にわかマニアの心
マニア臭がしますが、ご勘弁、本来なら火薬銃の競技用スモールボアライフルの話を書きたかったのですが、話の都合上エアライフル限定の話にしました。
ショッピングすると言っても、こんな状況では財布の心配もないのが、救いかな。
ちょいミリタリー物が好きなタカシさんは、興奮気味に店内を見回し。
何歳になっても、この手の品物は男の子の心を揺さぶる。
棚にあるボウガンの中でもPL社製のコンパウンドクロスボウが目に付く、威力でいえばこれが店内にあるクロスボウの中では一番強力だろう。
硝子ケースにあるポップ文字に書いてある、最強の文字が決めてなんだが。
185ポンドの弦は、通常は専用の紐かハンドルがなければ人力でのコッキングが無理で、乱戦には不向きなのだが。
ヒナコの父親のファイルに、面白い改造が乗っていたので2丁程、回収して矢は一度では回収不可能な量が、段ボールに入っているので500本程頂くとしますか。
狩猟用で有効射程距離は、30~70ḿ前後が期待できると説明書にも書いてあるが今は、スコープは使用しないつもりなのでいらないな。
防具も欲しい所なので、米軍放出品の防弾チョッキを見ると、最新式のチョッキより、古いタイプの方に心惹かれて漁るタカシさん。
恐らく、今後も拳銃に対する攻撃は無いと思えるので、防刃耐性があるチョキを、手に取って試しに着けてみる。
着て見ると意外に重い…………
棚を見るとM1955ボディアーマーと書いてあり、1995年と言えばベトナム戦争時の物なのか、試しに背中部分の鉄プレートを抜くと随分と軽くなり、ヒナコでも着用できそうだ。
同じ物を、ヒナコに着せてみたが平気そうだな。
「どうだヒナコ? 動けそうか?」
「ランドセルと同じくらいの、重さなので何とか」
「そうか良かった、どんな危険があるかわからないから、ちゃんと着ろよ」
「そうですねタカシさん、何があるかわかりませんから」
後は、防派グローブを二つと、ナイフ二本、後は、リストに合ったエアタンクを回収して。
「まだ、必要な物はあるが次の回収ポイントもあるから、こんな物だな」
「そうですね、積みきれなくなりますからね」
バイクの荷台に荷物をバンドで固定して、これで多少の揺れや振動でも落ちないな。
バイクのエンジンを回し、20日とちょっとぶりに自宅へ向かうタカシさん。
自宅付近まで来てみると、化け物も人間も死体だらけだ、中には自衛隊員の姿もある。
バイクを止め地面に落ちている、89式と呼ばれる自動小銃を拾い、動作確認すると壊れてなさそうだ。
装弾して引き金を引くと、やはり不発で弾がでない、タカシさんの火薬が使えないという疑念が、確信に変わりつつある。
銃火器がなければ自衛隊の方々も、戦いようが無かったのかも知れない。
自宅が近いので、用心のためにエンジンを切り徒歩で自宅マンションへと向かう二人。
残念ながら五郎はサイドカーにお留守番だ、首輪とリードリードを嫌がっていたので、戻ったら外してやろう。
マンション入り口のオートロックドアは壊されている、化け物が壊したのだろうか?
慎重に、猫を預けてある友人の部屋に進み、ドアを開けると施錠もしてないようで、すんなりと開いた。
中を覗くと、緑色の化け物の死体がある、友人が倒したのか?
リビングに足を運ぶと友人の死体があった、タカシさんも思う所はあるが感傷は後でいいだろう。
小声でタカシさんは猫の名前を呼んでみる。
「アルー パパだぞ、いないのかー?」
「タカシさん、そこの死体はお友達ですよね?」
「残念ながらそうだ、悲しむ事は後でいい」
「そうですね…………」
ガタッ ガタガタッ!
友人の寝室から音が聞こえる、化け物の生き残りか、猫のアルどちらだ…………?
