…………」
バイクに戻り、サイドカーにライフルを収納して、武器をナイフに持ち替えた後、そのまま徒歩でヒナコの住む自宅マンションへと歩くタカシさん。
もういないと思うが、生き残りの化け物を用心しての徒歩である、エンジン音がしたら生き残りの化け物に、気が付かれる可能性を考えての事だ。
少し歩くと、マンション一階部分のエントランスまで来たが、エレベーターが使えないため、またまた階段で9階まで登り足痛い。
ドアを開けて、失礼しますよっと、 周囲の警戒も必要うなのでノックも声掛けもせずに、室内にお邪魔してしまったが勘弁してもらおう。
ヒナコの自宅の部屋を確認して周ると、やはりユカさんの姿はない。
玄関の目立つ部分に置手紙を置いて帰るか…………
タカシさんはペンと紙を拝借して、妹のヒナコは無事だからここで待っているよう書き残して、マンションを後にした。
程なくして、シェルターに無事帰還したタカシさん。破損したホースを見たヒナコは。
「何があったんです?」
「少し転んで壊しちまった、すまんな、後なユカさんの姿は無かったよ、まだ苦労して帰る途中か、勤務地で避難してるんだろ」
「姉が帰宅してないのは、予想してました、それより何でウソを言うんです! また危ない事があったんですよね?」
「子供が気にする事じゃないぞ」
やはりこの子は聡いし賢い、タカシさんの子供のようなウソはすぐに見抜くか…………
「タカシさん! アタシは子供ですけど、迷惑かけるだけじゃ嫌なんです」
「それも含めて受け入れるのが、大人の仕事なんだけどな………… わかったからもう怒るな」
「言いづらい事でも、今後は正直に言ってくださいね」
「ああ了解だ、それで変わった事はなかったか?」
プンプンと、意外に子供らしく怒るヒナコを宥めながら、何も問題が無かったか、質問したタカシさんの姿を発見した、アルと五郎が二足歩行で、駆け寄って来る。
「パパ抱っこ♡」
「わっほ♡」
そんな二匹を、両手で抱き上げて抱っこするタカシさん。
「あっタカシさん、オデコから少し血が出てますよ」
「ああ? こん棒が、掠ったのかな」
「こん棒!? やっぱり危ない真似をしてたんですね!」
「今度から気を付けるから、そんなに言うなよ」
そんなタカシさんの気の抜けた言葉に、少々呆れ顔なヒナコはホースの修理の為に、ライフルとホースを抱え作業室の方へ向かおうとしてる。
「なあヒナコ…………」
「アタシだって…… アタシだって! わからないんですよ!!」
「落ち着けヒナコ! この子らがビックリするだろ」
大声を出したくなる気持ちもわかる、アルと五郎が二本足で歩き、拙いながらも喋っているのだ。
「アル、お前何でこうなったかわかるか?」
「知らないにゃん」
「語尾に、にゃんだと!?」
「パパが薄い本見ながら、猫っ子の語尾は、にゃんが正義言ってた」
「おっおう、そうか…………」
いったいこの子らの身に何が起きたんだ?
「五郎は、何でかわかるかな?」
「わふ~?」
「パパ、五郎小さいから、喋る無理」
「それもそうだな~ 五郎は小さいから、まだ無理だよな~」
五郎も成長すれば喋るのか!? アルの手前、激しく突っ込めないタカシさん。
アルと五郎がこうなった可能性を考えると、共通点は一つある、化け物の肉を食べた事しかない。
短絡的に、それが理由とは考えたくないが、そんな事ぐらいしか思いつかないのが現状だ。
タカシさんは先程、マンションの屋上で戦ったゴブリンを思い出してしまう。
今まで、獣の延長線上にいたはずのゴブリンが、知性の欠片を見せ、こん棒を持っていた事だ。
化け物達もこんな知性を持ち始めるのだろうか?
アルや五郎の横顔を見ながら、思うんだが。
タカシさんは、ひょっとしたら地球で、獣人の誕生を目にした初の人類ではなかろうか。
悩んでも結論は出ない、あの子らの健康状態も悪くなさそうなので、様子を見るしかないな。
「アル君、五郎ちゃん、ヒナ姉は作業室に行くけど来るかな~」
「行くにゃん」
「わふん!」
ヒナコに随分と、なついてるのは嬉しい事に思える、しかしヒナコは相変わらず、切り替えが早いと言うか適応能力が高いと言うか。
連れだって行く姿を見送るタカシさん、オデコの擦り傷が気になるので、消毒だけはしておいた。
さて、今日は他に予定もなく、暇になったタカシさんは気の早い居住予定者が搬入した物品でも、漁ろうかと搬入倉庫に足を運ぶ。
お金持ち様が、運び込んだ品々を見ながら時間を潰すタカシさん。
「おっ 手巻きの腕時計のコレクションか、趣味じゃないが、ビンテージな香りがするから頂くか」
そう言いながら、シンプルな腕時計を腕に巻くタカシさん。
一日に一度、ネジを巻く必要がありそうだが、それが趣味人の粋って奴なのかも知れない。
続いて、管理会社が持ち込んだ物資を眺めていると荷物運搬用のドローンが数台ある。
説明書を読むと、バンコクの製品でガソリンと電力のハイブリット方式で6時間の運用ができると書いてある。
世界最大のネットショップ密林もこんなドローンで荷物を運ぶ計画があったっけな。
核が落ちた後、外の世界の安全性と様子をカメラで調査する目的もありそうだ。
奥には、8桁のパスワードが必要な鉄扉が見えるが、タカシさんこの番号知らないんだよ、管理室の中にも、それらしい手引書は無かったし。
こうした品々を見るのも楽しいが、そろそろアルと五郎の様子でも見に行くか…………
作業室にタカシさんが入ると、アルと五郎の二人は、知育玩具で遊んでいる、子供用のレクリエーション室から持って来たのだろう。
アルがお兄さんぶって五郎の世話を焼いている。
そんな姿を見ると、こんな光景も悪くないと思えるタカシさん。
五郎が、アルに教わりながら、穴の形と同じブロックを、はめ込む玩具で遊んでいる。
五郎は、▲の穴に■のブロックを。
バキバキッ…………
と無理やりに押し込むと、アルはウンウンと頷き。
「アッひゃひゃひゃひゃひゃ~!!!」
「ワッひゃひゃひゃひゃひゃ~!!!」
そんな高笑いをする二匹を見ながらヒナコが。
タカシさんの悪い影響を受けていると呟き、遠い目をしながらその光景を見つめていた。
明日も18時頃に更新予定となってます。
筆遅で苦労してますが、間に合わせますw