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荒川、河川敷の決戦



 池袋で出会った一角の化け物、残忍で執念深い性質を持つ、そんな奴に追われる災難に合うが。


 バイクで距離を距離を稼ぎ、バックミラーには姿はもう見えない。


 だが奴は必ず臭いを元に追って来るだろう、理由は直感としか言いようがないんだが。


 熱帯植物園の辺りに姿があったのは偶然とも思えない。


 付け狙らわれている、そう判断した方がいい。


 バイクの速度を落とすことなく、シェルターに到着して搬入用のエレベーターで、地下に降りたタカシさん達。


「ヒナコ! ウルバリンはすぐに出せるか?」


「ゴメンなさい、分解してみたら金属疲労が大きかったので、各部を補強し直してるんです」


「イヤ、出せなければしょうがない、手はいくらでもあるさ」


 ハイパワーな猟銃ウルバリンがあれば、多少は優位に戦える可能性は上がるのだが、無くても戦いようはある。


 そもそもシェルターに(こも)り外に出なければ安全は確保できる、そんな考えも頭をよぎるが。


 外に出なければならない理由もある、ユカさんの捜索だ。


 たった数日だが、同じ屋根の元に暮らしてるヒナコはタカシさんにとって、(すで)に家族も同様だと勝手に思っている。


 ヒナコの姉なら、タカシさんの身内も同然のように感じるので、見捨てる選択は無いに等しい。


 勝手に家族が出来た気になり、見捨てられない甘さがあるなんてタカシさん本人が、一番驚いてるんだがね。


 タカシさんは、熱帯植物園で回収したマンドラゴラをヒナコに渡し、この場にいる全員に指示を飛ばす。


シェルター内にある物資の中に、シェルターを拡張工事する場合も想定して置いてある、エンジンオーガーと呼ばれる穴掘機をサイドカーに積み込み。


 一足先に、タカシさん一人がシェルターを出る。


 向かった場所は、北区と足立区を結ぶ橋の下にある、荒川の河川敷に陣取る。


 この場所なら環七通りから橋を通る一本道で、見通しも良く、迎え討つには最適な場所となる。


 ここは一つ敵の名前をわかりやすく、一角と呼称する事として。


 今現在の一角の位置が、そろそろ掴めても良い頃だな。


 タイミグ良く、無線のイヤホンにノイズが走り、音声が聞こえる。


「悪い人見つけたにゃ!」


「ヒナコ、アルのドローンのカメラで一角の位置は把握できるか?」


「カメラでは判別できませんが、ドローンに付いてるGPSの位置情報ですと、タカシさんの位置から7キロ弱です!」


「アル! ヒナコ! 良くやった、その位置なら40分は時間が稼げるな」


 予め、一角が通りそうなルートを想定して、アルに上空から偵察をしてもらっていたのだ。


 おかげで、こちらが準備する時間は十分ある。


 ヒナコに、ドローンのカメラをPCで監視と、頼んだ作業を同時に進行してもらって大助かりだよ。


「ヒナコ! 作業の進展はどうだ?」


「後10分もあれば終わるので、五郎ちゃんに持たせて、そちらに送ります」


「了解だ、アルもシェルターに戻りヒナコから、荷物を受け取りこちらに来てくれ!」


 通信を終えたタカシさんは、バイクのサイドカーからエンジン付きの穴堀機を取り出し、地面に穴を掘り始める。


 71㏄の2サイクルエンジンが、パンッパパンと2サイクル独特で騒がしいエンジン音を響かせながら、地面に穴を掘り続けるタカシさん。


 穴を掘り続け20分程で、目的の穴は掘れた、汗を拭いながら上空を見ると。


 五郎がこちらに、向かって飛んでくるのが見える。


「五郎、ご苦労様もう一つ大事なお仕事があるから、頼むぞ!」


「わお~~ん!」


 タカシさんは、五郎から受け取った包みを開けると、巨大な布団圧縮袋が入ってる。


 タカシさんはその袋を先程、掘った穴に設置して草と土を被せ偽装する。


「落とし穴の完成だ」


 一角が入るサイズの布団圧縮袋は、通常サイズの圧縮袋をシーラーと呼ばれる、熱でビニールを接着する機械で繋ぎ合わせ巨大なサイズの物を、ヒナコが作成してくれたのだ。


 今回の作戦のメインになる、布団圧縮袋を持って来た五郎は、風上の茂みに身を潜めてタカシさんの合図を待っている。


 数分後には、ヒナコから荷物を受け取ったアルがタカシさんの上空で、ホバリングして待機している。


 準備は完了だ、後は一角が来るのを待つばかりだ、タカシさんが無線でアルに通信を送る、


「アル戦闘が始まったら、なるべく高い位置で待機してくれ、パパの合図をちゃんと待つんだぞ!」


「了解にゃん!」


「五郎も合図まで、絶対に動いちゃダメだぞ!」


「わふン!!」


 双眼鏡で前方を監視していると、環七を真っ直ぐこちらに来る、一角の姿が見える。


 一角は荒川の橋を渡りながら、視線をタカシさんに向けていた。獲物が観念してそこにいると。


 一角は橋の上から飛び降り、タカシさんのいる河川敷に着地した。


「五郎今だ!」


 タカシさんはそう五郎に指示を飛ばし、ガスマスクを着用した。


 合図を受けたアルは、手動の農薬散布用、噴霧器のノズルを握ると、マンドラゴラをミキサーで液体状にした霧が風に乗り一角の方へ流れる。


 どうせ猟銃モンスーンでは、歯が立たないと、おとりに徹するタカシさん。


 落とし穴に誘導しようと、円を書くような足取りで一角を、翻弄しようといしたのだが


「ふんふん………… グギャャアーー!!」



 ドンッ!!