慎重に寝室のドアを開けると。
「アッ アッアアァー♡♡♡」
「アルーーー!!!」
黒猫のアルがタカシさんの胸に飛びついて再開の喜びの声を上げる。
子猫の頃から鳴き声が、にゃあではなく、アッーとしか鳴かない変わった猫で単純にアルと命名したが、タカシさんの大事な家族だ。
本当に生きていて良かった…………
「タカシさん良かったですね!」
「ああそうだな、本当に良かった…………」
涙ぐむタカシさんに、釣られるようにヒナコも涙を流している。
アルの健康状態も良さそうだ、食事はどうしてたんだ?
まさかと思い室内をくまなく見ると、ベットの下には、やはり緑色の化け物の死体があり、肉に少し食いついた跡がある。
五郎もそうだが、アルも食べていたのか化け物を…………
これがこの世界の新しい、食物連鎖の形なのかと考えると気が滅入ってきそうだ。
ヒナコは、そんなタカシさんの様子を見て、優しい口調で喋りかける。
「行きましょう、タカシさん」
「そうだな…………」
黒猫のアルを抱きながらバイクに戻り、五郎とのご対面なのだが。
「アアァー♡」
「ワン!」
お互いの臭いを嗅ぎ、仲良くなれそうな雰囲気だ。
「五郎! お前の兄ちゃんのアルだぞ」
「アッー!」
「ワフン」
「じゃあアタシが二人のお姉さんの、ヒナコ姉ですね」
今日一日で、数多くの死体を目にしているはずのヒナコは、あえて明るく振る舞っているのがわかる、この子は心の芯が強いのだろう。
タカシさんも、アルと五郎の微笑ましい光景を見て無かったら、明るく振る舞えてた自信が無い。
さて、残りの物資を回収しながらユカさんの元へと急ぐか…………
次の物資回収の地点は板橋だ、今から向かう店にタカシさん達のメインウエポンになる物がある。
ヒナコの父親のファイルにあった武器は、タカシさんと相性が良い武器なので楽しみだ。
目的の物を回収して、ファイルにあった改造を施せばヒナコに怖い目を合わずにすむかもしれない。
十数分後には、特にトラブルもなく次の店に到着した、この店のシャッターはすでに、こじ開けて店内は荒らされている様子だ。
付近に 人の姿はないが、荒らされた店内を見るとバイクに積んだ物資が心配なため、ヒナコをバイクに残した。
「いいかアル、五郎! ヒナ姉ちゃんをちゃんと守るんだぞ、ヒナコも何かあれば大声で叫べよ」
「わかりました、タカシさんも注意してくださいね」
「アッ~!!」
「ワホっ!」
店内に足を踏み入れると、ため息を付くタカシさん。
店を荒らす気持ちはわかる、この店は都内でも少ない銃砲店なのだ、タカシさんは以前この店で、競技用のエアライフルを購入した経緯があり店内の様子をおぼえていた。
エアライフルと言っても、競技用のエアライフルは火薬銃で言えば22口径程度の威力がある。
警察に届けを出して所持するあたり、かなりの威力があり危険なのは納得できる。
学生時代から競技を始めて、現在も趣味の範囲で続けているタカシさん。
昔から、国内で射撃レベルの高さは、警官でもなく自衛官でもない競技者上がりが一番だと言われている。
撃つだけに特化した訓練を、永遠とするのだから腕も上がるわけ、さらにタカシさんが教わった教員は、退役自衛官で新兵訓練かと文句が言いたくなるほど、過酷だったのを記憶している。
そんな記憶がありながら、タカシさんの成績と腕は、中の中で普通なのだが…………
店内を散策すると、やはり火薬の銃弾を使う猟銃が根こそぎなくなっていた。
そして店内に残っている物は、今回の目的であるエアライフルの猟銃がある。
警察に届けの必要がある立派な武器なのだが、店内を荒らした人物にとっては、玩具程度の認識だったのだろう。
