Gだから許す
ユカさんを無事に保護できて、ヒナコも嬉しそうだ、実際はホームセンターでの戦いはヤバかった。
せまり来る、キャプテンの群れの中ではライフルが使えず、苦肉の作で肉弾戦となり、ユカさんと合流後も、絶望的な数のキャプテンを相手にどうしようもない状況だった。
苦しい時にこそ笑いに変える、そんな信念があるタカシさんんは。
ユカ、ヒナコ姉妹を相手に、おどける様な態度と行動で危機を乗り切れたが、心が折れそうな時は無理にでも、笑いふざけるのが一番だ。
深刻になっても問題は解決しないからな。
シェルターに帰還する頃には、空が明るくなり始める時刻だった、新聞屋のカブの音もしない、実に静かな帰路で搬入用エレベーターで地下に潜ると。
ユカさんが驚きの声を上げた。
「なんやこれは~~!!」
「ここがタカシさん達が住む、シェルターだ」
「ビックリしたでしょ、お姉ちゃん」
色々とシェルター内の物を見て、混乱気味のユカさんだが、流石ヒナコの姉といった所で短時間でこの場所に順応しつつある。
まずは食事を取ってもらい、風呂で数日ぶりの垢を流し、ようやく落ち着いたので、詳しい説明を聞くことにする。
居間で冷えた麦茶を美味しそうに飲みながら、ユカさんは今までの経緯を教えてくれた。
いち早く異変に気がついたユカさんは、会社を出てロードバイクで帰宅する途中、化け物に追われホームセンターの屋上の籠城していたらしい。
「大変だったなユカさん」
「ユカでええよ、お茶のお替り貰えるか?」
「ああ、いくらでも飲んでくれ」
黙って、話を聞いているヒナコが、ユカのグラスに麦茶を注ぎ、一気に飲み干すユカ、体が水分を欲しがっているのだろう。
「ユカ、質問がいくつかあるがいいか?」
「ええよスリーサイズでも教えよか」
「それもいいが、食事はどうしてたんだ?」
「父親の影響やろうな、チョコレートと水分は常にもっている癖が、染みついてて良かったわ」
「いい親父さんだな、おかげで生きている………」
軽い冗談交じりな答えだが、ユカの目の下の窪みを見ると、そんな軽く言えた状況では無かったのだろう。
思ったよりも衰弱は軽いのが救いだが、ユカが潜んでいたロッカーの中にあったペットボトルだ。
スポーツ飲料なのに、黄色がかった液体が入っていたのを思い出し同情を隠しきれない。
少ないチョコと、飲尿で4日近く耐えたのだ、ヒナコの手前、心配をかけないよう明るく振る舞う、ユカを見て芯の強い女性だと思うタカシさん。
「それでユカ、モールス信号はどうやったんだ?」
「それな、EMP対策してある、ペンライトを持ってたからや、それをルーペで光を大きく見せて、モールス信号を送ったんや」
「あんな場所に、妹を読んだのか?」
「ちゃうで、ヒナコがモールス信号を見る可能性は低いと思ったんやけど、別れのつもりで、ヒナコ姉はここにいるが、来るなって送ったん」
まだ、あのモールス信号には続きがあったんだな、ヒナコも簡単な物しか解読できないと言っていたので、責めるのは酷だな。
だが、そんな姉の言葉を聞き、ヒナコが声を荒げるように叫びユカの腕にしがみついた。
「何で! 何で別れとか言うの! お姉ちゃん生きてるじゃない、悲しい事を言わないでよ!」
「そうやなヒナコのおかげで生きてるわ、もうどんな状況になっても、そんな弱音を言わんからゴメンなヒナコ……」
「来るなとか言わないでよ………」
「まさかヒナコちゃんと解読できてたんか? バカな子やで危ない目に合ってまで、来るやなんて………」
あのモールス信号をちゃんと、解読できていたのに全文をタカシさんに伝えなったのか………
危険があると承知で、言わなかったヒナコの気持ちを考えると、それもまた責める気にならないな。
ヒナコとのファーストコンタクト時にも、男性であるタカシさんの気を引くために、ユカのバストサイズの話をしたのはわかっていたが。
だが今回は、正直に話して欲しかった、どんな危険があってもヒナコという少女との暮らしが、気に入り始めているタカシさんは、黙ってユカの救出に向かってだろう。
気持ちはわかるが、少し寂しい気分になる、そこまで信頼をしてもらってなかったなんて。