 一角は臭いを嗅ぎ、耳が痛いほどの叫びを上げ、タカシさんとの距離を一瞬で詰め。


 空気の壁を叩くような音をさせながら、拳でタカシさんの腹部に一撃を喰らわせた。


  初めから、落とし穴の前にいると感ずかれる可能性があるので、少しづつ誘導してなんて考えが甘かった。


 タカシさんは、すっ飛ばされながら地面に体を叩き付け砂埃が舞っている。


「ゴホッ…………」


 声どころか、呼吸をするのもキツイ、防刃が優れている防弾チョッキも、衝撃には弱いらしい。


 だが、この防弾チョッキのお陰で多少なりとも衝撃を緩和したからタカシさんの命がまだある。


 幸いな事に、すっ飛ばされた位置は落とし穴の前だ、このまま一角がタカシさんの方に来れば、落とし穴にハマる。


 しかし、マンドラゴラの噴霧は効果がないのか? 一角に変化が見られない。


 そろそろ幻聴、幻覚、四肢のマヒが起こるはずなんだが。


 一角は獲物を仕留める瞬間が来たと、笑みも隠さずタカシさんへ、ゆっくりと歩みを進めて来る。


 マンドラゴラが効いてないとすれば、この作戦は失敗するかも知れない、そんな不安がタカシさんの表情をこわばらせる。


 一角は一歩、また一歩と近づいてきて、落とし穴にハマる一歩手前で止まる。


 なぜだ? なぜ止まるんだ…………


 一角は、鼻をくんくんと鳴らしながら、五郎が隠れる茂みの方角を見つめてる。


 五郎が気づかれた!?


 一角は、この不快な香りの元にいる、五郎を先に殺して不快な霧を止めようと、五郎に向かい歩きだした。


 マズイ、マズイぞ、見通しが甘かった、子供らをこの場に連れて来るべきじゃなかったんだ。


「ごろ…… 逃げろ……」


 ガスマスクが邪魔だ、呼吸だ酸素が足りない。


 タカシさんはガスマスクを剥ぎ取り、大きく呼吸をすると。


 体中、痛みで軋むのを気合いでねじ伏せ、タカシさんは立ち上がった。


 そして、そばに停車してある、バイクにまたがりアクセルを捻り、そのまま、一角の前に回り込みバイクを急停止させた。


 ここが正念場だ…………

 

 面白い物でも見るような、視線の一角を前にタカシさんは、タバコに火を付け、煙を吸い込むと。


「ああ~ タバコがウマイ…………」


 そう呟きアクセルを捻り、一角にバイクごと体当たりの強烈な一撃を与えると、一角の体を落とし穴まですっ飛ばした。


「ホールインワンだバカ野郎…………」


 落とし穴に落ちた、一角の姿はぐったりとして弱り果てている。


 効果が無いと思われた、マンドラゴラの毒は巨体に少しづつ体の中に蓄積され、ようやく効いてきたのだろう。


 タカシさんが無線のマイクを、二度コンコンと叩き合図を送ると上空に待機していたあるが、サイクロンな掃除機を装備して地上に降りて来た。


 タカシさんが、布団圧縮袋のジッパーを閉め、五郎も合流したので、メインディッシュの時間だ。


「やっておしまい…………」


「あいあいにゃ~~~♡」


 アルが、サイクロンな掃除機のスイッチをONにすると、布団圧縮袋の中の空気を、ドンドンと吸っていくのが見える。


 あの忌々しい一角が時が立につれ、ピチピチにキュウキュウな姿へとなっている。


 一角は末期の言葉でも吐くように。


「こぽ、こぽぽぽっ… こぽ~」


 こぽぽぽって言っちゃってる、タカシさんの、そうタカシさんの家族(ファミリー)の命の危険を脅かしたクソ野郎は、こんな目にあって当然だ。


 こんな一角の姿を見ていると、腹の底から湧き出る物がある。



「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ~~~!!!」



「アッひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ~~~!!!」



「わっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ~~~!!!」


 荒川の河川敷に響き渡る、3人の高笑いの声。


 一角を倒す方法は、他にもあったかもしれない。


 だけどね、家族を怖い目に合わせて、少なからず、みんなの心にトラウマを植え付けた存在には。


 この位、笑える方法で倒して、心を軽くするケアが必要だと思ってる。


 考えが極端なのは、理解してるが相手を殺さないと、生き残れない世界ではこんなもんさ。


「さて、帰るまえに一角をどうする、食べるか?」


「お家で食べるご飯の方が、美味しいにゃ!」


「わううん!」


「そうだな、さっさと埋めて帰ろうな」


 一角の死体の二次利用を防ぐために土を被せ埋めるタカシさん達、動物が死体を食べて、アル、五郎のように獣人になる可能性はいいんだが。


 こんな強力な化け物の死体を食べると、第二、第三の一角が生まれそうで気味が悪い。


 一角を埋め終えると、タカシさんの体に少し不調が見られる。


 ふらつき、軽いめまいや体の動きが鈍い、マンドラゴラの霧を少量だか吸ったのが原因だろう。


 まあシェルターに戻る分には、さして影響は無いのでバイクを走らせ、シェルターに向かうが。


 いかに頑丈なBMWのフレームでも、歪みが出たようで、真っ直ぐ走れない。


「こりゃダメだな、修理も厳しいだろうな」


 いかにヒナコでも、専門の機械が無いとバイクのフレーム修正は無理ってもんである。


 あ~ 体がふらつく、帰ったら飯と風呂だな………


 

明日も18時頃の更新となっております。

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