威力は猟銃なので競技用より上になるのだが………… チラリと横目で見る銃は、以前から欲しかった競技用エアライフル、アンシュッツ:ANSがある。
ドイツ製だよ! 故障が多いけどカチっと相性が合う気がするの。
それを………… 断腸の思い出で諦めて。
猟銃用のエアライフルを漁る、バイクに積める量も残り少ないので全部はもって行けない。
猟銃に関しては、詳しくないので店内にあるカタログを片手に見比べて。
汎用性のあるセミオートマチック猟銃、モンスーンの2丁とハイパワーな猟銃ウルバリンを一丁バイクに積み、付属部品や弾も積めるだけ積んだ。
正直言って、この店はもう一度来て弾などを全部回収したい。
一人で来ればサイドカーに部分にも積載できるので、今度は一人で来るかと思いながら、バイクを走らせ池袋方面へと向かった。
◇◆◇
国道254を走りながら、ユカさん宛ての張り紙を、定期的に撒き池袋に進むと、豊島区に入り北池袋に差し掛かると。
目的地付近に煙が上がっている、不審に思い付近のマンションに上り、双眼鏡で確認すると。
化け物がウヨウヨといて、近くの車両や店舗から火の手が見える。
「………… ヒナコ、あの辺りがユカさんの勤務地か?」
「はい、前にお姉ちゃんとドライブに来た時に、場所を教わったので」
「中央環状線で、王子方面からシェルターに戻るぞヒナコ………… わかるなよな」
「わかっています、今のままであの辺りに行くのは、危険すぎるんですね」
「今ある武器を改造して出直しだ、念のためユカさんが通った可能性を考えて、帰り道でも張り紙をばら撒くぞ」
「はい…………」
ヒナコを見ると唇を噛み、目に涙を溜めている。
悔しいだろう、すぐ近くに姉がいるかも知れないのに手が出せない現状を、アルと五郎を抱き抱えて耐える姿はタカシさんも見るのが辛い。
「あの現状だ、ユカさんは何処かに避難しているか、逃げ出してる可能性の方が大きいと思うぞ」
「そうですね、そうだといいです…………」
こんな慰めは意味が無いと知りつつ、言わずにいられないタカシさん。
会話も無いままシェルターに戻って来たタカシさん達、ヒナコは今日回収した、猟銃やボウガンなどの物資を作業室に運びこんだ後、出て来る様子がない。
機械音が聞こえているので、武器改造の作業をしているのだろう。
タカシさんは、作業室のドアは開けずに、外からヒナコに声をかける。
「何か手伝う事はあるか?」
「特にないです」
「そうか…………」
何となくだが、ヒナコを一人にした方が良い気がして、作業室のドアが開けられなかった。
食事でも作っておくか。
「アル、五郎おいで」
タカシさんは、アルと五郎を連れ自室へと戻って行った。
キッチンで、ヒナコの元気が出るように食事を作るタカシさん。
ヒナコはサイ〇リヤが好きなのだろうか? 昨日ここの食材をそう呼んでいたし、ハンバーグとコーンスープ、パンも付けるか。
作るとはいっても、全部冷凍品なわけだが、パンまで冷凍とは少々驚きはしたが。
食卓でヒナコを来るのを待つタカシさん、呼びに行った方が良いのはわかっているが、あの表情を見てしまったら、申し訳ない気分で一杯になり。
二時間程、待ったが食卓にヒナコの姿はなく、食事を温め直すかと考えていたら。
「タカシさん! まだ一丁ですが銃の改造が済ました!」
「おっ おう? 元気に見えるが落ち込んでいたんじゃ?」
「落ち込んでいる暇なんか、ありませんよ残りも早く改造しないと!」
「そうか、でもなヒナコまずは食事だ、冷めちまっただろう」
心の整理がついたのか? 切り替えの早い性格なのか? どちらでもいい、子供は笑っているべきだ。
明日も18時頃の更新予定です。 ちなみにアル君は我が家の黒猫です、
本当にアッー!しか言わないい子なのです