会って数日ならそんな物か……
抱き合い、涙を流している姉妹の姿を見ると何も言えずに、これは、これで良かったと納得しようとしてる、タカシさんに向かいヒナコが。
「ゴメンなさいタカシさん…… ちゃんと話しても一緒に行ってくれると思ってましたが、もしダメだったらと思ったら怖くて……」
「ヒナコ、気にするなユカと会えて良かったな」
ユカの頭を軽く撫でると、明け方も近い時間帯なので、そのまま自室に向かうタカシさん。
鏡で自分の顔を見ると酷い顔をしていた、勝手に保護者面をして信頼を得ていると思いこみ。
家族のような関係などと、独りよがりな感情で、期待を裏切られた気になっている情けない顔だ。
人にこんなにも執着する人間では、無かったはずのタカシさんだが。
世界が変わり、自分自信も知らないうちに、心境の変化があったのだろう。
ベットの腰を掛けて、タバコをの煙をくゆらせていると、ドアをノックする音が聞こえる。
「どーぞ、ノックはいらないぞ」
「寝る所やったんか、少し話があるから、お邪魔するで」
「ああ、いいが体を休めた方がいいんじゃないか?」
「これを聞いたら寝るわ」
そんなユカの言葉の続きを待っていると、少々、驚きな言葉を吐いた。
「いったい何の目的が合って、ウチらを助けたんや?」
「ああ、警戒させちまったのか、すまんな」
「そんな言葉が聞きたいんやない、何も答えの無いまま人を信じられる程、ウチはお人よしやないで」
元から、こんな性格なのか、世界が変わり避難中に酷い目に合い、人を信じられなくなったかわ知らんが。
確かにこんな怪しげなオッサンが、気まぐれでヒナコを保護し、ユカを救出したと言っても、信用はされないだろうな。
「答えてや、タカシさん……」
「自分自身でも、わからないんだが…… まあアレだ、寂しかったのかもしれないな」
「タカシさんって人が、少し理解できた気がするわ………」
「そりゃ何よりで」
タカシさんの曖昧な答えに、少し満足した表情のユカが佇まいを直し、正座をして頭を下げたのだ。
「まず、初めにお伝えしなければならない言葉を、言わずにいて、申し訳ありませんでした」
「おっ おい、ユカどうした」
「妹を助けて頂き、ありがとうございました」
「やめてくれ頼むから、さっきまでの態度でいいんだ!」
肩まで伸びた黒髪に、端正な美しい顔立ちに妙な風情というか情緒というか、心が引き込まれるような姿に驚き、声も出なくなるタカシさん。
37歳にもなって、22~3歳の女性に見とれてしまう姿に恥ずかしさを感じ、タカシさんがユカに声をかける。
「気にすんな、Gカップなんだろ? タカシさんはGカップなら大抵の事は許せる人だから」
「さよか? Gカップなら許すって人としてどうかと思うけど? それでええんなら元に戻すで、それとなヒナコがアンタの信頼を失ったって、へこんでたで」
「子供がそんな事を、気にするなと伝えてくれ」
「アンタが自分で言うたらええやないの、人見知りするヒナコがあんなに心を許すなんてウチも驚いたわ」
ヒナコのような少女に、気を使わせてしまうほど、表情に出ていたのだろうか?
保護者失格だなこりゃ、後で謝らねばならないな。
「ヒナコが言うてたよ、家族みたいで安心するって」
「ははっ 家族みたいにか…… 何より嬉しい言葉を聞けた気がするよ」
「あっそうや、ウチの分のお礼をまだ言ってなかったわ、タカシさんおおきに」
「こちらこそ、無事でいてくれてありがとうな」
ユカの真っ直ぐな視線から目をそらし、タカシさんもお礼を言う、そうか家族みたいか……
「なあユカ、聞いてもいいか?」
「なんや?」
「東京生まれだと聞いているが何で、えせ関西弁なんだ?」
「それな、関西の大学に通ってたから、自然とこうなったんやで」
ちぃっ! 男の影響かよ聞くんじゃなかった、どうせ浮かれ気分で大学に入り関西で一人暮らしをして……
彼氏が出来て、男の色に染まった典型じゃないか!
ビッチめ…………
「どうしたん、急に変な顔して気分でも壊したんか? ウチそんな変な事を言うたか?」
「いいや、Gカップだから許す!!」
そうさGカップなんだ許すだろ…………
明日も18時頃の更新予定となっております